楽器屋さん、はしごする

仕事始めは明後日ですが、今日から活動を始めました。というか、大晦日から3日まで一歩も外へ出ていない…、ずっと写真をスキャンしながら過去と向き合っていました。健康に良くないですね。

6日はれっきとした仕事をする日ではありますが、同時にリフォームの諸々も動き出すこととなります。午前中には打ち合わせがありますし、翌日から防音工事が再開します。決めるべき事、調査すること、根回しすることが多方位に待ち構えており、気分的には休戦明けを迎えるといった感じです。

というわけで、本日は息抜きの意味もあって楽器屋さんを回りました。大久保のバーチーズさんが、委託手数料を10%に引き下げるイベントを打ち出しており、出番の少ない楽器を、この機に手放すべく持参しました。本当は、他にまだ3点、売却を検討した品がありましたが、それを手放せば同等以上の代替機を欲するであろう事が目に見えていましたので、欲を断つためにもとどまりました。かえって散財することになっては本末転倒です。

と言いながら、新宿エリアで他に2店舗、渋谷で1店舗(なぜなら新宿からの帰りのルート上にあるので)立ち寄って、4箇所で合計9本を弾かせていただきました。1本だけ国産JBの中古で、それ以外は全て6弦です。委託販売に預けた楽器が全部売れたなら、6弦仕込んでおきたいなーと考えていますが、それは安直過ぎる願望。リフォームに想定外の資金が必要で、そのための備えと思って売却するのですから。

とは言え、自分にとっての理想像が明確化されつつあるのに、具現化された製品に出会わない日々がストレスでもあるので、様々にアンテナを張っておくことは大切です。

バーチーズさんではエルリックとベネボレントを弾かせていただきました。珍しい34インチ仕様のエルリックは、楽器としての安定感、汎用性、弾きやすさ共にハイレベルで欠点がなく、魅力でした。しかしながら、私の、そう大きくはない左手小指はローB弦を押さえることが、(大きく姿勢を崩せば別ですが)できません。ネックの幅に関して目をつぶることは、おそらくまたお別れするであろう結末を予想します(←繰り返し実証してきました)。

ベネボレントは33インチの楽器で弦間17mmと、ネックに関しては理想を叶えてくれます。小指も使えました。中々素性の良い楽器で、パッシブ・サーキットであることが嬉しく感じられます。通常のロングスケール4弦より短いくせにローB弦の自然な鳴りが大きな美点です。しかし、ここでわぁーっとならないのは、34インチではなかった点です。かつて、ゼロ年代の頃、33インチスケール推しのキャンペーンをブログ上で展開した身ですが、相当数を現場で試した結果として、自分には合わないと結論づけました。なぜなら私のメインの仕事が、一度録音された音楽をステージで再現する、という方面に偏りがちな為に、記憶にある音色に寄せたい無意識が根強く働きます。どうしても33インチから聞こえる特有のクセに痛痒を感じてしまいました。従来からあるエレキベースの音色感から抜けられないんですね(同じ意味でエキストラロングスケールも苦手です)。

ある楽器店でヤマハの普及価格帯の6弦ベースが片手で出ていました(中古)。だったら持っていてもいいかな、35インチでトレーニングしてみたらどうだろう、ネック幅は狭いし、と買う気満々でしたが、弾いた瞬間、やっぱりやめました。手許にあっても、使う場面が想像できませんでした。

なんやかやあって、以前、別の個体で試させて頂いたこともあるロスコーの6弦、34インチも弾かせていただきました。何年か前には迷った末、同モデルを買いませんでした。今回も、楽器としてはとても良いのですが、やはり弦間18mmでは痒いところに手が届かない、ならず、押さえたいところに小指が届きません。だけが理由ではありませんが。

そのお店には6弦ベースが何本かありましたが、ネックが細いというものは存在せず(要は特殊だということです)、やっぱりフォデラかMTDにオーダーかなぁなどと(彼等ならやってくれます)、たまたまそれらがあったので弾かせていただきました。いずれも35インチでしたので、購買対象ではありませんが、参考にさせて頂き感謝です。どちらもハイエンド、頂点というカテゴリに位置する文句の付けようのない品質でありながら、初老となってしまった私にはチャレンジする意欲は湧きません。申し訳ないです。

このように、出自の異なる様々な楽器に触れさせて頂くことで、自分が何を欲しているか、益々明確にさせることができます。一方、そうした中で時折グラっときてしまうこともあります。一目惚れは、衝動買いという過ちを犯させます。しかし、それならそれで経験値は積み上がりますから、そこまで思えるということ自体は悪くないです。アドレナリンが出てるということで、正常な判断力を逸した状態であり、結果散財ですから控えなくてはなりませんが、もし長く付き合える相棒と出会えるのであれば、そのトキメキを信じてみたいとも思います。ですから、こうして店へ出向くのです。

ミウラギターズの6弦が新着で2本ありました。一方が18mmブリッジ搭載ということで、ネックのサイズは両者同じですが(ワンスペック)、部品により弦間を変えて作ってあります。私が欲しいと思っているものには3条件あって、スケールが864mm、弦間が16mm(18よりも狭ければ良いかも?)、重量4kg前後と軽量であること、となります。

ミウラギターズの18mmブリッジ搭載の楽器は、弦間広すぎ、重量オーバーと、スケールだけしか条件に合いません。にも関わらず、ネックのフィーリングが極上で、最近弾いたどんな楽器よりもスムースに左手を動かせる不思議なシェイプでした。その価値は非常に高い気がします。楽ですし、指が勝手に動いてくれます。ストレスが無い、とはこのことだと教えてくれます。そして、なぜなんだろう、と疑問すら浮かびます。昔それはF-bassにも起きました(スケールが長く、やがて諦めましたが)。

数年前になりますが、導入時のミウラを弾いて、やはり同じ事を思いました。それで惚れ込み、自分用にオーダーしました。ネック幅は変更できない前提で(それでもナット部でやや狭くしてもらいました)ブリッジには17.5mmのものを搭載しました。それに先んじて、関西東海地区を含む、国内市場に存在するミウラギターズは全て弾きましたが、MB-1シェイプの音が優れていると感じました。MB-Rシェイプは、音質だけで言えば、少し痩せて聞こえます(もちろん材によるのでしょうが)。そうした経緯もあって、今回触らせて頂いたMB-Rの2本は、当初スルーだったのですが、忘れ去っていた抜群のネックフィールを思い出すことになりました。

で、アドレナリンが出たか?と問われれば、そこまでには至りません。ひとつだけ、気になります。塗装です。厚いウレタン層が音に乗っている気がしました。これは本当に個人的な嗜好の問題です。材との相性もありますがオイルやラッカーなら、もっと自然な鳴りだろうに、と思います。先に名を出したベネボレントはニス塗りの仕上げでした。もちろんそれは効いています。そちらは中をくり抜いたホローボディですから木の振動を重視してのこと、別の路線ですからしようがありません。

ただ、エレキと言っても、塗装の種類は音に変化を与えます。気のせいかも知れませんが、それは違いとして聴き取ることができます。以前のオーダー時にラッカーを希望しましたができないと断られました。私が雑誌取材で読んだ三浦氏のインタビューではラッカー、ウレタン、オイルから選べると仰っていましたが変更があったのでしょう。というわけで、これがもしオイルだったらオッケーかなと思います。自分的に。ただ作る側からして、在庫品としての提供はしにくいでしょうね。すぐに傷が付きますから。

そんな風に、巷で言うお正月休み的な1日を過ごし、お付き合いのあるお店の方々にご挨拶をし、厚意で商品を触らせて頂いた感想をつらつらと記しました。もう一度、念を押させて頂きますが、各楽器は、それぞれに非常に素晴らしく、気に入らなかったところを忖度無しに述べました点について、完全にそれは、個人による理想像と照合したジャッジであり、私にとっての点数でしかありません。それは私の財産と交換が可能か(形を変えて余剰が生み出せるか)という視点で行われています。ですから他のユーザーさんにとって100点である可能性は十分にありますので、どうぞこちらを「評価」として信じないで頂きたい。作られているビルダー、メーカーさん、扱われている流通の方々へは感謝とリスペクトをあらためて表明します。

でもミウラ欲しい。



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