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図面とマンガ

勉強を始めたのは大学一年のとき
その頃は空想の空間を
イラストや模型にしてつくっていた
絵本に近かった
建築は絵本と同じだと思っていた
今も全く違うとは思っていないけど

登場人物がいて、どんな風に暮らし
その場を使い、交流するのか
街の中にはどんな表情をみせるのか
物語を編み出して
絵に描いた
それが設計だった

建築といえば、図面というイメージは強い
図面書いてるなんてすごいよね
って言われたりもしたけど
わたしは図面はほとんど書いていなくて
表現したいものの助けになるくらいの
ほんのすこしの手段としてしかなかった 

学生の時、実際に建つ建築や図面は
既にそこにあるというだけで
興味を持てなかった
まだみぬものへの憧れが強かった
どうしても、できなかった

図面の書き方さえ知らぬまま社会に出て
5年が経過した
やっぱり、大した図面を書けていない

でも書いている。
書かなきゃいけなくなった。
書くことがつくることなのだと知った。
とはいえ、
手が止まる時がある
それはイメージできていない時だ
イメージできていなければ図面に書けない

働いてから知った言葉がある
「マンガ(漫画)」だ
いや、知ってるけど、違った

「マンガで悪いんだけどさ、こういう感じに納まるんだよ」
「マンガでいいから、どう作りたいのか書いて教えて」
こういう使われ方をしていた

マンガって言われると
登場人物がマス目の中に入ってて吹き出しにセリフがあるような
いわゆる漫画を想像するんだけど
ここで使っているマンガは、イラストに近いもののことだった

寸法もスケールもあっていないんだけど
部材の構成がわかったり、形がわかったりする
そういうものがマンガである
図面は寸法とスケールが与えられ
実際にできるものと同じ比率で描かれている

図面を書いていて手が止まった時
イメージがないのだと気づく
そういう時、マンガでイメージを作っていく

下手くそで、間違ってて、不安定で
床なのか、壁なのか、窓なのか、穴なのか、枠なのか
書いている本人にしかまだわからないような
書いてる本人も意識がないような
そんな線を描き重ねていく

そのうち、少しずつ、その線たちに
本当の役割を、本当の姿を教えてあげたくなる 

君は厚み15mmの集成材で
君は厚み9mmの石膏ボード
君は見切り材で7mmくらいかな
みんなは、この部屋のこの角で出会うことになる
その時はこういう順番で重なり合って、くっつくんだ

そして、小さな小さな図面ができた
全体の建築を示す大きな図面の中の小さな図面

図面とマンガ
大人と子ども
CADと手書き
本当と嘘

こんな対比に似てる気がする、図面とマンガ


どちらも同じ。
建築をつくってる。








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