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改めて考える靖国 何が問題で何が許されるのか | 宗教と政治#2

毎年8月15日になると、多くの人がその巨大な鳥居をくぐり「英霊」を悼む。
そのなかには、内閣で大臣を務める国会議員も含まれる。

実は、1975年までは当時の昭和天皇も不定期に参拝していた。
しかし、1978年靖国神社に太平洋戦争時の戦争指導者として絞首刑に処されたA級戦犯が合祀された以後、参拝することはなくなった。

のちに、昭和天皇が側近に対しA級戦犯合祀への不快感を伝えていたとの報道によって、A級戦犯合祀が参拝が途絶えた直接的な理由ではないかと考えられている。

さて、一般人はもとより日本の国会議員が靖国神社へ参拝することに賛否が生じるのはなぜか。

”参拝して英霊を悼むのは日本人として当たり前”

参拝を肯定的に見る人からは主に以下のような理由が挙げられる。

  • 戦後日本の発展は英霊が命を賭して身を投じたことによりもらたらされたもの。その英霊を悼むのは、政治家だろうが一般人だろうが日本人なら当たり前の行動

  • 英霊を悼む行動を中国や韓国など外国からの批判によって妨害されるのはおかしい。内政干渉にあたる。批判など気にせず堂々と参拝するべき

一方、批判的な意見としては

  • 無謀な戦争を指導し、多くの国民を死に追いやったA級戦犯を殉国者として合祀する靖国神社へ参拝することは、太平洋戦争時の日本としての行為を肯定することになる。

  • 靖国神社は国家神道という特定の宗教的性格を持つ宗教施設であり、そこに首相が公式参拝することは政教分離の原則に反する。

こうした靖国神社参拝に対する論争は現在まで50年以上続いており、平行線を一途をたどっている。

政治家の公式参拝は政教分離の原則に反する

靖国神社の参拝問題を考えるにあたっては、3つの観点から考える必要があろう

  1. 政治家であろうと、信教の自由が保障されていることから、私的な参拝自体に問題はない
    ⇒公式参拝は政教分離の原則に反する

  2. 靖国神社は太平洋戦争を「自存自衛の戦争」(正当防衛)と位置付けている
    ⇒宣戦布告前の真珠湾攻撃は先制攻撃にあたり、当時の国際法にも違反する

  3. 外国には靖国神社参拝への批判の自由があり、内政干渉にはあたらない

上記を総合すると、首相含め政治家の”私的な参拝”になんら問題はないが、戦争被害国からの批判が巻き起こるのは当然のことである。

また、靖国神社に祀られているのはあくまでも軍人に限られ、一般戦没者は祀られていない。
つまり、軍人のみが「国のために殉じた英霊」とされている。さらに、先述のようにA級戦犯も合祀されている。

これらを考えると、「参拝するのは日本人として当たり前」という意見は、特定の宗教施設への参拝を強要しているともとらえられかねないもので、国民の代表者としての政治家には許されない発言だろう。


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