マッチョとアソコ

通っているジムに“先輩”と呼び慕っているお兄さんがいる。ある日のトレーニング後、彼がいつものように話しかけてくれた。

「お疲れ様です。今日は寒いけど、チャリで来てるんでしょ?」

「お疲れ様です。いや、僕家遠いんですよ」

「え?区内じゃないの?」

「〇〇区なんで、電車で来てるんです」

「そんなとこから?なんで!?〇〇区にもこの手のジムあるでしょ?」

「ここは職場から近いんでたまたま来てみたんですけど、皆さん優しいし、良くしてくれるし、ちょっと遠いけど苦ではないのでここがいいなって」

先輩は少し考えるような仕草をして、思い出したのかまた話し始めた。
「いや、でもね、昔は変な人いたんだよ」

「どんなですか?」

「『そんな軽いのでやってちゃダメだ!』とか誰にでも言っちゃうオジさん。俺なんか気にしないけど、初心者の人は可哀想だったよ」

「マジですか…、怖いっすね。今いなくてよかった…」

「でもあの人、更衣室で会ってから俺に何も言ってこなくなったよ」

喧嘩でもしたのだろうか…?先輩は空手をやっていたらしいし…、でもボコボコにしたら出禁になるよな…。
それでも続きが知りたくて、大袈裟に心配そうな顔をしながら訊いてみた。
「何かあったんですか?」

「俺のチ〇コ見てから、何も言わなくなった」

いつも閉館までジムにいる先輩。
年上なのに、高頻度で鍛えていてスゴいと思っていた。
年上なのに、重量が落ちない姿に憧れていた。
立派な大胸筋に見惚れるのはいつものことだった。
まさか、そんなモノまで隠し持っているとは…。

そう言ってニヤリとすると、先輩はシャワールームへ入って行った。
なんとなくいつもより背中がデカく見えた。

モテアイテム筋肉にも劣らない男性の象徴。
こればかりはいくらハードに追い込んでも、限界まで痛めつけても肥大するとは限らず、その見た目は遺伝などによる。
男性のシンボルは時に、デカいマッチョをも黙らせる。
いい勉強になった。

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