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生活圏内の、ちょっと先へ。

10月も終わりかけていた頃。
岩手出張の帰り、新幹線はやぶさで東京駅に着いたタイミングで、一本の電話が来た。
インスタで知り合った友人、ryojohoさんだった。

「週末、鹿島線を撮りに行きませんか?」

鹿島線は、千葉県の佐原駅と茨城県の鹿島神宮駅を結ぶ路線だ。
利根川北浦を長大な鉄橋で渡る様が圧巻である。

この週末は、気持ちの良い秋晴れの予報だった。
最近は西や北へ行ってばかりで、東の方面、千葉茨城になかなか足を運ばなかった。
興味や魅力がないとは思っていない。でも、休日はもうちょっと遠くへ行きたかった、というのもある。
誘ってもらったせっかくの機会、自分の生活圏のちょっと先を、ryojohoさんと、彼女の3人で列車旅することとなった。

総武快速線、E235系とryojohoさん。

朝6時にもならない早朝の時間から合流し、総武快速線で一路千葉方面、成田まで向かう。
この時間に総武線で東京方面ではなく、逆の方面に向かうということは自分にとって珍しい。
先頭車両、運転席の後ろで前面展望していると、朝陽が差し込み、いつも見ている景色が一味も二味も違って見えた。複数人で行くと、見慣れた景色でも新たな発見がある。

早朝、運転席の後ろから。
中川を渡る。
市川で成田エクスプレスを待避。
朝の千葉は霧が濃い。朝に成田空港に行く時にも見る光景。

実を言うと、前夜は楽しみでほとんど寝ることができなかった。
眠いのは当然で、途中コンビニで眠眠打破を一気飲みしないといけないくらいの状態だったが、ryojohoさんとの久々に再会し、前面展望をしながら鉄道トークを繰り広げていると、眠気はそのうちどこかへ行ってしまった。(この時は)
同じくほとんど寝ていない彼女は、話し込む2人をよそに座席で爆睡していた。

成田でわずかな時間の乗り換えを済ませ、すっかり千葉の顔になった209系に乗り込み、次の乗り換え駅の佐原を目指す。
部活で遠征なのか、ユニフォームを着た学生が多く乗っていたのが印象的だった。

稲刈りが終わった田んぼと、霞かかった空が印象的だった。
彼女
佐原駅に到着。ひたすら撮る続けるryojohoさん。

佐原駅ではしばし乗り換えの時間があり、しばらく撮っていなかった千葉の209系と、E131系を撮り込むことに興じた。
相当長い間手入れがされていないのか、黄色と青のラッピングが色褪せている。
かなり白っぽくなっている209系は、良くも悪くも千葉らしい風情がある。
209系もかなりの古参となり、むしろこれに乗るために千葉に来る、と言うことになりつつあるのが信じられない。

佐原からはこの日のメインディッシュ、鹿島線に乗り換える。
E131系は新潟のE129系らしさもあり、割と近いところを走っているのに遠くへ来たような感覚になる。の眩しくて爽やかな情景と重なり、旅情は最高潮だ。

遠征であろう学生たちは佐原で下車。
雑誌「旅と鉄道」感がある。
結構とってもまだ8時半とか。長く充実した1日だった。
高架になる直前、登っていく線路にワクワクする。
薄い霧の向こうの、伸びゆく高速道路の高架がたまらなくエモい。
利根川を渡る。
延方駅〜鹿島神宮駅間の鉄橋。
北浦の上を越える。キラキラした水面に癒される。

鹿島神宮駅に着き、鹿島線を撮るという目的を果たしに行く。
ついさっき渡った、延方駅〜鹿島神宮駅間の長い鉄橋に向かう。
送ってくれたタクシーのおじさんは、鉄橋近くの路地で降ろしていいという自分達に苦笑いしていたのはいい思い出。

向かいの鹿島臨海鉄道に差し込む陽。旅情が無限に止まらない。
鹿島神宮駅。長いホームに短い列車というのも乙。
彼女とryojohoさん。
スタンドバイミー感。
お目当ての鉄橋。列車がいなくても撮りごたえがある。

大体1時間位1本程度の鹿島線だが、朝は割と本数がある。また、この日は週末で臨時の列車「B.B.BASE」が走るとの情報もあった。そんな訳か、のどかな風景に反して、撮り鉄な方々が多かった。
あまり駅以外の場所で鉄道写真を撮る機会はなかったので、本当の意味での「撮り鉄」には少し興奮した。

ryojohoさんと話し込んでいるうちに、列車は割とすぐにやって来た。

E131系普通列車。
長い鉄橋と短い編成のアンバランス感がかわいい。
209系B.B,BASE
6両編成でも短く見えてしまう不思議。
ryojohoさん

約1時間半くらい滞在しただろうか。目当ての列車も一通り通り過ぎたので、空きまくったお腹を満たしに鹿島神宮近くの食堂へ向かった。
彼女の食に対する執着はすごいもので、行くところは大体美味しい。

今回訪れた「栗林食堂」は地元では名の知れたお店なのか、地方のお店にしては結構人が入っている印象。なんだか懐かしい家庭の味に気持ちが安らぐ。しかも値段もこのご時世的にはかなり安い。お店の方々も気さくで、近くで採れたまでカットしてサービスして頂いた。
Wi-Fiもコンセントも無くても、ついつい長居してしまいたくなる居心地の良さだった。

年季の入った暖簾がいい味を出している。
数十年は変わっていないであろうメニューと、その価格。
肝心の料理の写真は撮り忘れた
(チャーハンを食べた)

お店を出て小腹も満たされたところで、凄まじく眠くなってきた。前の晩にほとんど寝ていないのだから当然だ。そんな体に鞭を打って、今度は鹿島神宮へ向かった。

関東に住んでもうすぐ10年になるが、鹿島神宮には行ったことがなかった。
本堂は改修工事中でその姿を見ることはできなかったが、仮殿も多分レアなはずなので、これはこれで良かったことにしよう。鹿がいることに少しビックリした。

肝心の仮殿は撮り忘れた。
鹿は、奈良公園のように放し飼いでは無かった。
彼女
この後盛大に蜘蛛の巣に引っかかった。

鹿島神宮の大きい鳥居の前にはお店が立ち並んだ参道がある。
クラフトビールを提供しているお店で小休止。
この辺りから相当眠くなって来たので味はあまり覚えていないが、美味しかったような気がする。

鹿島神宮駅からは、第三セクターの鹿島臨海鉄道大洗鹿島線に乗る。
線路は繋がっているけれど、別会社の違う路線というのがまた何とも面白い。
鹿島線は電化されているけれど、大洗鹿島線は非電化。車両もレトロさ全開の6000形に乗り込んで、一路水戸を目指す。

鹿島神宮駅
優しい日光が眠気を誘う。
暖かな車内が眠気を更に誘う。
エンジンのガラガラとした音が眠気を誠に誘う。

とは言うものの、ここに来て体力は限界。気付けば爆睡をかましてしまい、体感時間は一瞬水戸に着いた。途中かなり揺れたところがあって、ロングシートの端のポールに頭を強打した記憶がうっすらある。

重い瞼をこじ開けながら撮った一枚。
伸びゆく線路をもっと眺めていたかった。

水戸は過去にも二度ほど来たことがあるが、どれもあまり時間がなくてゆっくり観光している時間は無かった。今回も帰りの列車の関係で駅前の水戸黄門の銅像しか見物出来なかった。
水戸は改めて、またの機会に。

水戸駅。柏駅や取手駅と何となく似ている。

水戸ではニューデイズ駅弁を買い、帰路は特急ときわ駅弁缶ビール、プチ打ち上げをした。大洗鹿島線での仮眠でスッキリはしたものの、元々眠い状態なのとビールの酔いで、途中の景色、会話は、今となってはほとんど覚えていない。それでも、ryojohoさんとの鉄道トークはここでも白熱していた記憶だけはある。

水戸駅では復刻塗装のE531系「赤電」に遭遇。
なんだかツイている1日だったと今は思う。
E657系特急ときわ。
実は乗ったことは2、3回しかない。
それでもビジュアル的に大好きな車両。
乗り心地も良かった。

でも確かなのは、朝からこの時間までの密度の濃い時間が、こんなにもあっという間に過ぎることが憎かった
束の間のが終わってしまうことを寂しく思いながら、特急ときわ、もといE657系が、自分たちをどこまでも連れて行ってくれることを、叶わないと知りながらも願っていた。
列車は1時間と10分ほどで上野へ到着。
ryojohoさんとはここでお別れ。自分たちも東京で下車し、自宅へと向かった。

ryojohoさん。
お互い、一生フットワークが軽くいたい。
東京にて。特急ときわはこの先品川まで行く。

会社の往復の日々が続くと、どこでもいいから関東圏を抜け出して、どこか遠くへ行きたくなる。何となく、関東圏から出ることが自分の中でのメンタルデトックスなんだと思い込んでいた。

でも、それは違った。遠くへ行かなくても、移動の最中の細部に、旅情は宿る。自分はそれに気づいていないだけだった。
毎日のようによく乗る、通るところだからこそ、気付けない情景やら、余韻がそこにはあった。
ryojohoさんと一緒に旅をして、そういうところに気がつけたのは貴重だった。
そしてまた、どこかへ一緒にが出来ることを願わずにはいられなかった。

はどこへ行こうか。どんな列車に乗って、何を食べようか。
帰り道、次の旅先を考える。
そんな前向きな気持ちが、最大のメンタルデトックスだと気付いた。

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