土曜日の溜まり場
僕がラジオを聴き始めたのは、大学1年生の頃だった。
最初の頃は「適度に笑える暇つぶし」くらいの感覚だった。
その頃はコロナ禍真っ只中で、人と会うことも難しかったので、暇という暇を持て余していた時期だった。
移動時間、面白みのない家事をこなす時間、散歩の時間。
いつもの味気ない時間と風景が、華やかに彩られていった。
数ある深夜番組の中でも特にハマったのは、オードリーのオールナイトニッポンだった。
オードリーの二人の掛け合い。
番組開始当初から変わらず、毎週二人が一本ずつ用意したトークを披露するストロングスタイル。
そしてそこから垣間見える、若林正恭という男の人間性に惹かれていった。
ラジオから派生して、彼のエッセイも読んだ。
煌びやかな芸能界に身を置いているとは思えない捻くれた物の見方と、それに対して悩みもがきながらも自分の言葉を探す不器用な性格が、とても魅力的に映った。
いや、そんなものは後から取ってつけた理由に過ぎないかもしれない。
単純に、なんといっても彼の話は面白いのだ。
案外、彼のラジオが好きな理由も「面白いから」というシンプルな理由でしかないのではないか。
そんなオードリーのオールナイトニッポンが東京ドームでライブをやると、一年前に発表された。
僕はアーティストのコンサートやお笑い芸人のライブにはほとんど行ったことがなくて、ライブに対する感度は恐ろしく低かった。
だけどあの発表を聞いた時は思った。
これは、絶対に行きたい。と。
ラジオのイベントが東京ドームで行われるなどということは前代未聞で、これはただならぬ瞬間に立ち会えるのではないかと興奮が抑えられなかった。
残念ながらドームチケットは当たらず、ライブビューイングで当日を見届けることになったしまったけれど。
会場の熱気に触れることはできなかったが、オードリーに触発されて、自分の中に込み上げる熱い気持ちに触れることはできた。
ドームでのトークゾーン中。
若林さんは言った。
「絶対に行くべき目的地ができると、街が色づいて見えるよな」
ドームライブの発表があったあの日から、僕の毎日は一気に色づいた。
いや。
オードリーのオールナイトニッポンに出会ったあの日から、僕の毎日は色づいたのだ。
毎週土曜の夜。
僕の、絶対に行くべき目的地。
彼は、ライブの締めに言った。
「いつになるかわからないけど、またこれからも変わらず喋り続けていくので聴いてください。またいつかやろーや」
彼のその言葉を信じて、今はまだ見えない新たな目的地に夢を乗せる。
最高に、トゥースな時間でした。
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