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2023.6.30 第138回 日フィルさいたま定期〜バルトークピアノ協奏曲3番と《田園》

敬愛しているピアニストの角野隼斗さんがソリストとして来てくれる!というのがきっかけで、市民でもあるし…と思い、今年初めて日フィルさいたまシリーズの定期会員になってみました。
確か今年はソニックシティリニューアル後最初のシリーズで、通年プログラムも聴きやすそうな魅力的なラインナップな気がします。
今回の演奏会で3回目ですが、いずれもとても楽しんでおります♪

今回、第138回のプログラムはこちら。

♪フィンジ 前奏曲 ヘ短調 作品25
♪バルトーク ピアノ協奏曲第3番 Sz.119
〜休憩〜
♪ベートーヴェン 交響曲第6番《田園》ヘ長調 作品68


感想に入る前に少しおことわりを…

私はクラシックコンサートの最初の1曲と、2曲めの第1楽章くらいまでは自分が緊張していて(おそらく以前のパニック障害の名残で…)、とにかく自分の気持ちと呼吸を整えることにかなり気を使ってしまい、曲を「堪能する」までに至ってないところがあります。。
そもそも語彙も豊富でないのですが、コンサート序盤に関してはさらに稚拙な感想になってしまいますが、ご了承ください…🙇‍♀️


スタートはフィンジという作曲家の前奏曲。造園家としても活躍した作曲家とプログラムノートに書かれていました。
ステージ両脇に飾られた盆栽にもなにか意味を感じます…。

樹齢約250年(!)の杜松
樹齢約120年(!)の山もみじ

初めて聞いた作曲家の初めて聴く曲でしたが、うっとりするようなとても優美な前奏曲でした。。


続けて、私にとってはこの日のメインであるバルトーク ピアノ協奏曲3番。

丁寧にピアノがセッティングされている間に、私は一生懸命呼吸を整えます…。
角野さん観たさに自分で選んだ前から3列めなのですが、過去2回の演奏会でソリストが想像以上に近かったのはわかっていました…。笑
いざその時が来て、一生懸命呼吸を整えようと試みましたが、ムリですよね。。近くで角野さんの姿を見るのは初めてではないのですが、ドキドキは止められません…。とにかく深呼吸!!で乗り切りました💧笑

さて、曲の話ですが、
第1、第3楽章のようなエキゾチックな民族舞踊的なのはもともと私も聴くのが大好きですが、角野さんご自身も弾くのを得意とされていて、もはや十八番のようなものでは…?とも思っています。
でも、この日は第2楽章が素晴らしくて、とても心に沁みました。。(←私のバイオリズムにもよるのかもしれないですが…)

昼間にアルゲリッチ先生の映像を観ておさらいした時もこの曲の2楽章は幻想的でステキと思ったのですが、この日の角野さんの演奏は大好きだなぁ…と思いました。


この2楽章は不思議な曲で、ぼーっと聴いてるとどこに拍があるのかわからないような感じに思えたのですが、人間の(私の?)呼吸がすーっと落ち着くリズムのような感じがして、ほっとして涙が出るような安心感みたいのを感じました。。
最近個人的に、音楽は人間の生理(自然の摂理?)に準ずるものであって欲しい…と思っている節があって、そういう意味でしっくり来たという感じでした。

学生時代の頃は、私の中ではバルトークも「(難解な)近現代の音楽」的な扱いで積極的には聞かない部類でしたが、前回パシフィル公演で聴いたアダムズの"悪魔は全ての名曲を手にしなければならないのか?" の後(←角野さんご本人の解説もたくさんあってかなりしっかり予習したのに、生で聴いたら思ってたより悪魔的要素が強くて、ダメージを喰らい撃沈した…🥲笑)だと、よほど全てが理にかなった美しい、聴きやすい音楽に感じました。

あとから読んだプログラムノートに

「旧来の彼の協奏曲を特徴づけていた血沸き肉躍るようなリズムや色彩感、前衛性が薄まり、かわりに調性に基づいた、しみじみとした楽想が随所に現れている」

と書いてあったので、バルトークの中でも"理にかなった"感強めの曲だったのかもしれませんが。。
(とはいえ、かてぃんさんのおかげで、たぶん私の聴く力もだいぶ底上げしてると思います♪笑)


そしてソリストアンコールはここ最近ではちょっとレアな気がするショパンの「華麗なる大円舞曲」。
(曲中のどこかの休符の瞬間にパサっと何か落とした音?がした時、表情にわずかな反応があった気がして、「あ、いまなんかやろうとしたかな?」…ってちょっと期待しちゃったけど、遊ばずに終わりました。。つい遊び心を期待するクセが…。笑)
角野さんの弾くショパンは本当に上品で気高さがあるので、やや殺風景なホール(←ソニックシティはクラシックに特化したホールではないのでパイプオルガンのあるような重厚感は無いのです…)を音でエレガントに彩ってくれたようでとても嬉しくなりました。。
その空気を纏ったまま、後半の《田園》も優雅な気持ちで堪能することができました。



後半の《田園》も夢心地で素晴らしく気持ちよかったです。
これまで私はベートーヴェンの曲にはどうしても激しさとドラマを求める傾向にあったので、正直《田園》は退屈…と聞かず嫌いしてました。
でもあの牧歌的で平和な曲がこの日はとても心に響いて、やっぱりベートーヴェン先生すごいです…!!って降伏せざるを得ませんでした。笑

特に最終楽章のエンディングに向けては、なんだか体内に蓄積している罪や穢れ(そんな悪いことはしてないですけども…笑)を全て許して受け入れてもらえたような安堵感に包まれ、有難く、神聖な気持ちになって、涙が込み上げました。
第九にも神々しい瞬間がありますが、それとはまた少し違う、優しさ溢れる神々しさのようなものを感じました。
脳裏にタロットの「審判」の絵柄が思い浮かびました。天からの福音みたいな…。

タロットカードの「審判」(Wikipediaより)

帰宅後プログラムノートを読んでいたら、大体方向性は合っていたようです。

"救世主による人類救済の象徴であるPastoraleは、こうしてベートーヴェンを通じ、人間一人一人が自らの救いを求めて立ち上がるPastoraleへと変容を遂げたのである。"

プログラムノートより
曲目解説:小宮正安

無知な私をもそんな気持ちにさせてしまうベートーヴェン先生の作る曲の力に震えます…。
曲に神を宿らせることができるってすごい。。

こんな素晴らしい音楽を残していただいて本当にありがたいことだなぁと思います。
おかげで、身体が清められてスッキリした気がしました。

ホールの外は大変蒸し暑かったですが、多幸感に包まれホクホクとしたまま帰途につきました。


最近はすっかり角野さん目当てでコンサートに行くことが多いですけども、いつもプラスアルファで私にとって新しい音楽との素晴らしい出会い(←時に怖い曲との出会いもあるけど、それもまた良し。笑)を果たさせてくれるので、得るものがたくさんあります。
自分一人では冒険しづらいですが、敬愛する音楽家のおかげで視野が広がるのはとても楽しくて幸せなことだなぁと思います。

♪おまけ♪
今回もロビーに展示されていた、清香園さんのかわいい盆栽ちゃんたち😊
緑があるって良いですね…。

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