時代の流れは残酷で/兎の中の人
つい数カ月前ことだが、とある方がサイゼリアへ食事に行くというとなぜかすごく盛り上がっていたのを思い出した。
あれがどうしてそこまで盛り上がったのか未だにわからないのだが、私の理解力がないからだろうと思っている。
実を言うとまともな文学作品もあまり読んでおらず、歴史に関してもようやく興味がわいてきたところである。
正直、もっと早くに武将モチーフのゲームやらマンガに出会っていれば変わっていたのかもしれないが、母が歴史が嫌いで面白くないことを私たちに植え付けたのも大きな原因だったのかもしれない。
今思えば、父も自分のかっこ悪いところを見せたがらないためか、歴史が好きだと言いつつ教えてくれたこともなかったことをぼんやりと覚えている。
私の教養に対するコンプレックスについてはさておき、今回は久々に言ったファミレスについて書こうと思う。
我が家はもともと外食はあまりしない一家であるため、一人の時かだれか一緒に食事をする人がいないと行くことはない。
例外としてはバイト先の賄いぐらいだろうか。
そのため外で食事をすること自体が特別でファミレスであろうとマックであろうと私にとってみれば楽しみの一つであった。
私は一つ、自分へのご褒美として養成所やオーディション、ボイスレッスンへ行く日は外でご飯を食べるようにしている。
地元の専門学校へ行っていた頃はお昼過ぎから夕方のレッスンのみだったので、節約も兼ねおにぎりを持参していたこともあったが東京への養成所からは移動時間を含めるとほぼ一日過ごすことになるため外食かコンビニ飯を取る必要が出てきた。
せっかくならばと、普段は食べないようにしている穀物をたっぷり使ったものやカロリーが高そうなものを食べたりもする。
夜遅い帰りのバスを待っている間に食べるマックのポテトの背徳感はいっそ快感すら感じるくらいだ。
もともとご飯、餅、パン、ラーメン、芋、餅、パスタ、餅が大好物なのを我慢して生活をしてるので余計に美味しく感じるのかもしれない。
まだ地元ではあまり新型ウイルスが発生していなかった数カ月前は県内のボイスレッスンに通っている帰りに、近くのショッピングセンターにマスクと気休めのクレベリンを装備し厳戒態勢で寄るようにしていた。
フードコートとファミレスなどのレストランも入っているので、ご褒美のお昼はそこで食事をとろうと思っていたのだが……なんと!そこに地元でなくなったサイゼリアがあったのだ!
久々のサイゼに心躍らせランチのパスタと懐かしのティラミスを頼んだ。
ランチだけでもかなりお腹がいっぱいになったが、あのティラミスならぺろりと行けるだろうと思って待っていたのだが
「お待たせしまた。ティラミス・クラシコです」
そう言って店員が出したものを見て驚愕した。
―――私の知っているティラミスじゃない!!
私が知っていたティラミスはカチコチに凍り付いた三角のアイスティラミスだったのだが、そこにいたのはとろーりと溶けたマスカルポーネチーズのクリームの上にココアパウダーがまぶしてある本格的ティラミス。
思い出のものとは全然違うものだった。
―――めっちゃうまい!けど、これじゃない!!
ぺろりと食べ終わった後、マスカルポーネチーズのクリームとココアパウダーの絶妙な組み合わせによる美味しさの余韻を感じながらも少し悲しい思いに浸る。
時代の流れに乗れなかったあのティラミスアイスとは二度と会えない悲しみを胸の内に秘め新しいティラミスを味わったのだった。
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