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ことば歴

「やばい」という言葉を知ったのは、たぶん小学生の頃。テレビの再現ドラマで女子高生が「ヤバい」といったのを、おじさまが勘違いして商品の改良をしたところ、それがヒットした……みたいな感じだったと思う。

その言葉を認識したとき、「やばい」は都会の言葉だと思った。そもそも女子高生が都会にしかいないと思っていた。

まあ私は使わないだろうな、と。

現在、普通に使う。反射的にでるときと、どう反応していいかわからないときに。便利な言葉だ。声色一つで肯定的にも否定的にもできる。


私は6歳くらいまで山に囲まれて育った。裏は山、歩いて5分で川、海も近かった。方言の癖がまあまああって、うねうねしている。

小学校に行く前に県内の街に引っ越し、周りの子どもたちは知らない言葉を話していた。パクるとかチクるも初めて聞いたので、はー都会はすごいな、と思っていた。これが標準語かと。全然違うのに。

その頃友達は友達で、私の話す言葉のイントネーションが独特だったのでそれが標準語だと思っていたらしい。標準語の基準がガバガバだ。

訛りも標準語もよくわからない私は、中学の卒業式に送辞を読むことになった。練習しているときに先生たちに言われた。

「もっと抑揚があるといいね」

抑揚か、うん。抑揚ね。私は抑揚という名の訛りを最大限にした送辞を読み上げた。やり切った。

高校に入学し、放送部に所属した。アナウンスをする際に標準語を使うので、練習した。ぜんっぜん今までの話し方と違う。恐ろしいことに、話し方が染みついているから細かい違いを聞き分けられる耳がない。

似たイントネーションの単語を教えてもらい、何度も練習した。それでもまだまだ間違える。頭がこんがらがる。少しでも抑揚をつけようとしたらすぐに訛る。真っすぐに読もうとしすぎて、電子アナウンスみたいになってしまう。

そこで思い出した。中学の送辞の時どうだっけ.......?同じ中学だった先輩に聞いてみた。

「なんていうか、朗々と読んでたね」

察した。

やだ。

その後、方言を交えたラジオ体操の声をすることになった。もともとの自分の方言でもなく、標準語でもない、とても難しいものだった。後輩に教えてもらいながら何度も取り直していく。考えすぎて何語か分からない言葉まで出た。

完成後は沢山の人たちが利用してくれているみたいでとても嬉しい。

部活も引退して一年。それでもまだ標準語には慣れなくて、練習中だ。方言も嫌いなわけじゃない。可愛いところもあると思うので、言い方がキツそうに聞こえるところだけ変えて良いとこどりをしている。

言葉は面白い。ちょっとの方言と微妙な標準語っぽいなにかを話しているくせに何を偉そうなと言われそうだけど、同じ言葉でも高さや速度、力の入れ具合を少し変えるだけでも雰囲気が変わる。意味まで変わることだってある。

日本語を使い始めてまだ20年も経っていない。まだまだ素人だ。

言葉を楽しく綺麗に操っていけるようになりたい。


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