マガジンのカバー画像

短文

17
アプリ「書いて」で修行中→再掲。
運営しているクリエイター

2022年11月の記事一覧

お題「飛べない翼」

お題「飛べない翼」

閉じてはダメだ。
今は、飛ばなくていい。
でも、とにかく、開いておけ。
いいな?

黄色い口たちがかすかに頷くのを見て、両親はまた飛び立つ。
もう巣立ちは近い。この温まった家を出たら、強者だけの世界なのだ。

柔らかなその羽が、空を統べる日が来る。
さあ、開け。

「腹へったー」
「腹へったー」

※ツバメをイメージしてます。

お題「夫婦」

お題「夫婦」

休日の朝食時、夫が「しなもそ」と口走った。
わたしは、「ああ、つなもそ」と返す。

娘が小学生のころ、怒涛の商品展開を繰り広げていたサンリオキャラクターの、シナモロール。ふんわりとした水色の背景に、綿あめみたいな白い小犬がニコニコしている、あれだ。
女の子向けには赤やピンクの文具が大半だった時代に、パステルブルー系の小物は広く受け入れられ、学校の掲示物にも頻繁に登場していた。
覚えたてのカタカナで

もっとみる
お題「一筋の光」

お題「一筋の光」

鍋に鰹出汁を温めます。
ニンニクは2片を薄切りに。
キャベツはお好みの大きさでザク切り。
キノコ類は、エノキ、シメジなど、手に入りやすいものを用意。石付きを切り落とし、小房に分ける。エリンギやシイタケは薄切りに。舞茸は手で割きます。

「せ、先生、あれは…」
「今日はお魚ですね。すぐたらいを用意して。一番明るく照らされている辺りに置いてください」
「たらい…たらい…バケツじゃダメですか」
「バケツ

もっとみる
お題「鏡の中の自分」

お題「鏡の中の自分」

髪を切るときって、だいたいヘアカタログなんかを見て、こんな感じにしてください、ってオーダーするでしょ。
でも、仕上がってみると、それは望んだイメージとは違ってたりする。

服もそう。お店で見てるときや、試着のときって、場の雰囲気に乗っかって、似合い度が割増ししてる。家に帰るとその効果が消えてて、どこかガッカリ感がある。

一番近いからこそ、客観視がうまくいかない。
なりたい姿を追うのもいい。
同時

もっとみる
お題「眠りにつく前に」

お題「眠りにつく前に」

今日、このアプリを開くのは、寝る前です。
ウサギのケージの隣に布団を敷いて、あとは電気を消すだけ、という体勢で書いています。
目的は文章の練習、特に、瞬発力を得たいと思っています。
若い頃はひょいひょい出来ていたことが、ちょっとサボっただけで、頭も手も動かなくなる。本当に、恐ろしい。
というわけで、スプラトゥーンの復習もやってから寝ます。最近は、バイトして、オープン参加して、ナワバトラーで2勝した

もっとみる
お題「理想郷」

お題「理想郷」

(注釈)現在、男児出生の際には、すみやかにインケイを切除、フグリは発育状況を見て、後に二分の一、もしくは全摘出が推奨されている。(人科法による)

(注釈)現在、養育資格を保持する成人が、妊娠と出産を希望する場合、母性にのみ種子選定の権利が生じる。(保人法による)

(注釈)現在、子供を養育する期間、資格更新を基準として、その環境への補助が行なわれる。(内国法による)

長い混乱の果て、科学が導き

もっとみる
お題「懐かしく思うこと」

お題「懐かしく思うこと」

先週、コミカルにさえずる小鳥の動画にハマった。
そのコキンチョウという小さな鳥は、同居仲間に、飼い主に、早口に訴える。かわいいし、けたたましい。鳥のコミュニケーションは、受取る側次第だ。

うちには、手乗りの桜文鳥がいた。
小学生だった娘がペットショップで見初め、大事に育てた。大きなケガもせず、11年生きた。
文鳥もまた、コミュ力の高い生き物だ。
人の行動に合わせて、よく鳴き、よく歌ってくれた。

もっとみる
お題「もう一つの物語」

お題「もう一つの物語」

宝くじを買い続けている。
一人娘が私立中学の受験を決め、それまでのパート収入だけじゃツラいと思い立った日、ロトの数字を選んだ。
億で当たれば、学費を超えて余裕を持てる。
広い家なんぞはいらぬから、単調な労働から離れて、自由に学びを得たいと望んでいた。
しかしまあ、当たらない。
娘は私立中学から私立高校へ。
夫は転職したものの、体調を崩して退職。
今当たってくれたらと涙する日々があった。
そして、娘

もっとみる
お題「暗がりの中で」

お題「暗がりの中で」

視覚に頼らず、異質を検知。
聞き慣れない音。
心持ちを逆撫でするにおい。
近いのか?
不意に、足裏がぬめる。
何だ?
ああ、いやだ。助けを呼ぼう。
ダン。
ダンダン。
足を踏み鳴らして、周囲に知らせるのだ。
誰か。
ダン。
誰か。
ダンダン。
あ。明るくなったぞ。

「静かにね。あら、食糞に失敗したね。床を拭くから待って。大丈夫、気がすむまで撫でますよ」

※ウサギさんと暮らす我が家の日常。皆が寝

もっとみる