もっと盛り上がりましょうよ

朝ドラの今週後半をまとめ見しましたところ、航空学校編には裏切られた思いでいっぱいです。今作は主題歌も飛ばさず見ていると言いましたとおり、脚本家の交替は月曜日から気付いていました。それは先入観を作ったかもしれませんが、実際ドラマの作り方が変わってしまい、主人公の性格も乖離しているのは、見ている誰にでもわかるでしょう。

大学のサークル活動の描写は悪くなかったです。航空学校では、彼女はまだ19か20、大学中退の、言ったら子供です。同期には社会人経験者や家庭持ちもいて、いくら寮生活で寝食共にしているとは言え、目線の高さが同じであることに違和を感じざるを得ません。再び学生に帰った大人達が子供じみた感覚で他者と接している様子なのです。あの世代での5歳の差は、大学一年と四年よりも隔たりがあるわけで、舞ちゃんのような子が始めから渡り合うのはおかしいし、それを受け止めて対抗する相手の物言いも不自然極まりない。

その学生生活が絵に描いた餅、まさに作られたお芝居であることをテレビの面白みであるかのように平然と見せつけてくる姿勢が、丁寧だった前半とうって変わって軽薄に写ります。

「夢に向かって努力する」過程に付随する障害のひとつひとつを乗り越えていく姿勢を描くことが視聴者への励ましになり、朝ドラが目指すべき立ち位置だったのではないでしょうか。孤軍奮闘したつもりが、見えない他者の助けを得ていたとか、運と言うほかないタイミングの妙に踊らされたり、理解していても受け入れられない心の葛藤があったり、不意に訪れる不安や絶望感との闘いが「実現」への力になるはずであり、誰もが経験するものです。

それを面白おかしく、軽いタッチでやろうとするから破綻を招きます。前作で懲りたのではないのか、あるいはそれなりに成功を収めたことになっているのでしょうか。まぁいいですけれど。

宮崎から帯広へ、学科過程を終えた彼等が正門前で記念撮影をした時、岩倉舞は信じられないひと言を吐きました。それがタイトルの言葉。まるで違う人間に入れ替わったようです。

しかし、すぐに時代はバブルを迎えます。矛盾を置き去りにしたまま、世の中が躁状態に転換する時、彼女やその家族はこれからどんな波に乗るのでしょうか。ふとそんなことを考えると、そのひと言が幕開けを告げていると取れないこともないのですが、それはこの先を見て判断することにいたしましょう。

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