AIAIAI TMA-2 Studio Wireless+ その2

9月4日に使用開始、本日で4日目になります。使い勝手や音質について記していきたいと思いますが、音響機器にはエイジングという、使用期間に伴う変化が訪れるようなので、あくまで初期状態での所感になることをお断りします。ちなみに、現時点でだいたい累計12時間くらい鳴らしています。

主たる使用目的は深夜帯のテレビ視聴(テレビではありませんが機材分野的に)を高音質で行うこと。ただし、その正確さは気になるところです。音楽コンテンツや機材試奏動画などを頻繁に利用しますので、バイアスは避けたいところです。

Bluetooth接続を回避したいのは、ひとつは遅延と、もうひとつは転送のためのデータ圧縮(そして伸張)の劣化を防ぎたいため。本機は独自のトランスミッターで16bit / 44.1kHz(CD同等)を2.4kHz帯で転送するようです。現時点で最高品質のBluetooth AptX LLよりも遅延は半分以下の16ms(1000分の16秒)、転送データは圧縮のLDACが990kBpsに対し、ロスレスで1500以上とのことです。

ちなみに有線でもBTでも使用できるので、それぞれ試してみました。

ヘッドフォンの感度は97dB、インピーダンスは32Ωとなっています。直前まで使用していたソニーMDR-M1STは103dB、24Ωですから、ワイアードで差し替えると、音量は体感で半分くらいに低下します。

Intel時代のiMac、macOS Mojaveで、Audirvana3.5.50から24/192kHzへアップサンプリングしたAIFFファイルを再生し、Prism Sound Lyra2をDACとして、そのフォン端子にアンバランスで接続しています。フロントパネルのフォン出力ボリュームは、ノブの位置がSONYで10:30くらい、AIAIAIで13時と、能率は段違いです。これはワイアードのパッシブヘッドフォンとして使用した場合。

キットに同梱の専用トランスミッターを接続し、ヘッドフォン本体からケーブルを外し、双方の電源を入れます。すぐにリンクが回復し、ワイヤレスヘッドフォンとして動作させるとゲインの不足はすぐに解消され、SONYと同位置で問題なし。

当然ながら、トランスミッターが受けたアナログ信号はデジタル変換され、転送後にヘッドフォン内部(ヘッドバンドの内部)でアナログ変換され、アンプによってスピーカーユニットを駆動します。ここで一般的なプロ用ヘッドフォンと同等のレベルになるのです。いわばアクティブ(パワード)スピーカーですね。BTにしても、全てのワイヤレスモニターはこのような信号の変換が繰り返されます。

元々AIAIAIはスタジオモニターヘッドフォンブランドですので、正確な再生を目指した商品群を用意しており、本製品は、それのワイヤレスバージョンとなります。モジュール化されたパーツを組み合わせて製品を完成させるコンセプトで、本機(wireless+)のスピーカーは、従来のワイアードのモデルにも供され、その中でも"Detailed"とされるS05ユニットが選択されています。

パッシブ接続(付属ケーブルによる有線)にした時の音色は、しかし、予想に反して好ましくありません。低域は太く強い音が出てピラミッドバランスになります。歌が遠く、中域がやや混濁しています。一方その名の通りディテールはよく再生されて、収録された楽器の全てがそこに居る様子がわかります。

SONYはやはり音が固い傾向は拭えないものの、見通しの良いすっきりとしたサウンドで、各楽器らしさもよく表現されています。こちらに較べると、AIAIAIは「使えない」と思わざるを得ません。スピード感がかなり違います。

しかし2.4GHzでのワイヤレス、繰り返しますがアクティブ接続を行うと、ゲインの復活と共にクリアさが大幅に格上げされ、基本的な性質をそのままに、不満が解消されます。タイトで力強い低音に支えられ、柔らかさを伴う澄んだ音色が得られます。聴きやすく、美しいとさえ感じるところです。

ちなみに、ヘッドフォン側で音量の調整ができ、ボタンの操作感から想像すると16段階選べます。この製品のレビューを読むと、ホワイトノイズが常駐しているとの批判があります。私の年齢では高周波が聞こえなくなっていますので、個人的には気になりません。無音のままボリュームを最大にした時、アンプからのヒスノイズが確認できますが、マックスから1段階下げるだけで、私には聞こえなくなります。

ですので、私のインプレッションは全て、本体ボリュームを15/16に固定した環境です。一方、トランスミッターに関しては入力レベルのセッティングができません。ヘッドフォン側を下げ目に、トランスミッターへの入力、即ち出力機材のアウトプット信号を上げると、S/N比が稼げる仕組みですが、プロ機だとすぐに歪むので、ヘッドルームがそれほど広くないことがわかります。

SONY MDR-M1STは最大入力1Wと明記されますが、AIAIAI TMA-2 Studio Wireless+には、max power 100mW、rated power 40mWとあるのみで、これはパワーアンプの出力表示です。ところがワイヤレスではない通常のヘッドフォンであるTMA-2 Studioのスペックを見ても同様の表記となっており、パッシブスピーカーなのに最大入力が示されないばかりか、出力が書かれていることには疑問しか湧きません。

テストはまだですが、このトランスミッターの入力感度は、オーディオ装置のヘッドフォン出力を受けるよう設定されていると考えるのが妥当で、ライン出力では不足すると思われます。かと言ってヘッドフォンアンプのボリュームを上げていくとすぐに歪んでしまうのには注意がいります。広義にアクティブスピーカーと言えますが、汎用性は低く、あくまでパッシブのヘッドフォンと同じ使い方(接続環境)に限定されるようです。

Bluetoothも使用してみました。iPad airのMusicアプリでAIFFファイルを再生しながら30分ほど散歩してきました。もちろん、ヘッドフォン(ヘッドバンド)内に機能が埋め込まれているので、トランスミッターは不要です。ノイズキャンセルはありません。

パッドは、「ちょうど良い」よりも微妙に強く耳が押しつけられ、長時間の装着で痛くなるかならないかの瀬戸際です。でも「痛い」寄りの「痛くない」。ていうか、ちょっと痛い、かな。私の場合ですが。

BTの遅延は、この場合無視できますが、圧縮によるものか、駆動の問題か、音質は今ひとつでした。普段使いの有線イヤホンに解像度で劣ります。遮音性能が高いので、周囲の音が聞こえず、街歩きには恐いくらいです。アウトドア用としてはあまり推奨できません。

まだだらだら、この話を続けます。明日以降もお楽しみにしてください。



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