見出し画像

スニーカー解体新書 #3 「ナイキ ダンク ロー プロ」

身近な存在ながら、その構造があまり知られていないスニーカーを解体・分解してみるスニーカー解体新書。
第三回目は、エアフォースとくれば次はこれでしょうと言うことでナイキの「ダンク」です。
エアフォースは82年の登場ですが、このダンクは少し遅れた85年にノンエア、学生プレーヤー向けの廉価バッシュとしてリリースされます。このダンクですが発売当時は日本未発売で、90年代終わりになってやっと日本でも復刻(もちろんカジュアル用途として)されますが、当時の日本国内のローカットの販売価格は、エアフォースの9,000円に対し、ダンクは13,000円。ちなみにアメリカでの価格を比較してみると、エアフォースが80ドルに対してダンクは60ドルの状況。ノンエア廉価バージョンの方が日本では高いという説明がなかなかつかないものでした。(ちなみにどちらもアッパーは本革なので価格差をアッパーで説明するのも困難です。)
今現在の日本国内価格は、フォースが10,000円に対し、ダンクが11,000円と少しその差は縮まってはいるもののダンクの方が高い状況は変わっていません。

ナイキのバッシュの中で自分が一番好きなのがこのダンクです。フォースよりも見た目はこちらの方が好きなんですが、如何せん履き心地がフォースには勝てないため、より履いてきたのはフォースの方になります。さすがにノンエアでかつソールのボリュームも薄めなため、履き心地面では褒められたものではありません。見た目は最高のルックスしてるんですがね。

かつ、履いたことのある人は分かると思うのですが、ダンクって雨の日にめちゃくちゃ滑りやすいんです。元々屋内バッシュのため、屋外使用なんて想定していないのでしょうが、それにしても他のバッシュよりも滑りやすい印象です。実際に何回も滑ったり転んだ経験ありです、、、

今回のダンクは「ダンク ロー プロ」なんですが、この「プロ」とは何か?「プロテクション」の略です。足の甲部分を保護するためにシュータンにスポンジがパンパンに入れられています。また、サポート性を高めるためにシュータンがゴムストラップでアッパーに固定されています。
そう、これスケボー用に2002年に誕生するダンクSBの仕様なんですが、SB以前の00年〜02年頃にダンク プロとしてインライン販売されていました。唯一SBとの違いはノンエアであるということ。SBの方はインソールにズームエアが搭載されています。
このパンパンのシュータンですが、当時嫌う人が多く、中からスポンジをわざわざ取り出して履いていた人も多かったです。

分かりづらい画像ですが、シュータンを固定するゴムストラップです。これが内側と外足でシュータンを固定しています。アディダスのウルトラスターのように紐なしでも履ける仕様というよりは、シュータンを固定しサポート性を高める意図のはずです。
ちなみに、プロに関しては紐も仕様が通常のものとは異なっていました。通常のダンクは平紐ですが、プロは丸平紐です。

今回も例によって右足しかない未着用サンプルです。製品タグで台湾製のサンプルであることが分かります。製造年月日は2002年1月9日、よって販売は02年の後半のモデルです。いずれにせよ一回目のフォース同様、製造から18年経っていることになります。
ダンクもフォースと同じくカップソールモデルですので内部で加水分解が起こっているのでしょう。気が滅入ります、、、

インソールに貼ってあるサンプルシールです。今回も簡単に剥がせるものでした。

サンプルシールを剥がすとインソールからスウッシュ ロゴにエアの文字が、、、何回も言うようにダンクはノンエアなのでエアロゴは入らないはずなんですが、これはエラーです。サンプルに関しては特に重要でない部分は結構適当に作ってあったり、実際に販売されるものと仕様が異なっていたりするのですが、これも些末な部分は適当に作ったのでしょう。ありもののインソールを流用したとか。

それでは解体です。ダンクはフォース同様、カップソール仕様でアッパーとミッドソールが縫い込み結合されているので、これを地道に解いていきます。

縫い込みを完全に解いた状態。20年近く経っているものなので今回も接着剤は手で簡単にはがれました。

アッパーを外した状態。どうせ加水分解してるんだろうなぁと思っていたら、、、

左がアウトソール、右がミッドソール。
なんとミッドソールが生きていました!加水分解していないということです。18年も経っているのに状況によっては加水分解が起こらずに済むものもあるということです。ちょっとこれには興奮しました。ダンクよりもフォースの方が早く加水分解しやすいというスニーカーマニアではよく知られた経験則があるのですが、それが今回、実際に証明されたということです。ただし、その理由は未だによく分からず、かつ、シューズを分解してみなければ実証できないという面倒な部分があるのも事実なんですが、、、

18年経っても生きているミッドソール。どう見てもポリウレタン素材なんですが、こんなこと本当にあるんだと一人で感動してしまいました、、、スニーカーに興味のない人には何のこっちゃ?でしょうが、スニーカーの変態からしてみるとほとばしる興奮が抑えられません!

もう一回ミッドソール画像。まっさらなキレイな状態!なお、繰り返しになりますが、ダンクはノンエアなのでエアは搭載されていません。

ついでにミッドソールを横から。結構ロープロファイル=薄いんですが、この辺りが履き心地に反映される所以です。

ミッドソールに対する感動に浸りながらアウトソールチェックです。冒頭、ダンクは廉価バージョンのバッシュと言いましたが、そのあたりがこのアウトソールの仕様にも見て取れます。何の工夫もない構造。フォースのそれと比較すると一目瞭然です。

アウトソール前足部には「DUNK」と「9」の刻印あり。刻印というかモールド(金型)の仕様ですね。なお、ナイキのサンプルサイズは、メンズ9インチ(27cm)、ウィメンズ7インチ(24cm)と規格が決まっています。ちなみにアディダス、リーボック含む他メーカーのサンプルサイズもほぼ上記サイズです。なんで各社同じサイズにする必要があるのかはまた別の機会にでも。

アッパー、ミッドソール、アウトソールを並べたところ。アッパーの中にインソールが入ります。エアもないため、構造は至ってシンプルです。

ちなみに、こちらが「プロ」仕様のゴムストラップを外したところ。この部分がアッパーに縫い込まれて固定されています。

こちらが「プロ」仕様のシュータン内部のスポンジ。パンパンに入っています。

最終的な分解パーツ。左から、アウトソール、ミッドソール、インソール、アッパー。現代におけるスポーツシューズの基本みたいなシンプル構造です。
兎にも角にも、18年経過しても生きていたミッドソールには感動ひとしおです。変態はこれを肴に何杯か行けます!

#ナイキ
#nike
#ダンク
#dunk
#スニーカー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?