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【百姓暮らしの手帖】ダウン症の赤ちゃんを育てて感じたこと 世界ダウン症の日

我が家には三人姉妹がいます。そのひとり去年3月に生まれた末っ子はダウン症です。

ところで、ダウン症については、出生前診断でわかると9割以上が中絶を選ぶそうです。おそらくはダウン症児をもつことは大変だったり、不幸なことだとの判断があるのでしょう。ただ、ダウン症の理解があれば多くの選択は変わったかもしれません。こうした状況もあり、毎年3月21日の世界ダウン症の日には、世界中でダウン症の理解をはかる啓発活動が行われています。

世界ダウン症の日にあたって、育児歴は一年と短いものではありますが、育児をする上で気になった三つのことを中心に、ダウン症育児の実際と感想をお伝えしたいと思います。一家族の一年ほどの経験ですが、ダウン症に興味のある方はご一読頂けたら幸いです。

1. ダウン症の育児は大変?

上にいる二人の娘の時と比べた時、最も違ったのは病院に随分とお世話になったことです。ダウン症の子は約半分の子が合併症で心疾患を持って生まれます。娘も心臓に穴があり、一歳までに二度の入院手術を受けました。親子で入院した合わせて一か月の期間は、手術の心配もあって一番大変な時期でした。もちろん、手術が無事終わって心疾患での通院は徐々になくなっています。しかし、それ以外にダウン症絡みの運動リハビリや検診に行く機会もあり、月に2・3回の病院通いが日常の光景になっています。育児全部を見渡しても、手術時の入院と病院通いがこの一年で最も労力と時間を使ったところです。

家でのお世話では、手術前は酸素吸入のチューブを昼夜関係なく外せなかったり、ミルクを吐いてなかなか飲まなかったりとそれなりに手がかかるところもありました。そこは慣れるまでは一苦労です。一方で、ダウン症の子は昼も夜もよく寝るので、寝かしつけや夜泣きを心配することは少なく、上の娘たちの時よりも少しゆっくりさせてもらった感じです。

ダウン症を告知されてすぐの時、育児の負担で仕事や生活に大きな支障がでないか心配でした。でも、降り返ってみると、手術で入院した時こそあれこれやりくりが必要だったものの、それが終わってしまえば「みなさん、普通に生活してますよ」と病院の先生に言われた通りになっています。

ところで、ダウン症の育児を支える仕組みもしっかりあります。

ひとつは、ダウン症児をもつ親たちが参加するダウン症協会です。参加すれば、先輩ママに疑問や悩みを相談して助言をもらったり、ママ同士で交流しながら情報交換ができます。ダウン症協会のつながりで、親同士が連帯感をもって育児ができるのは、ダウン症育児の特徴かもしれません。

公的な扶助もあります。高額な費用がかかるNICU入院・心臓手術も、医療費の自己負担は殆どありませんでした。また、合併症によっては、特別児童手当が支給されることもあります。こうした仕組みもあって、治療と育児にお金の心配は無かったです。

ダウン症育児を支えるいろいろな仕組みがあることは、これからしばらく子育てする上でも、一つ安心な所だと感じています。

2.ダウン症の赤ちゃんはどんな感じ?

まず思うことは、成長がゆっくりなこと。1歳のいまでも体重は7キロをすこし超えたくらい。まだ立ったり歩くことはせず、ようやくずり這いの練習です。離乳食は殆ど食べず、いまもミルクが中心です。ダウン症児を育てるほかのママさんに聞いても、差はあれど成長はゆっくりなようです。離乳食をなかなか食べないときはもどかしいですが、かわいらしい赤ちゃんの期間が長いのは、とてもラッキーに思います。

また精神面では、空腹や眠気で泣いたり怒る時もありますが、普段は不思議なほど穏やかで上機嫌。顔を覗きこむと愛想よくニコッと微笑んでくれます。まさに天使さんでとにかくカワイイ!まわりを和やかにしてくれます。もちろん、長女と次女が赤ん坊の時もそれは同じ。でも、ひときわご機嫌さんな三女には天使を感じる時がとても多い印象です。

ダウン症児を育てた先輩ママさんたちから「幸せを運んでくるよ」「家が明るくなる」と聞いてましたが、日々まさにそう感じてます。

3.将来はどうする?

先のことでまだわからないことはありますが、子供の将来について考えることもあります。

ダウン症の場合、知能の発達具合から世間で言う成功や自立をすることは難しかもしれません。一方、ダウン症の書道家・金澤翔子さんのように芸術で特別な才能を発揮することもあるでしょう。とはいえ、蛙の子は蛙。親のことを思い浮かべると、第二の金澤翔子さんを育てることは、すこし厳しそうです(笑)

身近なところに目を向ければ、馬のお世話であったり畑作業であったりと、農園が将来の活躍の場となる気がしています。また、娘のつながりでダウン症など障害のある子が自然と遊びに来るようになっています。娘がいることで農園に新たな可能性を運んできてくれることでしょう。農園を舞台にした百姓娘の成長を見守ることが親のこれからの楽しみです。

4.最後に

我が家の場合、出生前診断は受けなかったため、ダウン症だとわかったのは生まれてからでした。

もし出生前診断で事前にわかった上で選択するならどうするでしょう?この一年の経験で判断するなら、産むことを選びます。

娘にとって一番の山場は心疾患でしたが、手術を経て乗り越えつつあります。日々の育児でダウン症に特有な対応もありますが、それも慣れたら普通になってきます。これからまだ長い道のりですが、支援の仕組みもあって、ダウン症の育児は登れる山かなという印象です。確かに上の娘二人の時よりも何合分か高い気はしますが、登るのが困難なエベレストのような山では決してありません。

何よりも、道中は笑顔の天使さんとの賑やかなキャラバンです。登った先には、将来の楽しみな展望も待っています。

一家族の一年目の記録となりますが、何かの参考となれば幸いです。


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