ハイブリット減価償却

石川純治の『楕円の思考と現代会計』を読んでいて、ハイブリット減価償却というものが出てきておもしろいなぁと。

そもそも、この「楕円の思考」というのは、現代会計には伝統的会計のフロー重視と現代の潮流である時価会計的なストック重視の二つの中心点がある、そのために、二つの入り混じった会計基準になっている、ということでした。このフロー重視とストック重視の調整弁となっているのがその他包括利益です。

ですが、このストック重視とフロー重視の入り混じった減価償却という物が存在するんですね。それが、資産除去債務による減価償却です。

資産除去債務は将来支出を債務として計上する、というストック重視から計算され、その相手として追随的に資産計上、費用処理がなされます。この費用処理は、減価償却としてなされます。しかし、伝統的な会計における減価償却は費用性資産の費用の配分であって、利益計算の中で行われるものです。つまり、フロー重視の思考から出ている。

減価償却費でも、ストック重視の結果として計上することになった部分が、伝統的な会計における費用配分としての減価償却費として費用処理されていく、という、両者の考え方が混在することになります。これが、ハイブリット減価償却というわけです。

特に日本においては、ドイツ系の会計から戦後アメリカ系の会計へと移り変わりましたが、長く動態論による考え方で推移してきました。しかし、会計ビックバン以降、IFRSとのコンバージェンスも含め、より公正価値会計というものが入り込むようになり、ストック重視の考え方が会計に取り入れられるようになりました。

利益計算と財産計算、というどちらを重視するのか、という考え方のちがいの軋轢が会計の上にも表れているのだと思います(ある意味で、異文化の摩擦、と言ってもいいのかもしれませんが、あんまり、会計に文化差を言う人も少ないような気もします)。

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