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うら若き男女の澄み切ったやりとり

会社のビルに入っているうどん屋さんで昼食をとっていたら、隣の席に大学生くらいと思われる若い男女の二人組が座った。(カップルか、とても仲は良いがまだ付き合ってはいないというような感じだった)

お互い相手に対して頻繁に「ありがとう」と言っていて、特に女の子のほうがよく言っていた。男の子が二人で座れる席を取ってくれていたこと。女の子のカバンを男の子が自分の後ろのスペースに置いてくれたこと。お箸を取ってくれたこと。それら全てに女の子は、「ありがとう!」と気持ちのこもった感謝を伝え、こんな会話をしていた。

女の子「この前△△(恐らく友達の名前)が話してたことなんだけど、『ある言葉を言う機会が多い人は幸せな人です。それは次のうちどれでしょう。①ありがとう、②おはよう、③ごめんなさい』っていうクイズがあって、どれだと思う?」

(女の子は、体の前で手を合わせながら話していたが、そこに全くわざとらしさがないことが、純真さを際立たせていた)

男の子「ありがとう、じゃない?」

女の子「正解! 簡単だよね笑 私も当たったんだけどさ笑 なんか、ありがとうって言うことが多いってことは、それだけ人に何かしてもらってるということだから、幸せな人ってことなんだって」

男の子「うん、それはそうだろうね」

女の子「〇〇君(その男の子のこと)もたくさんありがとうって言ってくれるよね」

私は、二人がお昼時で賑わっている大手の某うどん屋さんで周りに聞こえるボリュームで関西だしよりも澄み切ったやり取りをしているから、男の子が、青春小説や少女漫画に出てきそうな、赤い実はじける、アラフォーおじさんの血圧も上がる、キュンとする返しをしてくれることを勝手に期待した。

男の子「そ、そうかな・・・」

ここで、「だって、君といると幸せだから」とか言ってくれていたら、仕事の疲れも吹き飛んで、嬉しさのあまりうどんチケット(天ぷらのほうが良いか)10食分くらいプレゼントしていたところなのだが、なかなか現実にそんなセリフを言う人はいないのだろう。私の期待は妄想に過ぎなかった。

食べ終わったのにうどんのスープを少しずつ飲んでいることにして二人の会話を聞いていた私は、そこで席を立った。

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