第3子出産記録 後編 (ヒプノバーシング講座の感想、お産に対する思いなど)

■ヒプノバーシング講座と出産してみての感想

前回長男の出産時(2022年1月、36歳、初めての経膣分娩)と比べて、非常に消耗の少ない 軽いお産でした。感覚的には、前回の20%くらいしか体力を消耗していないんじゃないかというくらい楽でした。会陰も前回は2cm切れて、産後は円座クッション のお世話になり、痛みも1週間くらいは続きましたが、今回は1cm程度(2糸)で済み、痛みもなく、産んだ当日から普通に座れるし、普通にスタスタ歩けて、こんなに楽でいいのかしら!?と思ってしまうくらいに元気な産後でした。

感覚の強さがMAXの時でも本当に冷静でした。そういう意味ではやはり自己催眠には入れていなかったのだと思いますが、赤ちゃんが出るドタバタの最後の2分間までは、終始穏やかな気持ちで感覚をやり過ごすことができ、付き添ってくれていた助産師さんから何度も、痛みの逃し方が本当に上手と褒めていただきました。痛みというよりも、強い違和感(便意の親玉なような感覚?)というような感覚でした。

今回のお産が前回と比較してとても楽だった要因としては、経膣分娩が2回目であること、赤ちゃんのサイズが前回より450gほど小さいこと、そしてヒプノバーシングの講座を受けてそれなりにイメージトレーニングできた上で臨めたこと、が大きいのではないかと感じています。

そして、ヒプノバーシングの理想型である、自己催眠に入る痛みのないお産、とまではいかなかった要因には、
・元々のお産の個人差
・臍帯が首と体に巻き付いていたために最後赤ちゃんの進みがスムーズにいかなかったこと
・卵膜剥離をすることで、骨盤の靱帯が十分緩む前に陣痛発来となったこと
・イメトレや自己催眠状態に入るトレーニングが不十分だった
ということが考えられるかなと思います。
(あくまで素人の考察ですが)

ヒプノバーシングの講座では、お産について改めて詳しく学んだり、理想的な出産シーンを何度も見たりして、自分のお産でのイメージトレーニングを十分にしたりすることで、出産当日にかなり冷静でいられるという効果があると思います。もちろん私は一度出産を経験しているという大きなアドバンテージはあったと思いますが、初産婦さんにおいても、この具体的なイメージトレーニングをしておくのとそうでないのでは、全く違った結果になるのではないかと想像します。実際の今回の出産では、すごく冷静でいられたのはもちろん、赤ちゃんが出てくる過程を楽しむ事さえできました(臍帯が体に巻き付いていたので、最後赤ちゃんが回転して出てくるのを感じることはできませんでしたが)。

 また夫と共に受講することで、出産について共有し、良い関係性を構築できたなと感じています。特に今回の産院では立ち会い出産ができなかったので私のお産を直に共有する事できなかったものの、男性が目を背けがちな、この出産という人生における非常に重大なイベントに向き合ってもらう本当に良い機会でした。安産って言われるお産だって、ぺろっと産めるわけじゃないんだぜ、私と赤ちゃんの命をかけた決勝戦みたいなものなんだと、3産目にして最もダイレクトに知らしめることができました(笑)

また、ヒプノバーシング講座を受けて良かったと感じるその他の理由として、お産やお腹の赤ちゃんがいかにお母さんのことをよく感じて分かっているかを学んだことで、また妊娠中の赤ちゃんへの愛情がますます増したり、お産が楽しみになったりして、妊娠期間の幸せ度も確実に上がった、ということもあります。それは私の精神安定にも大きく貢献しましたし、そのことでお腹の赤ちゃんへの良い影響はもちろん、上の子たちもママが怒る頻度が減って、みんなハッピーというとても良い効果がありました。妊娠中から出産まで、そして産後も、とても前向きでいられて、新生児と上の子たち2人と、てんやわんやながら楽しくやれています。

もし私がTOLAC(帝王切開後の)下にあるというハイリスク妊婦でなければ、ヒプノバーシングのメソッドを最大限に活かせるような産院も選択でき、さらに理想的なお産になっていたかもしれません。でも私は、ハイリスク妊婦という私の体の条件の中で、出来る限りの良い出産となったと思っています。今回出産した大学病院では2回目のお産でしたが、陣痛室は暗めにしてあり、ベッドの上にいても良いし、床に敷いてくれたマットの上で好きな姿勢でいても良いし、十分にリラックスして波の時間をやり過ごすことができました。今回は最後赤ちゃんが出るところは上述のように少し危なかったこともあり、いきんでとは言われたものの、それまではほぼ何も指示もなく、私がやりたいようにやらせて下さいました。とても満足しています。

ヒプノバーシング講座を受講したことで、お産やお腹の赤ちゃんについて勉強し、十分にイメージトレーニングや準備をでき、上記のような良いお産をすることができたと思います。講師である京子さん、そして一緒に受講し、その後も同じ時期に出産するママ友となれたグループのメンバーの皆さんに、心からお礼申し上げます。

■最後に〜私のお産や医療介入についての考え方と、これから受講される方へ〜

 私は獣医師を職業としていることもあり、現代医学を頼りに生きています。だから、医療介入を拒むつもりは毛頭ありません。もちろん、科学的根拠がなく、必要のない医療行為は望んではいませんが、医療機関は医療機関で、基本的に命を救うために尽力して下さいますし、何せ医療者はプロなので、素人の考えでそれを邪魔することはなるべくしたくない、という考えです。そんなわけでヒプノバーシング講座で学んだことも、あくまで私がTOLAC下にあるハイリスク妊婦であり、大学病院で出産するという条件のもと、その範囲でできることだけをしようという心づもりでした。その結果として、ヒプノバーシングのメソッドが目指す完全な理想型のお産ではなかったかもしれませんが、私なりに良いお産になったと思っています。
 
 ところで私は、逆子のため、第一子の娘(現在4歳)を帝王切開で産みました。やはり経膣分娩したかったなと、今でもその思いはあります。お産に対するこだわり、というのは、前々から不思議なものだなあと思っていました。なんでこんなに私は、いつまでもこだわってしまうのだろうと。赤ちゃんの安全が一番大切、元気に生まれれば、経膣分娩でも帝王切開でも同じ、とよく言われますし、その意味は理解しているつもりです。

 でも同時に、元気に生まれれば同じって、その一言では片付けられない何かがあります。そのように片付けられてしまうことには、例えるなら、食べてしまえばどんな料理でもどんな味でも同じ、もっと言えば、死んでしまえば同じなんだからどう生きたって同じ、と言われているのに似たような感じを覚えます。でもそれは違う、同じじゃないと思います、私は。経膣分娩での理想のお産があったのにも関わらず、様々な理由から不本意にも帝王切開での出産となった妊婦さんには厳しい現実かもしれませんが、私の場合両方経験してみて、帝王切開と経膣分娩は、やっぱり違うと思う。そして、こういうお産がしたかったって思いは、これからも私の中に残り続けると思う。
(ちなみに私は帝王切開時に脊髄麻酔が効かなかったため、全身麻酔下での手術となり、赤ちゃんが出された瞬間を見ることも、産声を聞くこともできませんでした。なので意識がある状態での普通の帝王切開とはまた違ったものだと思います)

 だけどあれからずっと考え続けて、帝王切開という選択肢を選んだことは、私がこの先の生涯ずっと、“あの時こういうお産がしたかった”というわだかまりを背負うことで、娘が負うはずだったの出産時のリスクを代わってあげるという、彼女の人生の最初にあげられた、あの時最大の愛情だったんじゃないか、と今は思えます。仮に、当時逆子だった娘を、今では数少ない、骨盤位での出産をできる施設を探し出して、色んなリスクを冒してまで逆子のまま産んだら良かったのか?と考えた時、私は違うと即答できます。娘が出産に命や後遺症の危険性にさらされるくらいなら、迷いもなく私のお腹を切って出してあげるほうが良いに決まっていたと思えるし、どのお母さんもそんな思いで帝王切開に臨まれると思います。自分の“理想のお産”なんかよりもずっとずっと、赤ちゃんの命が安全が大事だと思うからこそ、選択できるのが帝王切開でのお産なんだと思います。

 もちろん“自然なお産”が理想、だと思う気持ちもよくわかります。私がヒプノバーシングの講座を受けたのも、自分の体に備わっている機能を十分に発揮したお産というものをしてみたかったら。だけど改めて、“自然”って一体なんでしょうか。
 
 沖縄の病院で働いていた知り合いの助産師さんから聞いた話では、沖縄には本州からの移住者で、妊娠中から出産まで、一切医療機関にかからずに赤ちゃんを産む人がいるらしいのです。それが究極の“自然なお産”かもしれません。ちなみに現代社会に生きて現代医学のお世話になって生きている私は、そこまではしたいとは全く思いません。赤ちゃんと自分の命の安全をなるべく確保した上で出産したいという考えです。

 “自然”の定義って色々あると思いますし、個人個人で違っていていいと思います。ただ自然の生きものっていうのは、とても貪欲でしぶとくて、自分や子孫が生き残るためならなんだって利用します。それを考えると、今利用できる医療技術を、安全に赤ちゃんを産むために適宜活用することもやはり、とっても生きものらしくて自然だとも言えるんじゃないか。

 そういう意味では、上述の“赤ちゃんが元気に生まれれば、経膣分娩でも帝王切開でも同じ”はその通りです。どちらの選択も“自然”であり、お母さんが赤ちゃんに、お腹の外に出る過程で贈ってあげられる最大の愛情表現なんだと思います。だからどんな形のお産であっても、後悔することなく、お母さん全員が胸を張れたらいいなと思います。

前置きが長くなりましたが、どんな出産方法であっても一定のリスクを伴うものであり、出産に限らず、どこまで医療介入を望むか、については個人の思想によると思いますので、ヒプノバーシングの講座を受けることは、それについてパートナーも含め、改めて考えるきっかけになると思います。その上で、出産という過程を経て、赤ちゃんをこの世界に迎え、赤ちゃんとお母さんと家族みんなで、幸せな新たなスタートを切れることを心から願います。

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