【感想】First Love 初恋 3話まで

Netflixにて、「First Love 初恋」を視聴中である。
現在3話を視聴したところで、妻とタイミングが合った時に一緒に観ている関係で次を見られるのがいつになるか、全く分からない。

なので一旦、ここまでの感想や印象を残しておこうと思う。
ストーリー説明や考察をするつもりはなく、ネタバレ配慮もなく、かつあまりいいことも書かない(気がしている)。

私は恋愛ドラマ(映画含)はほとんど見てこなかった。
特に、特定の2人が出会ってから紆余曲折を経てくっつくまで、というオーソドックスな恋愛映画は、多分ほぼ見たことがない。

特段に嫌いであるとか意識的に忌避していたわけでもないので、恐らく単に興味関心がそっちにいかなかったのであろう。

しかし30を迎えて幾年が過ぎ、若干の変化があった。
「恋愛についての映画(ドラマ含)」が、明確に刺さりまくり、そして好みのジャンルとなったのである。

「恋愛についての映画」とは、言葉そのものもそうなのだが、ムービーウォッチメンでお馴染みの宇多丸師匠の下記の定義、というか考え方を引用する。

「恋愛映画」というより、「恋愛についての映画」……つまり、「暴力映画」ではなく「暴力についての映画」があるように、恋愛についての映画。要は、僕がお気に入りジャンルとしてよく言う、倦怠夫婦物、倦怠カップル物っていうのはまさにその一部。恋愛について考察する映画というか、恋愛について思考させられる映画
https://www.tbsradio.jp/archives/?id=p-561132

恋愛についての映画、
今までも好きだったものがより好きになった、
とか、
思い返してみると昔から割と興味があったのを自覚した、
とかではなく、
自分の中の好きなジャンルに新規として加わった、というのがハッキリしている。
これは私の中で些か珍しい現象だったりするが、恐らくその種のドラマ・映画を観ても昔はせいぜい「憧れ・羨望」、いっても「共感」程度だったものが、
ある程度人生を経たことで「郷愁・懐古」が強くなり「共感」はさらに「共有・実体感」レベルにまでグレードアップした、ということが要因として考えられる。だから刺さる。だから面白い。

最近でいえば正に上記の引用ページでも評論されている“花束みたいな恋をした”を始め、
ボクたちはみんな大人になれなかった”、“ちょっと思い出しただけ”、
洋画では“(500)日のサマー”あたりを立て続けに観たし、“ラ・ラ・ランド”もこのジャンルの要素を多分に含んでいるな、と今になって思ったりする。

前置きが長くなったが、First Love 初恋 にもそういった「恋愛についてのドラマ」要素を期待して、
また、登場人物たち及び宇多田ヒカルさんご本人と同い年であるドンピシャ世代より4.5歳下ではあるが、
演者含めてまあほぼほぼ同世代と考えると刺さるものもあろうと思い、手を伸ばしたのである。

伸ばしたはいいが、今のところやはり「雰囲気(役者の良さ含)」以上の魅力がなかなか見つけられないのが正直なところか。

その雰囲気にしてもまあ確かによいはよいのだが…画作りや光の当て方、演者の魅せ方、全てに岩井俊二感が強過ぎる。
特に「love letter」や「スワロウテイル」。

余りにも岩井俊二すぎてもしかして関わってる?と思い調べてみたら、脚本・監督の寒竹ゆりさんはざっくり言えば直系の弟子とのことで、さもありなん。

弟子としての手癖や継いだものが自然と出てるのか、ある程度狙ってやってるのか。
後者だとしたら、しかしこれはオマージュを越えて一部もはやパロディだろというところがチラホラ。
舞台を北海道にしている点や、也英の下宿先など。
ちょっとした平成レトロ風景も期待していた身としては、当時の世俗を全く反映しないあの下宿先の描写はちょっとガッカリポイントである。

また、物語の本筋や進行と描写・演出がチグハグなのもかなり気になる点である。

例えば也英の高校時代冒頭、彼女は一人でCAの真似をしながら田舎の道を歩いて登校する。
その姿はよく言えば夢見心地で天真爛漫、悪く言えばやべえ奴である。

続けての登校シーン、校門前。
也英は友人に声をかけられ、一種の友人同士のノリ特有のポーズを取り合う。
周りを歩く他の学生たちはそんな2人をチラチラみながら、しかし誰も声を掛けることはなく、人によっては呆れたように笑いながら通り過ぎていく。
つまり彼女らがやっていることは、この時代の女子高生のスタンダードからはちょっと外れている。

上記の一連のシークエンスから視聴者はこう思うのではないか。

きっと也英はちょっと浮世離れしてて、自分の世界を持ってて、特定の友人との時間を大事にしていて周りに気を使い過ぎることもない娘なのだろう、事によると学内でちょっと浮いているタイプなのかもしれない、と。

そして悪ぶった描写のある晴道と若干の逸れもの同士、お互いのよいところを見つけ合って…という青春模様が回想で描かれるのかな、なんてことを考えた。


全然そんなことありませんでした。


晴道、のっけから也英のこと大好き
惚れた経緯もなく大好き
(不良描写は煙草のフレイバーに繋げるためだろう)
也英、最初から激モテ
数多の男から告られリア充学園生活
そしてこちらも特に経緯なく晴道大好き
(荷物運びのシーンは弱過ぎる気がする)

あれだけ仲の良さそうにしていた校門前の友人は一瞬で消え、振られた男たちを一顧だにすることもなく、
なんなら也英も晴道も通常の学校生活の様子はほぼ描かれず、2人はそのまま付き合い出すのでした。

チグハグといえば、小泉今日子演じる也英の母・幾波子、
咥え煙草、工場勤務、小さな誕生日ケーキ、やさぐれた雰囲気、
也英がバイトをしているシーンもあり、ともすれば複雑な家庭環境を容易に想像させ、母子2人がこれからどう生きていき現代に繋がってくるかにも一定の期待をさせる。
させるが……それだけ。

次の瞬間には也英は普通に大学に進学し上京している。
しかも背景は私立の青山学院大学である。
奨学金?特待生?分からない。
(作中では東央大学だったかな。国立?)

別に幾波子の人生や環境、苦労を全て教えてくれというわけではない。全然匂わす程度で問題ない。
ただ、そういう背景をこの母子に匂わしている以上いきなり普通に上京して大学に入って、はなんか違うんじゃないかと思わざるを得ない。

そしてとある事情で東京に駆け付けた幾波子は、いたって常識的に立ち回る良い母親であった。

也英は也英で、遊びに興じることこそないが、晴道がビビるカフェを普段使いし久々に会う彼氏とのデートで空気読まずにチャラい先輩と友人を同席させるくらいの女にはなっていた。

登場人物も也英の同僚たち、佐藤健の耳が聞こえず手話を活用する妹(もしかしてシングルマザーか?)などとにかく色々盛り込みすぎ、属性過多がすぎる。
更に言えば佐藤健より2歳上の美波が彼の妹役なのもどうなのか…
まず普通に姉にしか見えないし、同世代の視聴者たちは演者の年齢もある程度わかっているから単純にノイズになる。
(そもそもとして佐藤健と満島ひかりの同級生設定からして私は違和感なのだ)

思うに、「その後の展開とそこに繋げるための描写」と「雰囲気重視でとにかく入れ込みたいシーン」に乖離があるのだ。
あるのに、そこら辺を考えずとにかく入れたいもんを素直に入れるからこうなったのではないかと思ってしまう。

友人とのノリはこんなもん、
登校といえば生活指導だよね、
こんな雰囲気の小泉今日子がみた〜い

的な。

雰囲気は好きと言いながら、そして実際にその通りではあるのだが、その雰囲気重視故に起きている齟齬、整合性の取れなさは目に余る部分がある。
そしてそれらが目に余るってことは、雰囲気一本で押し通せるほどには「雰囲気」を醸し出せていないのだ。
なんだか変なパラドックスに陥りそうだが、やはりこの辺りは岩井俊二の方が何枚も上手だ。

とはいえ2話は結構好きで、1話で示された登場人物たちが繋がっていってラストで也英と晴道の顔合わせに至るところは、ありがちだが群像劇としてうまくいっていたと思う。
そしてその2話のラストシーンはなかなか白眉だった。

也英に未練タラタラ、影を追いかけてるOne more time,One more chance状態を二話をかけて散々描写されてきた晴道
(元カノの好きな花束を持って今カノ家族との顔合わせに向かい更にはドタキャンするのは相当なクズムーブだが) 
そんな晴道の顔を真正面から見て、覚えていない也英。

離婚した夫に養育費を振り込み14歳の息子と会える日々を糧に生きている、そんな也英も同じく初恋を胸に秘めていると思っていたのに……

ここは正直膝を打ち胸を打たれた。

そう、昔の恋愛なんて存外にそんなもんなのである。

覚えている、想っているのは男だけ
向こうもまだ俺のこと覚えてるかな、大事な思い出にしてくれてるかな、なーんて想っている男に、
結婚し、子供を産み、そして離婚をし、1人で生きて、子供も思春期を迎えて、そんな人生を歩んで現実を生きている女

そんな女にこんな男は目に映らないのである。

そう、結局そんなもんなのである(2回目)。

あの一瞬でここまで男と女の差異を表現してくれるこのシーンは素晴らしい。
このドラマの「恋愛についてのドラマ」度はなかなかだぞ、
ここからどう2人の現在とそして過去は絡み合ってくるんだ!?

という期待感と共に3話を視聴、
上記の俺の感想はそこそこ無に帰した。
記憶喪失……?的な、感じ、なんですかねえ。
ほーん、な、る、ほ、ど…

あ、そう
ふーん

という状況で今。

散々言っているが、今のところ雰囲気で押してもらってはいるので引き続き時間を見つけて視聴を続け、完走を目指す所存ではある。

色々な部分が残り6話で解消される可能性だってなきにしもあらず。

役者陣、とくにやっぱり満島ひかりはとても良くて、綴に過去の也英と晴道の演者など若い出演者も瑞々しい。
濱田岳ら脇役達もいい味を出している。
向井理が今後どう絡んでくるかは少々不安だが、とにかく色々な意味で今後に期待である。

6話くらいまで観たらまた感想でも綴ろうかなと思う次第である。

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