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シャイラ先生の「五禅支を育てる」コース6:一境性 その3、ガイド瞑想2つ

(●はシャイラ先生お話や文献のメモ、*は私のコメントです)
*1つ目のガイド瞑想は一境性に特化した内容、2つ目は五禅支すべての復習になっているようですね。

ガイド瞑想1 一境性を育てる

●座る姿勢の指示。
●一境性と伺を識別するのは簡単でないですが、識別する必要はないかもしれません。「あなたはいま、何に気づいていますか」と、私は問いかけます。意識の対象は何ですか。思考、音、感覚、不快など。すべての意識的な瞬間には、対象があります。つまり、あらゆる意識の瞬間momentには、一境性one-pointednessがあるのです。
●この一境性が禅定の要素にまで高められるには、何度も何度も繰り返し(*講義ではmanyを10回以上リピートしている!)同じ対象に注意を払い、注意の単一性singularityの持続があるからです。
●すなわち、座っている時は座っているという体験に気づき、息をしている時は息をしているという体験に気づきます。吸息。呼息。長い息。短い息。それぞれの息の最初、中間、最後まで観察します。
●一つの対象に注意を一貫して向ける事ができます。マインドが一つの対象で満足するようにします。エネルギーのすべてが呼吸へと注がれるかのように、興味の単一性singularityを強化するのです。
●もしほかの知覚に注意を奪われても、瞑想対象に再接続して、興味の単一性を強めます。マインドの全体を、呼吸を知るという体験に引き込みます。マインドのエネルギー、要素、力をすべて集めて、呼吸全体を知るという単一の目的のために、調和して機能させます。
●他の禅支については、「呼吸へと注意を休ませるrest」という表現を使いました。一境性はエネルギーに満ちた性質があり、休ませるというより、注ぎ込むpouring inという表現が適当であるように思います。水路があり、漏斗があり、方向付けがあります。興味と意欲、尋と伺、喜などが(そこに)流れ込みます。こうして瞑想対象を知るのです。
●アビダルマは一境性を、リーダーの役割をもつものとして説明します。というのも、共起する他のメンタル要素をリードし、調和的に機能させるからです。
●チームの全員が同じ目標に向かって、協力して働くような、よいチームを想像しましょう。優れたリーダーがいる会議では、各メンバーが自己利益のために動くことなく、グループの目的のためにそれぞれの役割を果たします。この目的を明確にするのが、一境性なのです。
●一境性を強める事に興味があるなら、目的や目標を感知し、瞑想主題にすべてを捧げ、瞑想主題への接続を完全にし、心のすべてを用いてwholehearted瞑想主題に気づきます。コミットメントが明確であれば、マインドの残りの部分が集まってきて、深いサマーディを可能にします。
●優れたリーダーがそうするように、(他の要素に対して)要求したり強制したり脅迫したりせず、巧みskillfulである必要があります。
●尋・伺・喜・楽やその他の善い要素がすべて、瞑想対象を知る、呼吸を知るという一つの認識perceptionと結びついて生起します。目的を明確にすること、善い欲求、集中を育てたいという熱望、こうしたものすべてが、一境性の維持に役立つのです。
●瞑想中に心がさ迷ってしまったら、呼吸と接続したいという欲求を再賦活させましょう。マインドの複数のエネルギーを再組織するために少し時間をとり、マインド全体が呼吸へと流れ込むようにします。
●ある時点で、メンタル要素のメンバー全員が、同じ目的を共有して、同じ脚本で動き、同じゲームをしているかのようになるでしょう。

*一境性については、複数の説明の仕方があるようです。
①瞑想対象に対する一点集中とその安定性
②どんな瞬間でも、意識の対象は常に一つであるという性質
③さまざまなマインドの要素(心所cetasikaと訳していいかも)を協調的に働かせるリーダーとしての性質。
*著書読解では、①が強調されました。この点はイメージしやすいと思います。
*②はやや意外な感じがします。日常的な意識においても、ある時点に知られる事は(原理的に、構造的に)「一つ」である、という認識(というニュアンスがあると、私は解釈しました)。これは曹洞禅の老師がよくおっしゃる事に近いようにも思います。たとえば:

「私達はいかなる立場であれ、どのような状態に置かれていても、今という生活の欠けている人はおりません。皆必ず今という生活の上で生きております。この片時も離れることのない自己の身心の所在です。
これを現成といいます。
すでにあるんです。好き嫌い、善悪をいうまえに。」
https://inouetetsugen.com/post/151512224436/2-%E4%BB%8A%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E7%94%9F%E6%B4%BB

*日常的意識において意識内容は、多様なものを含み、かつ移り変わるが、原理的に意識内容は一つであり、他の様子ではない、という認識。日常的意識の構造としてのこうした一境性は、特定の瞑想対象へと注意を向けて維持する練習を繰り返すことで、禅支として育つとされます。そして、③様々なマインドの要素のリーダーとして働くようになると。
*この③には、②の性質から必然的にそうなる部分と、瞑想対象(呼吸)に注意を置く、集中を高めたいという意欲といった、意識的に設定する部分の、両方とがありそう。
*リーダーシップとしての一境性は、要求や強制や脅迫ではなく、目標や意欲を明確にする事によって働く(と言ってしまっていいのかどうか)。

瞑想ガイド2 五禅支を育てる

●鼻先(nostrils and upper lip)で呼吸を感じはじめたら、そこに注意を向ける能力を持っている事に気づいてください。そして尋をハイライトするため、部屋の外の音に注意を向けます。車が通る音など。そして呼吸に戻ります。
●身体のパーツを感じて、呼吸に戻る指示を何度か。
●このように様々な感覚的体験に注意を移動することができるという単純な能力が、尋を示しています。認識の対象に接続する能力です。瞑想実践で行う多くの事は、この能力を強くする事です。
●注意を向けた後に、対象物へ気づきを持続しなければならない。レストランで会話する時、目の前の人の声に注意を向け、持続させる事ができる。ある種の脳損傷の人は、それができなくなる事があります。
●仕事で何かを成し遂げるにも、尋と伺を使っています。瞑想実践ではこの能力に磨きをかけます。そのため、呼吸のような微細でニュートラルな対象を選びます。会話のように刺激的ではないから、既に持っているスキルや能力を磨く必要があるのです。
●尋と伺がはたらき、マインドが呼吸に落ち着くと、音や痛み、昨日の事や明日の事など、他の入力を手放すことができます。思考、五感を触れる刺激を手放し、何度も何度も、呼吸に注意を向けて、維持します。
●マインドが多くのものを手放し、瞑想対象に集中していると、ある種の幸福感や安らぎがうまれます。欲望や渇望、恐怖や記憶などがないと、マインドは静寂で穏やかになり、深いリラックスと安らぎを体験する事ができるのです。こうして喜や楽が生まれます。
●喜や楽は、集中の時だけに起こるものではありません。チョコレートケーキを一口食べても、喜びがでますね。これは瞑想的な体験ではありません。集中力の向上をサポートする喜びは、瞑想対象を知ることで生じる喜びだけです。
●この点を理解しておく事は重要です。というのも多くの瞑想者は、こうした喜びが起こるととても興奮してしまい、別の機会でまたそれを起こそうとするからです。これは渇望や貪欲など不善になります。
●マインドが喜びや安らぎを感じ、またエネルギーがリフレッシュされたように感じたら、それらを起こるままにしますlet that occur。それらを瞑想の対象とはせず、マインドが静かで喜びに満ちたものになることを許容しallow、引き続き呼吸を瞑想対象とします。
●喜の機能は、ただ意識をリフレッシュする事です。喜が恍惚とした激しいものである必要はなく、捨が強い時は、喜は非常に穏やかなものになります。喜には様々な種類があるとされ、鳥肌が立つような、稲妻のような、浮遊感、などと言われます。禅定に関連するのは、すべてに行き渡るような喜び、安らぎです。
●呼吸の基本的な生起に注意を落ち着けるようにします。最初は触感を感じると思います。呼吸をつかんだり、何かを起こしたりする必要はありません。釘や接着剤で注意を固定する必要もありません。注意が呼吸の周囲にとどまり、さ迷い出さないようにします。
●呼吸以外のあらゆるものに魅了されることを手放し、呼吸への興味を維持します。集中力を育てる事が、一瞬の思考や一瞬の快感よりも重要で深く望んでいるものへと、導いてくれることを理解します。
●呼吸の全体に注意を与えます。注意を一点に集めます。呼吸が起こるままに、ただ出会うようにします。呼吸に一点集中し、勤勉な尋と伺があれば、瞑想は自然に進行します。
●喜や楽を起こす必要はなく、それらは呼吸への注意が持続する事の自然な結果として生じることを信頼します。喜が起こっても、それを強めないようにします。ただ注意を柔らかくし、呼吸の上に落ち着かせて、喜や楽が自然に成熟するためのスペースをつくります。
●このようにして、努力を巧みに用いて、プロセスが自然に進むのを信頼することで、五禅支が強くなり、集中力が高まるのです。

*五禅支の各禅支を順番に復習するような内容です。ある意味、このコースでの実践の総決算とも言えるのかもしれません。一境性については、ただ一点集中としてのみ、簡単に扱われています。

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