『おばあ』と言う呼び方について、の話。
沖縄で生まれ育った私にとって、祖母2人を『おばあ』と呼ぶのは自然な事でした。そして、『おばあ』と呼べるのは彼女達の事だけでした。
『おばあ』は実の祖母だけ、『おじい』は実の祖父だけ
6月に母方の祖母が亡くなった時、私はnoteでこんな呟きを書きました。
その後で気付いたんですよね。
「ヤマトゥンチュにとっては『何言ってんだこいつ』なんだろうなあ」って。
「沖縄ではお年寄りの事を皆『おばあ、おじい』と呼んでいる、と思われているんだろうな」って。
『ちゅらさん』の『おばあ』のぼやき
沖縄を舞台にした朝ドラ『ちゅらさん』で主人公の祖母を演じていた故平良とみさんが、生前こんな事をおっしゃっていたそうです。
「『ちゅらさん』で有名になって、皆が声をかけてくれるのは嬉しいけど、『おばあ、おばあ』って言われるのはちょっとね……」
ドラマで主人公や家族が祖母の事を『おばあ』と呼んでいたため、勘違いしている視聴者もいるのでしょう。
でも、さすがに初対面のお年寄りにそう呼びかけるのは失礼だと私でもわかります。
知らないお年寄りに「おばあ!」と呼びかけるのは、ヤマトゥで全くの他人を「ばあば!」もしくは「ババア!」と呼ぶのと同じようなものだからです。
銀座あたりで、お洒落して歩いているようなおばあ様にそんな事を言おうものなら「私はあんたのおばあちゃんじゃない!!馬鹿にするな!!」と怒られるでしょう。
『姉さん、兄さん』と呼び合う、姉さんと兄さん
ところで、沖縄では中高年の方々が『姉さん、兄さん』と呼び合うのを良く見かけます。年齢は関係ないようで、相手が歳下でもそう呼びかけるみたいです。
私が予備校に通っていた頃の事。
バスで登校中だったのですが、私はタイヤの上になっている一番前の席に座っていました。大きな十字路で赤信号になりバスが停車していたら、その時、近付いて来てドアをノックする80代くらいの女性が。
「えー、兄さん乗せなさい」
もちろんバス停ではありません。うわあああ危ない……と思っていたら、『兄さん』と呼ばれた50代くらいの運転手さんが普通にドアを開けました。
「姉さん、ここから乗ったら危ないよー。次からはバス停から乗りなさいねー」
こんな事を言っては何ですが、沖縄では昔の感覚を引きずったままこう言う行動に出るお年寄りが多いような気がします。大らか過ぎる時代がありましたから。
あれから15年以上も経ちましたが、あの『お姉さん』はお元気なのでしょうか。
お年寄りだから『おばあちゃん、おじいちゃん』と呼びかけなければいけないわけではなく、ましてや自分の祖父母に対するように『ばあば、じいじ』と呼ばなければいけないわけではないんです。
『お姉さん』と呼びなさい!
そして昨日(12日)、新聞の投書欄でこんな投稿を読みました。
80代ほどの女性2人が言い争いをしていたので、投稿者が聞き耳を立ててみると片方がこう言っていたそうです。
「あんたは私の事をおばあさんおばあさんって言うけど、あんたの方がおばあさんでしょう!?おばあさんって呼ばないでちょうだい!!」
もう片方(恐らく同い年くらいだったのでしょう)が反論。
「だったらあんたの事は何て呼べば良いの!?」
そうしたら、答えは。
「お姉さんと呼びなさい!!」
投稿者は男性だったからなのか「女性はいくつになっても『おばあさん』とは呼ばれたくないものなんですね」と結論づけていましたが、それには少し違和感がありました。
その方も、お孫さんや曽孫さんになら『おばあさん』『おばあちゃん』『おばあ』と呼ばれても平気だと思います。
私の『おばあ』は2人だけ
祖父母と同世代の親戚(大叔母など)はいますが、子供の頃から『おばさん、おじさん』と呼んでいました。親の真似をしてと言う事もあるけれど、私の祖父母ではないから。
近所のお年寄りに『おばあ』などと呼びかける事もありませんでした。彼女ら、彼らには名前があるから。おばあちゃんおじいちゃん、なんて甘えられる関係でもないから。
私にとっての『おばあ』は、父方の祖母と、母方の祖母の2人だけなのです。
※ヘッダー画像は「みんなのフォトギャラリー」からお借り致しました。ありがとうございました。