きみを観ること

白樫が何本か生えている
つまらなそうに

なんでそんなにつまらないかっていうと

この常緑樹の向こうには
鮮やかな桜の木
みんなそれを目当てにやってくる

桜の木の下に集まって
わっ、と声が響いた
一陣の春風が桜を舞わせた

花見はあるけど
月見はあるけど

普通の木を見る
習慣はない

普通の空を見る習慣がないように

白樫の木々は
その瞬間身を震わせた

風が再び強く吹いたのだ

風の音は鳴り
木の天辺の葉を纏った梢が
まるで劇場の観客が総立ちしたような
ざわめきを放ち
小鳥たちもみな指笛を吹いた
無数の葉を散らせ

まるでたった今
素晴らしいオペラが終わったかのように
白樫の木々は揺れた

あるんだ

あったっていいんだ

木見

なんの変哲もない

きみ

きみを観ること