【ラグビーでよくある】キックキャッチ後にFWを一回当てる理由

今回はラグビーで起きるキックの中で、「キックキャッチしたチームがよくFWを1回当てる」という事象についてなぜ起こるのか、その意図を解説していきます。


1.キッカーのキック角度確保のため

ラグビーのジェネラルキックの種類は多岐にわたります。

※ジェネラルキックとは
キックオフのドロップキックやトライ後のゴールキック、ペナルティで選択できるペナルティゴールを除くプレー中に使用されるキックの総称

例)ロングキック、ハイパント、チップキック、グラバーキック、キックパスなどなど

これらのキックに共通して言えることとして、キックを使う目的は様々ですが、キックをする場所、すなわちキックを狙う位置には原則決まった場所が存在します

どこでも蹴って良いというわけではないのが肝になります。

特に今回想定しているキックキャッチはタッチラインから15m以内でキャッチしていることを想定しています。

その場所にラックができたとすると、次の選択肢は基本的に1つになります。
どういうことかというと、もちろんパスやキック、キャリー(突っ込むこと)などという選択肢はありますが、攻める方向が1つに絞られてしまいます。

このような状況であれば、 AT側にスキルの選択肢がいくつあろうと、DFは対応することが可能になってしまいます。

(逆に言うならば、相手の選択肢を絞らせたい場合はタッチから15m以内にラックを作らせると次のDFが楽になります)

ラグビーは基本、攻める方向が2つ時有利に働き、1つしかない場合は不利になる設計がされています。

キックを蹴られていると言うことは多くの場合、蹴った側が陣地を回復した形が想定できます。
となるとキャッチした側は再度失った陣地を回復するためにキックの選択肢の優先順位が向上します。

その時にキッカーが大切にしていることは蹴ることができる場所にラックがあるのかどうか。

この一つの基準が角度になります。

特に自陣22mインサイドであれば、できるだけ前方に進みたいので、キッカーのために角度を確保してあげる(言い換えるとタッチから15mの外側にラックを作ってあげる)という行動が必要になります。

その手段として、「FWを一回当てる」という選択肢をとります。


2.次のキックチェイスの人員確保のため

キックキャッチした後ラックができた場合、前方に進んでいる蹴った側の方が体の向きに関して非常の有利なため、キャッチした側はラックのセキュリティに多くの人数を有することが往々にしてあります。

1.と同じく再度キックを蹴る選択肢の優先順位が高くなります。

キックを蹴る時に大切なのは、『キックの精度 × キックチェイス』になります。

どれだけ良いキッカーがいても、キックチェイスが機能していなければ全く意味をなしません。

2つの要素がお互いに働きかけようやく意味をなします。

上述の通り、ラックのセキュリティに人数を有する場合、そのままキックを蹴ってしまうとキックチェイスが人数不足で機能しない可能性があります。

その解決のために、「FWを一回当てる」という選択を行い、キックチェイスの人数確保を行います。


3.キックチェイスのメンバー選定のため

2.で解説したキックチェイスの人数を確保する目的に+αする要素として、キックチェイスをより機能させるためにはキックチェイスをしているのが誰かという視点も必要になります。

キックを蹴った場合、現代ラグビーだとキャッチを行う選手は10.11.14.15番の選手が多くなってきています。

キックチェイスはもちろんBK(バックス)の選手も行いますが、キャッチした選手にタックルに行くことが多い選手はFW(フォワード)になります。

1番〜8番まで全員が一列になることは基本不可能になります。

同じFWといっても全員違う体型をしていますし、BKとFWはミスマッチと呼ばれることが多い中で、キックチェイスはそれらの選手をFWだけで止めなければいけないことが多くあります。

その際タックルに行くことに適しているのは、「プロップorフランカー」という質問があれば即答で答えが返ってくると思います。


また、違う視点を持つと、キックを蹴られてキャッチした後のラックに入るFWはどのポジションが多いでしょうか?


さすが!その通りです!

次のキックチェイスに行くべき選手がこのラックのセキュリティに入っているケースがほとんどです。

なので、その選手たちがキックチェイスの準備ができるように「FWを一回当てる」という選択肢が必要になってきます。


4.ATに向けてゲインラインより下げないため

1.で攻撃方向が2つあると有利という説明をしましたが、キックキャッチ後ボールの権限はこちらにあるので、キックを蹴り返すだけでなく、攻める選択肢もあると思います。

ラグビーは「ボールを前に投げてはいけないが、前に進まないと得点が取れない」というなかなか矛盾したスポーツですが、攻撃にはボールを後ろにパスする必要があります。

でも、キックキャッチ後は1つの攻撃方向しかないケースが多く、攻撃のパターンも多くはありません。

2つの方向を作るためにFWを当てるというのは理解いただけたと思いますが、別にBKにボールを供給しても良いわけです。

ですが、キックキャッチ後どちらが有利かというと、基本的にDFの方が揃っていることが多いです。

ということは、パスを回すとどんどん下がってしまう可能性があります。

そのリスクを最小限にするために、ゲインラインに一番近く攻撃ができる「FWを一回当てる」という選択肢が優先順位が高くなるというわけです。



いかがだったでしょうか。


ラグビーのプレー中によく起きる、キックキャッチ後にFWを一回当てるというプレーの意図を4つの理由から解説いたしました。

同じ選択肢でも見え方を考えるだけで意図は1つではなく、複数見えてきます。


その傍ら、他の関連した事柄も見えてきたのではないかと思います。

このように考えていくと、すべてのプレーに意味があり、ラグビーの理解度が向上するきっかけになると思います。


考えるラグビーを是非取り入れてみてください!!




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