カジュアルな支持に支えられた常勝政権の7年8カ月

辞任後の緊急世論調査で支持率が20%アップー

かつてこんな総理大臣がいただろうか。

最近の言葉を借りて言えば「安倍ロス現象」とも呼ぶべきか。

これまで、安倍の醜悪さ・無能さを言い連ねて来た人からすれば「解せぬ、まるで解せぬ」と嘆くような結果だろう。

それは悔しいではなく、狐に包まれた感覚である。

公文書改ざん・破棄、特定個人の優遇、検察人事への不当介入などこれまでなら辞任どころか議員バッジを失うのに十分たり得る悪事の限りを尽くしてきた。

それなのになぜ、支持され続けるのか。

自民党からすればその答えは簡単。

民主的な選挙において多数の民意を集めたからである。

しかし批判を恐れずに言えば、「民意を得た」というのはそれ以上でもそれ以下でもない。

要するに、民意を得たから首相にふさわしい人物であるとは限らない。

裏を返せば、これが民主主義の限界ともいえる。

もっと言えば、その多くの民意は同調圧力によって形作られた。

これを言うと安倍政権の実績をしっかり見た上で支持しているという人も出てくるであろう。

だが、それは政権浮揚のため安倍政権が喧伝した「実績」を無批判に受け入れているだけに過ぎない。

そうでなく、あまり政治に関心がないためにその事実を知らない人たちがなんとなく周りが「安倍さん以外にいないから」、「野党は情けないから」との声を聞いてそれを受け入れているだけのカジュアルな支持を向けていることが、安倍政権に対する批判の声を下火にしている感はある。

「まあまあそんな熱くなるなよ」という感じか。

こうした多くのカジュアルな支持に支えられ、離合集散を繰り返し、自党のエゴを出し合いまとまらない野党の支持率は上がらず、安倍政権は国政選挙6連勝というかつてない常勝政権として憲政史にその名を刻んだ。


今後もこのレガシーが自民党と多くの国民の間で受け継がれていくことだろう。

所詮政治は人間の集まりだ。

不正や無策はイデオロギーに関わらず今後も繰り返されるかもしれない。

それでもまだ、安倍の不正や無策に目を瞑る、あるいは知らない人たちに支持されている政党より、それを徹底的に追及・非難する気概のある人たちに支えられている政党が政権を握った方がまともな政治をしてくれそうだと期待できるのは明らかだ。

安倍の不正や無策を知りながらこの8年近く諫めることもなく担ぎあげてきた政党に政権を与る資格があろうはずもない。

残念ながら、このカジュアルな支持による自民党覇権は今後数年から10年ほど続くと思われる。

それは、こうしたカジュアルな支持が危険で誤った政治への関わり方だと気づいていないからだ。

そうして、自らが政治被害の当事者になったとき初めて文句を言う。


「お疲れ様でした」の言葉は安倍政治の被害者に言ってほしい。

(敬称略)

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