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蕎麦宗店主の自転車クロニクル その8 【ブリジストンATB】

ゲーリーフィッシャー・トムリッチー・ジョーブリーズ…。MTBの黎明期を彩り、その後各自のブランドを立ち上げたレジェンドたちの名は今となっては知る人ぞ知るか。

誕生から40年以上の時を経て、世界中を席巻した感のあるMTB(マウンテンバイク)は1970年代のアメリカ西海岸で生まれた。日本でも1980年代の半ばには、新しい物好きの大人達が飛びつきマイナーながらもジワリと広がっていた。

1987年。高校入学時に買って貰った《無段》が無残な姿で帰ってきた話が前回。当時、ブリジストンサイクルには盗難補償制度が付いており、その場合の代替車輌を6割ほどの出費で買うことができた。残念ながら《無段》は廃盤商品となり、別の自転車から選ぶことになったのだが、これが僕にとっての自転車ジャンキーのキッカケになるのだから人生不思議なものである。

ちょうどその頃登場し、モデルチェンジしたばかりの《ブリジストンATB》を手に入れた。ATB(All-Terrain Bike)は全地形型自転車と呼ばれ、オンロードもオフロードもどこでも走れることが売りだった。商標の関係だったのか、その後MTB(mountain bike)に名称は統一され、ロードバイクに取って代わり、瞬く間に巷に溢れることとなるのだが、それはもう数年待たねばならない。

僕は大体いつも流行の先取りをすることが多い。ただ知って興味を抱いて手にするのが早いだけだが、代わりに廃盤とか打ち切りとかに会うことも多い。犬が主人公だったアニメ《名探偵ホームズ》などは典型で、小学生の頃、大好きで絶賛していたのだが尻切れとんぼに終了。のちに宮崎駿の初期の代表作として再評価された時は、してやったりの気分だった。……「人の半歩先を行け」とは、かの松下幸之助の言葉だが、「半歩でいい」と彼は言っている。確かに一歩先に行くと商売としてはあまりうまく行かない。閑話休題……。そんなわけで、田舎の高校の駐輪場には僕の一台しかMTBは無かった。

その自転車、少しグリーンがかったガンメタリックのカラーリングが渋くて気に入っていた。しばらしてサッカー部の親友・三輪が僕に続いて新谷工業のMTBを手に入れる。パールホワイトに紫の墨流しが施されたMTBにしては美しすぎるものだった。比べると自分のは地味なので、正直、羨望の眼差しで三輪の自転車を眺めていたが、「お前の渋くてカッコいいよなぁ」と言ってくれるので、単純な僕はご満悦。

以後、高校3年間この愛車に跨って、あちらこちらに出かけることとなるのだが、それは次回の講釈で。つづく

#ブリジストン #アラヤ #MTB #松下幸之助 #名探偵ホームズ



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