『ピンクの象を考えない』を読んで

“大塚加子は目を覚ます。彼女は十五歳である。”

果たして、これは誰の物語であろうか。

最後まで読むと、新城優姫の物語のようにも読める。
概ね大塚加子の物語の体裁で進んでいくが、じゃあそれはどの大塚加子なのか。もしくはどの新城優姫なのか。

「人をやるのが――」( https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=11892720 )の時と遠からず近からずだが、あちらは引き算でこちらは足し算と言えるか。いや、言えるだろうか。
何にせよ経験値を積むという点に類似点がある。

もし、人が、魂が?高潔でパーフェクトであればやり直す必要はない。
完璧な人間は一つの生命として完結する。
あ、それってエヴァの使徒じゃん。野原智慧は使徒。

じゃあ新城優姫は何だ。

無人島になにか一つ持っていくなら何?と聞かれたらとても悩むが、私ならカロナール錠の一番大きい箱にするかもしれない。
それほど逼迫せずとも、選択の連続の中に私たちは生きている。

新城優姫が手に入れた『選択』は、檻の中の猿に与えられた棒である。
ああ、自分は吊るされたバナナを眺めて死んでいくんだなと思って餓死した猿が死ぬ間際に強烈に念じた棒。

もしかしたら進化を俯瞰で、そして情緒的に眺めたらこの物語のように見えるのかもしれない。

トラが黄色いのは、餌になる鹿には黄色と緑色の区別がつかないからだそうだ。
つまり、ある時突然変異した黄色いトラの子孫が紆余曲折あって繁栄した。そこに、「黄色くなろう」という意志とその影響は存在しない。偶然の産物。
でももしかしたら、「黄色かったら良かったのになぁ」と思ったトラがいたかもしれない。
それが新城優姫。

今度こそ君を守るよとカヲルくんも言ってたし。新城優姫は渚カヲル。

なんだ、どっちも使徒じゃないか。
人類滅ぼすし。

あんまりふざけていると不璽王さんに怒られるというか、創作物を創作物で例えるのはよくない。ごめんなさい。

私と私、私と彼女、彼女と私、彼女と彼女。
不璽王さんのおかげで色々と百合小説なるものを読むようになって、これも百合なのか…こんなのもあるのか…と未だにカルチャーショックに暇がないのだけど、なんだかんだで不璽王さんの作品がそもそも異質なのではないかという可能性はある。

『親の愛など知るものか』( https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=14113981&s=09 )のような、捩れてはいるが比較的わかりやすい百合要素のものもあるが、今回だって何をもってどこら辺が百合なのでしょうか?と初め悩んだ。
なので、だいぶ独自の見解に走ってしまって申し訳ない気持ちになる。

百合はいわゆるジェンダーレスという概念上での同性愛を描くものではない(ハズ)。
かといって別に願望≒ファンタジーというわけでもなく、勝手に解釈すれば、勘違いや思い込みを含めての「私が私の世界にかけた呪い」みたいなものなのだと思う。
ホラーやスリラーに近い。
神父と幽霊は百合。ヒロインと殺人犯は百合。

そう勝手に思い込んでからもう一度、“大塚加子は目を覚ます。彼女は十五歳である。”から始めてみると、なんとなく誰が誰に呪いをかけたのか、これは誰のためよ誰による物語なのかわかりそうな気がしてくる。あくまでも気。

しかし気を練ることによって空も飛べるのだ。その場合ひこうしょうじょになってしまうが。



ピンクの象を考えない | 不璽王 #pixiv https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16690344


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