ノスタルジーで片付けられない

もやもやしたイメージが2つ、頭の中を巡ります。何きっかけか心当たりが無いのだけれど、時々こうしたことが起きて、その幻に取り憑かれたようになります。それらは過去の体験に結びついているようで、単なる憐憫というより、得られなかった未来への羨望のような気がします。いつかの時点で、取り逃がしたものを、その欲望だけが化石化して残っており、気紛れに疼き始めるようなのです。

もやもやしているので具体的に示すことができません。それらは、ちょっとしたシーンのような、ビジュアルで浮かびます。10年くらい前に、脳内で繰り返し再生された画像はNYにいた時の「何か」でした。今2つある、と言ったものは、あるいは一対の表裏のようなもので、実体は1つかもしれませんが、1970年代の風景です。

原風景といったものかもしれません。私はそこでロックを聴いていました。ベースを手に取るよりも前、エレキギターがヒーローとなる音楽に憧れていました。

さて、最近、動画のおすすめにジ・アルフィーがよく登場します。彼等のサイモン&ガーファンクルをライブでカバーしている曲が中心です。ひとつ見たらぶっ飛びました。素晴らしくて。彼等のデビューアルバムが出た時、友人のお兄さんが買い、絶賛していたのを覚えています。少しだけ、隣室から流れてくるサウンドは、人の声のハーモニーの美しさがフィーチュアされた優しい音楽でした。私自身が、選択的にジ・アルフィーを聴いたことは、はっきりと皆無であり、オフ・コースは聴くこともありましたが、興味の対象がもっぱら英米に向いていましたので、あれだけ素晴らしいバンドの本質に気付くのがここまで遅れました。もやもやした風景は、しかしそれらの動画を見始めるよりも少し前のことです。

エレキギターの載ったヤマハのカタログが脳裏に焼き付いています。SGというモデルの廉価な方は45000円定価だった気がします。フラットトップ形状で、ベベルはあったかもしれませんが、ピックガードはぺったりとボディに張り付いており、それもまたデザイン要素を成していました。私がロックの世界に足を踏み入れるとしたら、それを手に入れなければならない、とは中学生になったばかり(しかも反抗期真っ只中)の、あぁそうか「厨二病」の頃の自身が心に抱いたプランでした。

間違えを犯したわけではないのですが、結局手に入れたのはグレコのES-335系のコピーモデルでした。2機種ある内の安い方でしたから、ブランコテイルピースのフルアコ構造で、330/カジノみたいなモデル。それがきっかけではありませんが、仲間とキッスを演奏するにはまるで頼りなく、悶々としていたところへリー・リトナーが鮮烈にデビューしたので、先見の明があるなどと思われたものの、仲間内でやらされるのはベースばかり、という事態が一生を決めてしまいました。

もやもやした風景の中では461 Ocean BoulevardやHotel Californiaなどが鳴っており、もはやキッス、クイーンではないのですが、今の私からすればハードロックへの憧憬が、まだ観察できます。ああいうクラシックロックは、結局リスナーとしてしか関与しておらず、どこかで今でも、バカでかい音で無骨なギターを弾きたい願望が燻っているようです。

そのもやもやの正体は突き止められないなりに、解消の方法を探るとすれば、その時代を象徴するエレキギターを1本、手許に置いておけばどうだろうと考え至りました。ビンテージギターを所望しているのではなくて、あくまで、今リーズナブルに入手可能で、プロ目線で実用性の高いもの、何かないだろうか、とデジマは最近ギターばかりを見ています(この間、フレットレスベースの話はしたよね、それとは別に)。

まったく話は変わりますが、大好きだったホリーズの懐かしい曲が採用される『何曜日に生まれたの』はいいですね。野島伸司作品ということで、ドロドロが予見されてこの先はわからないけど、今のところ完璧です。とにかく私は絵として見るので、それが美しい。飯豊まりえさん、NHKのドラマ群でものすごく成長され、主演はる存在感十分で素晴らしい演技です(松岡茉優さんがやりそうな役ですね)。そんなこんなで、もしかするとホリーズがうずうずの種かもしれないと思ったりしました。キャンディーズも歌ってたよね。心が抉られる。

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