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病棟

太くて白い腕が空から垂れ下がってるの
と君は病院で話してくれる
太くて白い腕は、死人の腕がベッドから
はみ出たように
ただ、ダラリと垂れ下がって揺れているの
と君は続ける

そこは傘のない世界で
雨が降って濡れても誰も気にしない
濡れたまま荷物をトラックに積み込むし
電車に乗るし家に帰るの
もちろん、家に帰ったら乾いた服に
着替えるわよ
それがまた気持ちいいの
と君は笑う

太くて白い腕は一日中ダランダランと
揺れている
手のひらは半開きで生きているようには
見えない
私はそんな世界に生きているみたいね
と彼女は話し続ける

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