沖縄と豚の話。
沖縄では現在豚コレラ発生で大騒ぎなのですが、全国ニュースではあまり取り上げられていない印象です。
ヤマトゥで発生した時もそんなものだったのでしょうか。
私は、沖縄特有の食習慣や歴史も関係していると思っています。沖縄の人々にとって豚は、とても身近な家畜であり食べ物だからです。
豚との暮らし
戦前、沖縄の農家などでは豚を飼うのが当たり前でした。
豚はウチナーグチだと「ぅわー」と言います。前に小さな「ぅ」をつける感じの発音になり、「わー」だと一人称の「I(俺、私)」になってしまいます(正直なところ発音の使い分けは難しいです……)。
少々汚い話になりますが、昔はトイレが豚小屋だったんです。豚が人間の排泄物などを処理してくれて(もちろん他にも餌は与えていたとは思います)、その豚を人間が食べる。ある意味効率的な食物連鎖?ではありますね。
また、夜道でマジムン(魔物、お化け)に遭った時には帰宅した際に豚を起こして鳴かせる、という魔除けのおまじないがあったと聞いた事があります。
もちろんと言うか何と言うか、豚のマジムンも存在するらしいんですけどね。股の間を通られるとマブイ(魂)を取られるとか、男性は生殖能力を奪われるとか、諸説あるようです。
豚料理の習慣
お正月(旧正月)や旧盆など、お祝い事がある時は家で豚を捌いて食べるのが普通でした。
顔はチラガー(面皮)に、耳はミミガー(耳皮)に。ソーキ(あばら肉)や三枚肉(バラ肉)、足てぃびち(足の輪切り)は現在でもお馴染みですね。
年末料理について書いた記事でも触れましたが、内臓ももちろん食べます。胃や腸は中身汁に、血はチーイリチー(チーイリチャーとも呼ばれます)に。
チーイリチーは食べる地域が限られている上に、一時期材料が少なくなって食べられなくなってしまうのではないかと騒ぎになりました。
家で飼い育てた豚を、感謝して食べる。それが沖縄の豚肉文化なのだと思います。
海を渡って来た豚達
そんな豚肉文化のみならず、生活の全てを破壊したのが沖縄戦でした。人間もそうですが豚も多く死に、土地は米軍に奪われ、もちろん豚肉など食べられなくなりました。
そんな状態を知り、ハワイに移民したウチナーンチュ達が豚を沖縄に送り届けてくれたのです。この出来事は『海から豚がやってきた』というミュージカルにもなりました。詳しい事は沖縄県のサイトで!
世界のウチナーンチュの繋がりの象徴も、豚でした。だからこそ今回の豚コレラ騒動で多くの豚が殺処分されざるを得ない事は、とても悲しいし文化的には心配でもあるのです。
これからどうなってしまうのか
1月下旬、沖縄は旧正月を迎えます。この時期に豚を使った料理を食べる方々も多いと思います。
豚コレラは人間には感染しない、感染した豚や猪を食べても人間に影響はない、という呼び掛けがされていますが、ウチナーンチュが心配しているのは養豚業への影響とそれに伴う豚肉の流通減少なのではないでしょうか。
うるま市で豚コレラに感染した豚の中には、沖縄の在来種であり近年復活した「あぐー」も含まれています。恐らく観光業にも影響はあるのではないでしょうか。
とにかく、早く事態が収束するのを待つばかりです。
豚がどんなに沖縄にとって身近で大切な存在なのか、こんな事になって初めてちゃんと考えました。
※画像は「みんなのフォトギャラリー」からお借りいたしました。ありがとうございました。