勝手にひまわり
我が家の庭の、道路に面している部分にちょっとした土スペースがある。いちばん目立つところでもあるからホームセンターで花を買ってきてはせっせと植えて世話をしている。
するとこの夏、そんな花と花のすき間を縫うようにひまわりの芽がグングンと伸びてきた。
実はこのひまわり、ルーツは数年前に旧家に咲いていたものだ。その時に取れて、ずっといつ播くでもなく保管しておいた種を持ってきて、試しにここに播いてみたのが去年の夏のことだった。
いくつか播いた中から最終的に咲き切ったのは6~7本だっただろうか。ただ、茎だけはどんどんと伸びていくのだが一向に花が開く気配はなかった。つぼみらしき部分はあるものの、いつになったら花が咲くんだろうと毎日見上げていたのを思い出す。古い種だしこのまま咲かないなんてこともあるのかもな…。でも、いちばん目立つ場所で他の花のスペースまで使って、視界に入ってくる存在感だけは見せつけて、で咲かずにおしまいってそりゃないよなぁなんて半ば諦めかけていたが、夏本番を迎えた頃になんとか花が開いたのだった。
ひまわりはとにかくノッポでその頂点に大きな花が咲く。なので夏の終わりごろに来る台風で、横風にあおられて倒されてしまう。大体この頃には花もピークを過ぎしおれかけてきているので、風にやられて道の方に倒れる前に僕の手でシーズンを終えさせた。
その際、下に落ちたひまわりの種はかなりの量だった。そりゃそうだ、あの大きな花にビッシリ付いているんだから。それらを拾って(試しに今年播いてはみたけど、どんなもんか分かったし来年はもういっか)と処分した。
そして、この夏。ひまわりはそんな我々の気持ちなどつゆ知らず、見事に返り咲いた。文字通り返り咲いていた。こちらが意図して播いた去年とは違い、拾いそびれて土に残っていた種が芽を出したので、それはそれは強引だ。他の花があろうが何があろうがお構いなしに伸びていく。その伸びっぷりはすさまじく、あっという間に僕の背丈を追い越していった。
今年は植えるつもりなかったけどな、と家主も苦笑いしながら眺めていたが、ある時ふと気が付いた。
(あれ?つぼみ多くね?)
ひまわりはとにかくノッポでその頂点に大きな花が咲く。
そう思っていたが、茎の途中からもたくさんのつぼみが付いていたのだ。ひまわりってこんなんだっけ?
調べてみると確かにひまわりにも様々な種類があり、僕のイメージしていたひまわりの他にも、このようにたくさん花をつけるものや大きさや色が違うものなどあるようだった。
では今年のこのひまわりはどこからやって来たのだろう。去年とは明らかに花の付き方が違い、拾いそびれたものとは別のおそらく違う品種と思われる。
突然変異?それとも去年芽が出なかっただけで元々紛れ込んでいた?これは彼らからの無言のメッセージなのか?考えるとなんだかゾッとする。
そよそよと大きな葉を揺らし、時に歩行者が立ち止まって眺めるほどに立派に咲いた我が家のシンボルツリー。そこにそこはかとない恐ろしさを感じる夏の終わりだった。あぁまた台風来そうだなぁ。
お越しいただきありがとうございます。大体あの小さな中に生命エネルギーが凝縮されている、種という存在がもはやミステリーです。
ではまた!
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