見出し画像

元町 台湾料理青葉

小学生の頃、母親とその友人たちとよく行っていた小さな台湾料理の店。カタコトの日本語をはなすおばちゃんが、いつもにこにこしながら出迎えてくれる。今年行った時は、何年ぶりだったのだろうか。入った瞬間に、店の小ささに驚いた。わたしが、成長したのだろう。5人ほどがかこめる円卓と、小さな4人用のテーブルがひとつ。わたしが記憶している、青葉の3分の1くらいの大きさしかなかった。

ここにくると、大人たちは必ず「台湾ビール」を飲む。コップは小さくて、お互いにどんどん注いでいく。その次は紹興酒。氷もなにもなしで、そのままストレートで飲んでいた。わたしは、何を飲んでいたのだろう。記憶はない。

必ず食べていたのは、イカ団子。まんまるで、お皿のうえをつるつると滑る。おちてしまいそうだ、と思いながら見ていると、母親が「めっちゃあついから気をつけて食べや」と言う。丸くて上手く掴めないけど、苦肉の策として、箸にさして、塩をつけて食べる。イカのみをすりつぶしてできたような、シンプルなイカ団子。大人になって食べると、あぁこれはお酒にもあうんだな、とおもった。

母親が大好きだったのは、柚子白菜と鳥モモ。

柚白菜がすこし冷めたら、子供のわたしは手でやわらかいスペアリブを掴んで、口にほおりこむ。小さな骨が、またおいしくてずっとそれをしゃぶっていました。白菜は、食べたことがないくらいとろとろで、柔らかいあんにつつまれていて、口で崩れていく。少しさらにのこるあんがもったいなくて、小皿に取らず、そのまま食べたくなった。

鳥モモは、ハムのようになっていて、上に酢漬けの野菜がいっぱいのっている。ビールを飲みながら食べると、とにかく進む。昔、無邪気にたべていたものって、こんなにおいしかったっけ、もしかしたら思い出補正とやらがかかってるかもと、思い始めるくらいだった。

この店に行く前に、母親に、「青葉でいつもなにたべてたっけ?」と聞いたらこの2つだったので、迷わず頼んだ。量が多い中華料理にしては、ひと皿が小さくて、5人や6人でいったときは、ひとつにつき2皿は頼んでいたと思う。いつのころかいかなくなったが、この店は、特に思い出でいっぱいだ。小さい頃のアルバムをみれば、雪の降る日にこの店のまえで撮った写真も残っている。それを見るたびに、みんなで円卓を囲んでいたことを思い出す。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?