『成しとげる力』永守重信(サンマーク出版)を読む

ブックライター塾でご縁をいただいた編集者がつくられた本を読み終えました。

アマゾンの書籍紹介文
最高の自分をつかめ! 悔いなき人生を歩め!
およそ半世紀前、たった4人で立ち上げた会社を、従業員11万人を超える「世界一の総合モーターメーカー」へと成長させた「経営のカリスマ」――永守重信。
その類いまれなる経営手腕の根っことなる〝人生哲学〟とは何なのか?
苦難に正面から向かい合い、挑戦し続ける〝行動力の源〟はどこにあるのか?
つねに実業界を牽引し続ける著者が、いますべてを語り尽くす。
23年ぶりに書き下ろした自著、ついに刊行!

「地位や肩書では人は動かせない」
「訴える力の原点にあるのは、その人の実績だ。また、人が発する言葉が心に通じ、腑に落ちたときに初めて、人は「この人についていこう」と決意するのだ」

 この件を読み、苦い思い出が、数多く脳裏をよぎりました。

 49歳のとき、新卒で入社した東証一部上場企業の関西マーケティング局長となり、戦略を作り上げ、部下に語りましたが、誰もついてきません。いえ、正確に言うと、面と向かっては何も言わないのですが、「笛吹けど踊らず」「面従腹背」「のれんに腕押し」、そんな感じです。完全になめられていましたね。

 54歳で転職した先の会社で社長に評価していただき、異例の大抜擢で管理本部長を拝命したときも、失敗しました。今度は馬鹿にされてはいけない、と部下に対して高飛車な態度に出、自分の後ろには社長がいると勘違いして力で押さえつけようとしたのです。大失敗でした。結局、また、部下の心を動かすことはできませんでした。

 今になって、ようやくわかってきました。そりゃ、誰もついてこないはずです。一言でいうと、「徳がない」、「器が小さい」のです。小さな自分に囚われており、部下ひとりひとりに真剣に向き合っていなかったのです。部下にはすぐにばれるのに、そんな自分を大きく見せようと虚勢を張っていたのです。あるいは、社長の虎の威を借りて、人を動かそうとしていたのです。そんな人間に従う人などいません。

 その頃の自分の言動を思い出すと、恥ずかしくて顔から火が出そうになります。実績もなく、人の心を貫く誠意もないのに、よくあんなことを言ったりしたりしていたものだ、と我ながらあきれ返ります。

 結局、自分は人の上に立つような器ではなかったことが、今ではよくわかります。これからは、勘違いせず、自分の赤心をもって、人の心を動かしていきたいと考えています。

 「ワンマン経営者」という印象の強いあの永守さんが、「トップは自ら進んで『御用聞き』となれ」と言っています。

「黙って椅子に座って、ひたすら報・連・相を待ってはいないだろうか。それでは、いくら待っても部下は近づいてこない。御用聞きのように、自ら足を運び、こちらから声をかけることが大切だ。上司を敬遠して近寄ってこないが、胸の内では声掛けを待っている部下もいるのだ」

これが、永守さんの言葉なのです。強面の印象だけで判断してはいけません。(了)

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