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グラフィックデザインで何がしたいの?

グラフィックデザインの仕事をしている。それで、考える。

  ところで、グラフィックデザインて何をデザインするんだろう?
  つまりは、グラフィックデザインって何をすることなんだろう?

シンプルに言えば、
何かを、目に見えるカタチに表すってことだ。
何かって何? 何のため?

あらゆるものごとは、必要に駆られて生まれるはずだ。
グラフィックデザインもしかり。
古い時代から、今もあまり変わらないかたちで伝わっているもの、今見ることができるもの。
そこに、何かヒントはないだろうか?

アイヌ民族の小刀を見たことがある。持ち手にとても美しい文様が彫られている。
男性が、婚約者の女性に贈るために自分で彫るという。自分の一族のことを伝えるために。

アボリジニが描く絵。
展覧会でビデオが上映されていた。絵を見ながら、アボリジニの人たちが語り合っている。
「ここには実のなる木がある。ここには種を植えた。水の在り処はここ。この川には悪い魔物がいる」
あれは地図。図解。先祖代々歩いてきて得た知識・知恵を共有するための。

アイヌの男性は、小刀に文様を彫りながら、先祖から自分に連なる血のことを考えるだろうか?
贈られた女性は、そうして長い長いときを経て、目の前にこの男性がいることをどんなふうに感じるだろうか?

アボリジニの人たちは? 
その足で歩く大地が自分たちを生かしてくれたり、脅かしたり、意志を持って生きていると感じるだろうか?
歩き続けて、さらに先祖と、大地と、強く結ばれていくのだろうか?

二次元的な平面のうえに、時間と空間を刻み込み、観ることによってそれは解き放たれる。

何のために、それをするのか?
自分を取り囲む世界、自分が存在している世界を知るため? 
そこに秩序を見つけるため?
つながっていることを観じるため?
それは物語。
物語をだれかに伝える、だれかと共有する。
その文様や絵は、だから、あんなふうに美しいのだろうか?

語るべき物語を観じる。
観じることができれば、それを表すためのしかるべき色、カタチ、方法はおのずと決まるはずだ。
そんなふうにデザインしたい。
そうしたら、美しいものができないだろうか?
頭で考えたのではないものが。

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