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『ルーブル美術館展 愛を描く』に行ってきました

国立新美術館で開催中の『ルーブル美術館展 愛を描く』を観てきました。4月1日 (土) の午前にはオンライン予約が16:00まで埋まっていたので17:30の枠での訪問。遅めだったからか混雑もなくゆっくり回れたので結果オーライ。

なおルーヴル美術館は全作品をオンライン公開しているので、作品名にリンクを貼りました。改めて作品を見ると記憶の呼び水にもなるし、ありがたい話です。


プロローグ

入場して正面に見える《アモルの標的》が描かれたのは1758年ですが、キューピットがハートに矢を刺す表現はこんな時代からあったんですね。その隣に置かれるのはアダムとイヴ。知恵の実を食べる前後の2枚が置かれています。多くの人が知っているところから入るわかりやすい導入。

I. 愛の神のもとに

第I部では古代ギリシャ神話が描かれた作品が並びます。「I-1 欲情――愛の眼差し」では見つめあう二人ではなくて、《ニンフとサテュロス》では男性が眠る女性を、《眠るアモルを見つめるプシュケ》では女性が男性を見つめる窃視的な場面が描かれています。

続く「I-2 暴力と魔力――欲望の行為」では、男性は暴力で、女性は魔力で相手を我が物にしようとする場面が描かれた作品が並びます。《パンとシュリンクス》など今見ると完全に事案ですね……。「I-3 死が二人を分かつまで――恋人たちの結末」、「I-4 愛の勝利」はそれぞれバッドエンド、ハッピーエンド。

II. キリスト教の神のもとに

第II部では親子愛であったり人類への愛であったり神への愛がテーマとなります。父の愛に迎えられる放蕩息子が美男子に描かれているのにイケメンに限るのかと俗なことを思ったり。《放蕩息子の帰宅》(Leonello Spada)《放蕩息子の帰宅》(Domenico Maria Viani) どちらの放蕩息子も見目麗しい。狭量なので2枚目のポーズにちょっといらっとします。

III. 人間のもとに

第III部では庶民の日常的な風俗が描かれているのを見ることができます。「III-1 室内と酒場」で17世紀のオランダ絵画が並ぶのは、この時代のオランダは市民階級(特に商人)が力を持つようになったからでしょう。それ以前は画家の客は王侯貴族でした。今では誰もが頼めるようになっているので隔世の感があります。これは宣伝ですがSkebは依頼を受ける側としてはとても気楽なので https://skeb.jp/@SO_C  でご依頼お待ちしております。

「III-3 エロティシズム」を眺めていると美女・美少女の絵に対する欲望は今も昔も通じるものがあると思います。卵肌の顔。美術解剖学的なリアリティと表現的なデフォルメとがバランスする身体。頬や肌の薄い肩にさす赤み。《褐色の髪のオダリスク》は後宮(ハーレム)への憧れから描かれたと紹介されていました。そう言われるとエキゾチックな美女への憧憬・情欲がストレートに出ているように感じます。

前後しましたが「III-2 優雅な牧歌的恋愛」で異彩を放っていたのが《かつてヴィーナスにささげられた神殿》。松涛美術館の「終わりのむこうへ : 廃墟の美術史」で見た廃墟のロベールの作品がここにも。廃墟趣味がいかに伝統あるものかわかります。

「III-4 夫婦の幸福の演出」、「III-5 結婚の絆か、愛の絆か?」を経ていよいよ最後のエリアへ。

IV. 19世紀フランスの牧歌的恋愛とロマン主義の悲劇

「IV-1 アモルとプシュケ」で再びテーマは《アモルとプシュケ》へ。本作に限らずこのエリアは大きな作品が多くて満足度が高かったです。せっかく美術館に足を運んでいるので大きな絵を見たい。

「IV-2 ロマン主義における男性の情熱」では《友情の盃を交わすヒュメナイオスとアモル》のような男性どうしの愛を描いた作品が並びます。19世紀のフランスでは非異性愛はどのような扱いだったのでしょうか。古代神話をモチーフとすることが一種の隠れ蓑だったのでしょうか。

最も美しいと感じられた作品は、最後の「IV-3 死に至る愛」に配置されていました。《ダンテとウェルギリウスの前に現れたフランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタの亡霊》です。派手な作品ではありませんが、キャンバスの斜向かいを結ぶ大胆なレイアウトと、抑制の効いた裸身の描写が緊張感にあふれています。あと細かいところでは傷と涙がとても繊細。

余談

見出し画像は、写真素材集から探した本物のルーブル美術館。いつか行ってみたいものです(行けるだけの時間とお金の余裕が欲しいものです)。

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