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手品が目の前で

手品を目の当たりにした

少女が笑いながら
つまずき転ぶ

笑顔が
悲しみにそして
痛みに
怒りにやるせなさに
かわり

誰が撫でても泣き止まない
少女が深く呼吸をして
また泣こうとして
買い物客のおばさんのひとりと眼が会った

その瞬間
誰かが手品を使った



少女の
悲しみが喜びに
痛みがはずかしさに
怒りが笑いに

眼を左右に動かして
感情が
変化していく

まるでかみの手によって
手品が行われるように

大丈夫?
そう言われて
皆に囲まれるまでの
ほんの一瞬の間に

かみは鮮やかな手品を使った

少女を笑わせるために
そして
みんなを安堵させるために

種も仕掛けもない
手品を