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【暮らす街の哲学】②:街と選択肢の関係性

海沿いに住みながら、山の上に住むことはできません。田舎に住みながら都会に住むこともできません。住む場所を決めることは、何かを選んで何かを切り捨てることでもあります。

住む場所によって、できること、できないことがあります。自分が望むことすべてができる街なんて存在しません。だから、住む場所を決める際は、どんな選択が可能で、どんな選択ができなくなるかを十分検討する必要があると思います。

例えば、僕が生まれ育った離島には、映画館がありませんでした。なので、映画を劇場で見ようと思ったら、船で本土に渡る必要があります。また、一般的なチェーン店もほとんどありません。マック、ユニクロ、サイゼリア、すき家。こういったチェーン店を利用できません。
ただ、海が近くにあったので、海水浴や釣りをいつでも楽しむことができます。また、夜間に運転する人はほとんどいないので、とても静かな夜を過ごせます。待機児童の話なども聞いたことがないですね。島民の人柄も全体的に穏やかで、都会と比べてのんびりと暮らすことができます。

東京に住んでいたときは、買い物やイベントで不便を感じることはありませんでした。図書館などの公共施設も充実していて、なにより人がたくさんいる。だから、退屈を紛らわす選択肢には困りませんでしたね。
ただ、移動が電車であるため、終電や満員電車などに気を揉まれます。移動でぴりぴりしてしまうし、人がとにかく多いので疲れます。どこで休むにしてもお金がかかるのも嫌でしたね。それに、自然と触れ合う機会も極端にへります。

このように、住む街によって、取れる選択肢、取れない選択肢がでてくるんですね。

僕は、選択肢と幸福度は直接関連があると思っていて。望んだときに、できないことがあるってちょっと不幸じゃないですか?そして闇雲に選択肢の数が多ければいいってもんでもない。自分が望まない選択肢がいくらあっても、ガラクタでしかないわけです。歌舞伎に興味がないのに「この街では歌舞伎が見れるんだぜ!」って言われてもピンとこないじゃないですか。大切なのは、重要度が高くて、取る頻度が高い選択肢が選べること。ここだと思います。自分にとって大事な選択肢がとれないとなると、結構フラストレーションたまると思うんですよね。

僕の場合だと、よく本を読むし静かな場所で考え事をしたいので、近くに良い図書館があると幸せです。冬場や疲れがたまっている時は大きなお風呂に入りたいので、近くに銭湯や温泉があるのも幸せです。

もう一度書きますけど、大切なのは、選択肢の多さではなく、自分が重視する選択が取れるかどうか。それが重要なんですよね。選択肢を闇雲に増やすだけなら、都会一択ですよ。だけど、パンにジャムを塗る時に、20種類のジャムを用意されたら満足度は比例して高くなりますか?別にあっても困らないけど、そんなにいらないですよね。僕は好きなジャムが3種類くらいあれば、わりと満足です。いちごジャム、ピーナッツクリーム、バター。この3つがあればOK。はちみつがあれば、なおよしって感じ。

街を選ぶ際に重要なのは、選択肢の多さじゃなくて「重要度の高さ」。そしてその選択をとる「頻度」なんです。

だから、街を選ぶ際にまず知らないといけないのは街の立地やお店ではなく、自分の価値観なんですよね。街を知ることは自分を知ること、と僕が考えている理由はここからです。まあ自分を知るのが一番難しいんですけどね。

冒頭に戻ります。街を選ぶことは選択肢を絞ることなんです。街ごとにできることとできないことがある。都会の中では自然に触れるのは難しいし、田舎だと多少不便になる。こういうわかりやすい対比関係でなくても、例えばこの街にはすき家があるけど、ブックオフがない。この街は川が綺麗だけど、交通量が多くて危ない。みたいなことってよくあるじゃないですか。
だからね、選ぶために自分と素直に向き合って優先順位をつけましょう。自分の中で大事にしたい価値観、選択肢上位1〜5位を決める。そして、上位から順に満たしてくれそうな街を探す。って感じでいいじゃないですかね。もちろん、理想通りにはいかないし、おそらく優先順位をは間違えます。自分のことを正確に知るってそんなに簡単じゃないですよ。だけど、少なくとも選択肢はだいぶ絞れると思うし納得がいくと思うんです。

もし、自分の価値観を探すのが難しい、という方であれば、ぜひ普段の行動を思い返してみてください。振り返ると、普段よく取る行動が見えてくるはずです。「私ってなんかいつも、服屋に入っちゃうな。色んな服が選べる環境が好きだったりするのかな?」とか「なんとなく、夜に川辺を散歩するのが好きだな。自分にとって大事なことなのかも」とか、そういう気づきがあると思うんです。普段取る行動があなたのリアルなのでね。それを反映して街を探したらいいと思うんです。

また、その選択をとる頻度も大事で。
重要だったとしても年に一回しかとらない行動なら、別にそれを普段の生活圏内に巻き込む必要はないですよね。例えば毎年1回、墓参りします。って人は、別に墓の近くに住む必要はないわけです。でも毎朝墓参りしますって人は、近くに住んでたほうが楽でいいじゃないですか。
ディズニー好きで、年に2回は行きますって人も、別に舞浜に住む必要はないわけで。でも、週一で行きますって人がいたら、もう舞浜に住めよってなるじゃないですか。
もっと身近な例だと、僕みたいに本が好き、だけど休日だけ図書館にいければいいって人は、30分程度ぐらいの距離でも全然OKってなるわけで。でも毎日となるともう少し近くがいいかもしれない。

こんな感じで、選択肢の重要度と頻度はバランスを考える必要があります。とっても大事だったとしても、住む街には影響を及ぼさないっていう場合もあるので。

というわけで今日はこのぐらいで。ぜひ、住む街と自分の欲しい選択肢、その関係性について考えてみていただければと思います。ではでは、続きはまた明日。




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