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宇宙人(モノローグ)

※ もしも恋人が宇宙人だったら。

ーー 室内。

 もう行っちゃうんだ。今日は早いねー。

 そっか任務が入ったんだ。お疲れ様。

ーー 窓を開ける。

 ねえリョウヘイさん、M314星雲にも季節があるの?

 そうなんだ。知らないことばかりだなあ。ほんと不思議。

 どこが、ってことはないんだけど、地球人の中にあなたみたいな人はいなかった。うーん、話し方が妙に落ち着いてたり、全然音楽に興味なかったり。そういうとこ、リョウヘイさんはやっぱ宇宙人なんだなって思うよ。あ、地球のコーヒー飲んでく?すぐ入るよ。

 そっか。急いでる時にごめん。緊急の任務だもんね。リョウヘイさんのお陰でこの星の平和が守られてるんだから、私、すっごく誇りに思うよ!夜、一人で寂しくなりそうになったら、ここから星を眺めるんだ。どこかでリョウヘイさんが悪の組織ベーガ族が送り込む怪人たちと戦ってるんだって思うと、自然と勇気が湧いてくるよ。私たちの関係って困難が多いけど……。

 ほら、リョウヘイさんは地球の戸籍がないから結婚できないこととか。でも、そんなことどうでも良くなっちゃう。頑張ってね。

ーー 玄関の方に歩く。

 送っていきたいな。

 だよね。リョウヘイさんが宇宙に帰るところ、地球人の私が見ちゃダメだよね。あ、それに前言ってたもんね!

 ほら、私とリョウヘイさんが付き合ってることを知ったら、ベーガ族は私を狙ってくるって。どこでベーガ族の一味が監視してるかわからないから、私の家以外では会わないようにしようって!そういうとこリョウヘイさんって優しいよね。日々任務で生きるか死ぬかって瀬戸際にいるのに、そうやって私のこと気遣ってくれて。私ね、リョウヘイさんと付き合ってほんとに……あ、ああ、もう行かなきゃだよね。なんか、引き留めたみたいになってごめん。次、地球にはいつ来るの?

 そうだよね。ベーガ族次第だよね。待ってる。あと宇宙にいる間はライン見られないと思うから、あんまり送りすぎないようにするね。

 わかってる。既読ついたからって電話かけない。

 ううん、ありがとう。いってらっしゃい……待って!

ーー 間。

 あのさ、私子供の頃、ヒーローものの特撮とか、大好きだったんだよね。それこそ、テレビに齧り付いて見てたよ。親は子供騙しだなんて言ってたけど、私、割と幸せに騙されてたんだよね。でもさ、大きくなるとなんか余計なこと気づいちゃうんだよね。ドリルで岩盤に穴開ける怪獣って、反作用で自分の方が回っちゃうんじゃないか、とか。あと、敵はどうして日本ばかり攻めてくるんだろう、とか。せっかくの素敵な夢を自分で壊すみたいにさ。

ーー間。

 リョウヘイさんのワイシャツは、なんでうちで使ってるのとは違う柔軟剤のにおいがするんだろうね。

 ううん、それは地球の、っていうか日本のだよ。昔使ってたからわかる。もうさ、自分で自分のこと騙しきれなくなってきちゃった……。一回、『設定』は抜きで話そう?

ーー 終 ーー

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