何を買ったらよいのでしょう

自分だったらこれを選ぶ、というのは他人には通用しません。無責任なアドバイスは禍根を残しかねませんので慎重に行う必要があります。

8月からレッスンをスタートさせた方が、昨日ご自身の楽器をお持ちになりました。私と同世代の方で、若い頃に買って少し使い、その後はずっとしまっておいた、というフェルナンデスです。アクティブ回路搭載でミディアムスケール、ネックは細く18mmピッチのブリッジだと思います。全体的に縮小された設計。

まず驚いたのは、4個のポットが固着して回らないこと。初めて見ました。音が出ないのは、入れっぱなしの電池が放電したかと、まずは疑い裏パネルを開けます。電池は8.8V残っており、回らなくなったマスターボリュームがミニマム位置で固まっていたことが原因でした。

ポットのノブはローレットへプッシュオンするタイプですが、これも固着して素手で取り外すことができません。ポット本体を手で押さえ、壊れても仕方ないと思いながら少し強めで捻ってみると、やがて回るようになり、MV以外の3つのポットは、各々センタークリックも残っていました。これでとりあえず音が出ました。

ちなみに裏蓋を空けると、アクティブ回路の基板がスポンジでくるまれ、浮いた状態で収納されています。廉価な楽器では固定しないのですね。そのスポンジが化学変化で、触れた瞬間にボロボロに崩れ、辺りが粉だらけになりました。まず掃除。絶縁できるものが無かったので、近くに配備されていたペイパータオルでくるんで元へ戻しました。

チューニングは緩めてあり、調律し直すと、案外ネックは酷いことになっていません。ところがトラスロッドもまた固着しており回せません。ローポジションの方で順反りしていて、ロッドがその位置に効くかどうか不明ですから、このまま使うのを良しとしましょう。ブリッジサドルの高さは適切で、最後に使った頃(といっても数十年前)に一度メンテナンスに出したということで、その仕事が確かだったと思われます。

ポットのガリと多少高めな弦高を容認すれば練習に使えます。しかしご本人の中では、これはもう駄目、新しく買わなきゃという思いがあったようで、買うとしたらどうしたらよいか、というのが次のトピックになりました。

ご予算はいくら、とずばり伺うのが本当は良いと思いますが、阿吽の呼吸でもって、とりあえず最安の提案をしてみようと判断しました。必要なチューナー、シールド、アンプはそれぞれサウンドハウスで買っていただくとして、本体は、あとでお勧めをリストアップすることになりました。

ところで、チューナーはT.C.のユニチューン一択でお勧めしますが、円安のせいで4000円を超えてしまいました。昨年の秋より10%以上の値上がりで、ちょっと勧めにくい価格帯の気もします。シールドは”SOMMER CABLE / The Spirit XXL Instrument 3.0m”が2480円なので決まりですが、取り寄せになっています。だったら別にカナレでいいです。アンプもプレイテックで4280円です。この3点で11000円ならコスパ最高ではないでしょうか。

というわけで、メーカー都合によるおかしな初心者セットではなく、ソフトケース込みで39000円を上限とするなら、予算50000円のスターターキットが組めます。

さて、ブランドで言えば、ヤマハかバッカス、スクワイアがお勧めでしょうか。アメリカに居た時、もう、みんなと言っていいほどスクワイア買ってました。レストランでも教会でも、そこにベースがあるなら、それはスクワイアです。日米で事情が変わるかもしれませんが、とりあえず原器に忠実と言ったらこれ以上無いでしょう。

ヤマハはもう少し出さないと買えないかと思っていましたが、4万以下で販売される楽器もありました。BB234とTRBX304がそれです。後者は楽器店の教室備品になっていて馴染みがあります。アクティブサーキットは、このクラスに無くていいと思いますが、楽器のデザインはよくできていて弾き易いです。個人的な引っかかりとして、24フレットなのでスラップを練習するのに指板が長過ぎてやりづらいかな、という不安が残ります。BBは434は備品になっていましたが、その下があることを存じませんでした。実売で2万円近くの差は大きく、品質もそれなりかもしれません。しかし234に不満が生じた時、倍の価格帯から探すのがいいと思います。2本目は10万前後から選ぶ、ということで。予算は、倍、倍と上げていけばアップグレードを実感できると思います。

バッカスは、10年以上前から、初めの一本として勧めてきました。アイバニーズも良いのですが、フェンダー型の方が推しやすいだけの理由です。本人が意欲的に楽器店を訪問し、実機を見てアイバニーズを選ぶのに反対する理由はありません。好きになったものを買うのは間違っていません。以前、大学一年生の女子がアイバニーズの5弦を最初の一本にしましたが、DTMに活用するのに最適で、とてもいい選択でした。宅録を視野に入れればアクティブは強みです。

最近、ボトムエンドの機種にローステッドメイプルネックを採用し、JBのPUをハムバッカー搭載にして気を吐くバッカスは、実売3万円を切っているのが驚きしかありません。少しでも安く、と考えれば他を圧倒しているのではないでしょうか。最安レンジの楽器からはノイズの問題が生じるケースが多いのですが、先手を打っている印象です。

安心の国産、と行きたいところですが、フジゲン、あるいは島村楽器のヒストリーは7万円くらいします。これくらいの機種から始めるのは理想です。トーカイも加えていいでしょう。ただ一点、軽いものを選んでくださいと言っています。ズシッとくる4kg後半のものが多いです。せめて前半の重量の個体を使う方が後悔が少ない気がします。そしてそれらの中古が、もし程度良しで見つかれば、おおいに勧められます。中古は現物確認が必要ですし、販売者の保証、アフターケア体制も物を言います。そうした要件が見合うならば、本当はこの価格帯での一推しはこちらです。

というわけで、デジマートでお勧めをピックアップして、検討に疑問が生じればその相談を受けますと添えてその方へメールしました。若い頃に諦めてしまったベースを再び弾こうと思い立って頂き、嬉しく思っています。この記事が何かのご参考になれば幸いです。



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