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「辛かったら逃げていいんだよ」の話

夏休みが明けてしばらく経つが、夏休み終了前後で表題のような反吐が出る言葉をSNSで案の定沢山見た。
おそらくは学校や職場でトラブルを抱える人間に対し、最悪の結果にならぬうちに視野を広げて考えていいという意味の言葉だろう。

まあ分かるが、この耳障りの良い言葉には重大な落とし穴がある。
例えばあなたは学校でいじめを受けている中学生だ。
教師も親も当てにならず地獄のような日々を送り、インターネットに逃げ込むと傷付いたあなたを癒す言葉が濁流のように流れ込んできて、「逃げていい」状態のあなたは不登校児となる。
たまにカウンセリングなどに連れていかれありきたりな言葉を吐かれ、どんどん心を閉ざしていく。

しばらく経ってあなたが自堕落に生活しているうちに高校受験というイベントがやってくる。
あなたはそれを機に社会復帰することを考えるが、クラスメイトの顔が浮かぶと恐ろしくて部屋から出ることが出来ない。
あなたはインターネットに逃げ込む。生優しいたくさんの意見を目にする。「逃げていい状態」のあなたは高校に進学しない。
一応世間体的な意味もあるということで通信制高校にひっそり入学はするが。

あなたは同級生なんかがバイトや部活に勤しんでいる様子をこっそりSNSで確認し、部活は無いのでバイトを始めてみる。
不慣れな環境で頑張って働くも、それ故に失敗が多かったり元来対人スキルが足りていないので上手くいかなくなる。
先輩にこっぴどく叱られたその日、あなたはインターネットに逃げ込む。善意に溢れた優しい言葉がたくさん載っている。意地悪な社会に虐められ「逃げていい」状態のあなたはそっとバイトを辞める。

今度は就職だの進学だのと周りが言い出し、あなたもなんとなく考えてみるがどれもピンと来ない。
何もしないわけにはいかないので、自分の学力で行けそうな大学を受験する。
大学入学前後にやること(主にSNSの活用など)をせず、その上で対人スキルがまるで無いあなたは入学早々ずっこける。

※私は大学生をやった事がないのでこの先は聞いた話だけで想像したことを語ります※

大学というのは相当優秀でない限り友人がいないと何かと不便な世界らしいのであなたは頑張って友人作りに勤しむ。
だが周りの言っていることや会話内容が理解出来ず興味が持てない。
必然的にあなたは浮いた存在になり、1.2ヶ月目で学食や飲み会などに誘われなくなる。
過去問が回ってこないからテストの範囲が膨大すぎて分からず成績は右肩下がりで、出席率も同じように下がる。

学校から家に連絡が来るようになった頃、あなたは「逃げ」のことを考えている。
辛かったら逃げていい。あなたに向いていない。世界は広い。学校や社会に縛られる必要はない。自由。多様性。民主主義。マイノリティ。ADHD。HSP。
あなたは予め答えを用意してインターネットに逃げ込む。
異論を排除した先にあなたの居場所がある。

就活などのシーズンもあったが、あなたは繊細な性格で競争に向かないので逃げていいことにする。

5年
10年
15年

あなたは次はどこに逃げる?

問1.今までの話の中で責任を問われるのは誰ですか。

※当記事は社会的・精神的な弱者を批判する意図はありません

おわり

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