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佐保姫

夜汽車にあおられ続ける
菜の花
昨日置いていかれた
幼い佐保姫の後ろ姿

春をもたらす女神をおいて逃げた男
夜の内に北へと向かう汽車は
まだ雪のとけぬ山々の裾を縫って走る

やみからやみへ

呼べど振り返らぬ
かの女は
手を振り笑い泣きじゃくりしながら
夜汽車の行く先をずっと見ている

レールの脇に
無限の菜の花