黄色いボストンバック
おとうさんなんて
だいっきらい!
部屋にある荷物をかき集め黄色いボストンバックに
投げ入れる
二度とおうちには帰らないから!
ボストンバックを両手で持ち
終電まぎわの電車に飛び乗る
体がしびれるような暖房がかかっている
誰もいない車内
カタンカタン
カタンカタン
黒い鏡のような車窓
反対側の窓にぽつんと映る私
カタンカタン
だんだんおうちから離れていく私
ボストンバックの中をあさる
シャツにジーパン
下着に目薬
そして
なぜかエアコンのリモコン
ブーッブーッ
クイズの不正解のような音が響く
ボストンバックの
底に隠れていた携帯
ブーッブーッ
おかあさんからの
メール
「おとうさんがあなたを捜しに走って家をとびたしたの、でも聞いて…おとうさん眼鏡をかけないでとびたしたからどこに向かうか…あなたもおとうさんを捜してくれないかしら」
町の灯りがだんだん遠ざかっていく私は顔を思いっきり窓に押しつけて
おとうさんの姿を暗闇にさがす
帰らなきゃ…
私は携帯をもちおとうさんにかけるが
よく見るとそれはエアコンのリモコン
設定温度25度
おとうさんなんて…だいっきらい!!