【書評】永久不変の価値観を疑え――『殺人出産』
非常にセンシティブな表題だが、作品そのものは示唆に富んでおり、読者の想像力を刺激する仕上がりとなっている。「常識」を攪乱する村田節も健在だ。
「10人産んだら、1人殺せる」——命をつくる者が人の命を奪える「殺人出産システム」(以下「システム」)によって人口の調和を保つ近未来の日本が舞台。10人産む人は「産み人」と呼ばれ、崇高な存在として見られていた。そして、産み人に殺された人物も「皆のために犠牲になった素晴らしい人」として崇められる。
人を殺めても裁かれない仕組みが