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「フォトグラファーズバッグ」というバッグ沼の終焉

※本noteでは、「等身大の私が語る」という視点のため、あえて敬称を「氏」ではなく「さん」としている。あらかじめご了承いただきたい。

はじめに

この世には、様々な沼がある。カメラ、三脚、ストラップ・・・そしてバッグ。

こんにちは、バッグ沼の住人、smithです。カメラとは切っても切り離せないもの。それはカメラバッグである。

「大は小を兼ねる」ということわざがあるが、ことカメラバッグに関しては、これが当てはまらない。なぜなら、

・大きすぎると取り回しにくい
・小さすぎると必要な機材が入らない

というジレンマを抱えているためだ。

人によって使用しているカメラや必要機材は異なる。また、リュックやショルダーなど好きなバッグの形態も異なるため、明確な答えがないというのも迷う原因となる。

こちらの記事で、hirotoさんは

カメラバッグの問題とは根本的にカメラ機材の問題であることを忘れてはいけない。

hirotographerさんのnoteより引用

と述べている。このことからも、カメラとバッグの問題は広く、深く、複雑に絡み合っているといえる。上記の記事も是非参考にしていただきたい。

元々バッグが好きな私、それはたくさんのカメラバッグを手に取った。普通のバッグにインナーケースを入れてカメラ用にカスタムしたりしたので、その数実に20個以上。たぶん。(数えてない)

これは一部

そんな私が惚れ込んで焦がれたバッグ。それが今回ご紹介する「フォトグラファーズバッグ」だ。

以前書いたこちらのnoteで、フォトグラファーズバッグのことを語った。すると、こちらのnoteをDOUBLE O DESIGNBOOKの大内さんがみてくださり、ご連絡をいただいた。

実は以前から私の写真をみてくださっていたとのことで、DMでやりとりをするうちに意気投合!そしてなんと・・・「良かったら、使ってみませんか?」と大変ありがたいお話をいただいた。

1ヶ月ほど使用して、やはり最高のバッグだったのでご紹介したい。

※ちなみに大内さんは、「気に入ってくれたら、使っているところの写真を送ってくれるくらいでいいよー」と言ってくださったが、「こんな想いが詰まった素敵な作品とも言えるプロダクト、伝えなければバチが当たる!」と思い、執筆している。気になったところだけでもぜひ読んでいただけるとありがたい。

フォトグラファーズバッグとは

DOUBLE O DESIGNBOOKの大内さんがデザインされた、写真家のハービー山口さんとのコラボレーションバッグ。大内さんが「ハービーさんのバッグを、自分がつくらなければならない」という信念の元、数年の時を経て実現した『 夢とカメラを運ぶ、日常に寄り添うカメラバッグ』だ。

オールレザーとレザー×コットンモデルがあり、私のものは後者のホワイトモデルである。レザーはどちらのモデルもホースハイド、キャンバスはMASTER SHIELD(スタイルテック社)を使用。素材や製品の詳細については、ぜひ製品ページをご覧いただきたい。

何を隠そう私、レザー製品が好きすぎてカメラの前の趣味はレザークラフトだった。自身でもバッグやキーケースなどをつくっていたため、それなりの知識がある。ここでいかにこのバッグがこだわってつくられているかを書いていきたい。

こちらは私が作ったLeica M10ケース

一般的なバッグのレザー素材といえば、ステハイド(牛革)が多い。これは、以下の理由によるところが大きい。

・牛は古くから世界中で多く飼育されており、牛革の供給が安定している
・厚みがあって繊維が強く、バッグとして成型しやすい
・一頭あたりから採れる皮の量が多い

フォトグラファーズバッグに使用されている革はホースハイド(馬革)である。

馬革の特徴は以下である。

・牛革よりも繊維の密度が低く、走り回る生き物であるため傷が多い
・軽く、柔らかいしなやかな手触りでレザージャケットなど衣類に使用される事が多い
・流通量が少ない、牛と比較して小さく、傷により採れる皮の量が少ないため比較的高価

このバッグの革は「クロームなめし」という処理を経て、染料で仕上げられた高級な素材である。

通常、皮→革にするには「なめし」という処理が施される。詳細は省くが、革好きの方が好む経年変化しやすい「タンニンなめし」は丈夫だが裂けやすく、巾着バッグには向かないそうだ。

「クロームなめし」の方が柔らかく弾力性があり、水が浸透しにくいため多少の雨であれば弾くことができる。これらの特徴があるため、衣類やハイブランドのバッグに用いられることが多い。

私はかつてこれほどまでにしなやか、もちもちの革素材を触ったことがない。巾着バッグという柔らかさが求められるプロダクトにおいて、これ以上の素材はないだろう。これは、レザージャケットが大好きで、様々な高級素材に触れて精通している大内さんだからこその素材選びだと思う。

キャンバスはMASTER SHIELD(スタイルテック社)が使用されている。

ハイブランドのコートに使用される織物で生地密度が高く、水の染み込みを防ぐことができる。色あせも限りなくしにくい素材だ。雨の日に使用してみたが、一見表面に染み込んでいるように見えても30分程度で乾き、内部への浸水はみられないため安心して使用できる。

ディティール

さて・・・前置きが長くなってしまったが、実際にバッグのディティールについて話していきたい。

魅力1:見た目の美しさ

オールレザーのタイプは渋くかっこいい。対して、こちらのコットンモデル、特に白はどちらかと言うと「かわいい」バッグである。機能性や耐久性重視のカメラバッグ界において、「白」そして「かわいい」というモデルがどれほどあるだろうか!私が知る限り、ほぼ無いと言っていいだろう。

これが「日常に寄り添うカメラバッグ」という所以である。どんな服装にも、そして老若男女選ばず使いやすい。しかし、ショルダーベルトや真鍮金具によってかわいすぎず、スタイリッシュさも兼ね備えている。

カーキとの相性も良い

内装には、ハービー山口さんの「After the rain London 1975」が特殊な方法で繊細にプリントされており、見る度にテンションが上がる。

なぜなら、私はこの写真がハービーさんの作品で一番好きだからである!!更にハービーさんのサインとメッセージも綴られており、嬉しい仕様となっている。内装は他者にはみえないところであるが、こういった拘りは、大量生産のバッグにはできない素敵な部分であると思う。

美しい内装

※私のバッグはプロトタイプであり、1stと2ndの仕様が混在していて一部製品版と異なる。通常のコットンモデルは、内装が「Dancing flag London 1981」となっている。

縫製に関してはさすが日本製、全く乱れがなく大変綺麗である。コバ(革の側面のこと)の処理も美しい。

そして驚いたのが・・・ポケットである。なんと、内側、外側ともに高さがインナーバッグより極僅かに高くなっている!!

絶妙な高さのポケット。
ヘリにはレザーがあしらわれている

何がすごいの?と思われるかもしれないが、私はこの機能美に感動した。何故なら、この数ミリ高いことで、絶妙に使いやすくなっているためである!

インナーバッグとポケットの高さが同じであったり低い場合、カメラを入れると押される形になるため、ポケットに物を入れにくくなる。また、近年のスマートフォンは大きい傾向があるため、はみ出してしまい不格好である。

iPhone 14 Proがちょうど入るサイズの内ポケット

逆に高い場合、巾着バッグという形状のため締めるとポケット部分に傾斜がつき、更にはインナーバッグのへりに干渉して物が入れづらくなるだろう。

開口部を締めても干渉しない外ポケット

この数ミリの高さの違いで、カメラを入れた状態でもポケットに干渉せずにスマートフォンなどを出し入れできる。こういった機能美が、大内さんの作品の真骨頂である。

これは余談だが、私がLeicaM10を手に入れた時から一緒に使用しているボディスーツも、なんと大内さんのデザインである。こちらも本当にデザイン、機能性共に秀逸で・・・語りだしたら長くなるのでいつか別でご紹介したい。

大内さんデザインのM10ボディスーツ
(超おすすめ)

魅力2:巾着がカメラバッグに与える有用性

皆さんは巾着バッグを使用したことがあるだろうか。私は大好きで、巾着バッグだけで6個ほど持っている。(既に数個は手放している)

巾着バッグコレクション

魅力としては、見た目のかわいさ、形を変化させることによるファッション性、視認性の良さ、速射性など多数あるが、カメラバッグとして販売されているものは少ない。

さて、フォトグラファーズバッグをみていこう。

なんと、レンジファインダータイプのカメラであれば2台を綺麗に収納出来る!普段はLeica M10とライツミノルタCL等のフィルムカメラ、又はGRIIIの2台を入れていることが多い。

Leica M10とライツミノルタCL

そこに財布、小物入れなどを入れてちょうど良いサイズ。スマートフォンは外のポケットに入れている。

魅力3:驚きの軽さ

基本的にレザーバッグは重い。これは、一般的に使用されている牛革は厚みがあり、繊維が詰まっていること、オイルなどを染み込ませていることが理由である。私が持っている牛革のレザー巾着バッグは、重さが610gである。

これに対してフォトグラファーズバッグは、ナイロンバッグかな?と思う程に驚くほど軽い。真鍮金具などを使用していながら、インナーボックスが約140gであるため、オールレザーモデルが480g(インナー込み620g)、コットンモデルが390g(530g)だ。カメラを持ち運ぶ我々にとって、軽さは正義である。

魅力4:速射性と見た目の変化

一般的に巾着バッグは、両サイド2本のコードを引っ張って締めるタイプが多い。この場合、両手でコードを引く必要があり、口を閉じたままにするためにはこのコードを結ぶ必要がある。これが絡まってしまったり、カメラに引っかかってシャッターチャンスを逃したりすることもある。

開ける時はこの結び目を解く→バッグの口を両手で開ける(コードが2本のタイプは両手でないと開きにくい)→カメラを取り出すという3工程が手間になり、速射性に欠けてしまう。

私はフォトグラファーズバッグに憧れ、手持ちレザー巾着バッグにカメラ用のインナーを入れて使用していたことがあるが、上記の理由から開けたまま使用することが多く、普通のショルダーバッグと化してしまうことが多かった。何より革が固く、閉めたり開けたりがやりにくかった。

2本のコードで引くタイプの牛革巾着バッグ

対してフォトグラファーズバッグは、コード1本で口を締めることができ、ハービーさんの代名詞「Stay Punk」が記されたレザーで閉じることが出来る。コードが邪魔にならないよう、横へずらしたデザインとなっており、可能な限り撮ることに集中できるよう配慮されている。

開ける時はStay Punkレザーを引く→カメラを取り出す(柔らかいため自然に口が開く)という2工程で取り出すことができる。

自然に口が開く。金具がないため安心

巾着バッグにおいて、当たり前のような「開け閉めが容易である」という部分は、レザー素材のバッグでは意外と難しいのである。

魅力4:金具が最小限であること

バッグの内装には大抵ポケットがあるが、ファスナーつきであることが多い。また、巾着バッグはコード部分を通すために「ハトメ」金具を使用されているものがあり、これらがカメラに干渉することで傷がつく可能性がある。

ハトメ金具があるタイプの巾着バッグ(BURBERRY)

フォトグラファーズバッグは、こういった金具がボディから排されており、ショルダーベルトと、それをボディと繋ぐ部分にしか使用されていない。ハービーさんと大内さんの「カメラに対する優しさ」で溢れている。

それだけでなく、使用されている金具は真鍮製で、経年変化を楽しめるし、デザインのアクセントにもなっている。好き。

淡い光沢が美しい
真鍮は経年変化を楽しめる

魅力5:ショルダーの位置と底面の支えの重要性

巾着バッグで重要なのは、ショルダーベルトの位置である。

一般的な巾着バッグでは、開口部にショルダーが取り付けられていることが多い。これは、開口部であれば金具を取り付けるだけで良く、製造面でのコストや工程が削減できるためである。また、開口部にバッグの重みが加わることで、自然に口が閉じ、巾着を絞らなくても中身が見えないという防犯面での配慮もあるかもしれない。

開口部にショルダーがついているタイプ

しかし!!ことカメラバッグとしては、これは致命的!

なぜなら、巾着バッグの魅力である視認性、アクセスの良さが犠牲になってしまうためである!また、カメラを取り出す際に邪魔になってしまう。

フォトグラファーズバッグでは、ショルダーが開口部と独立しており、カメラの取り出しに影響を与えない。

このショルダーの位置が重要

また、バッグの底面を支えるようにレザーが使用されており、ボディが柔らかい素材でありながら、重いカメラを入れてもバッグの形が崩れないようになっている。デザイン性と機能性の両立が素晴らしい・・・!

この折り返しがたまらない

※私のバッグはプロトタイプのため、表・裏とも馬革の贅沢仕様となっている。(うふふ)

2ndモデルのショルダーの素材は、表がクロームなめしの馬革、裏がベジタブルタンニンなめしの牛革の貼り合わせである。しなやかさと強さを両立させており、見た目の違和感がないよう色味や質感をあわせているところが流石である。

ボディの革はクロームなめしで柔らかく、ショルダーはタンニンなめしでしっかりと。革の特性を活かし、機能面、質感、見た目全てをデザインとして落とし込んでおり素晴らしい。

魅力6:絶妙な大きさとインナーボックス

はじめに「大は小を兼ねない」と述べた。これは、用途によって求める大きさが異なるためである。

街歩きで大型のリュックを背負うのは違和感があるし、クリエイティブな撮影をしたいのにカメラ1台が入る程度のバッグでは心許ない。

私は、自身の作品撮りでは大型のリュックとショルダー、日常使いではショルダーを愛用している。荷物は多い方なので、ある程度の大きさは欲しいが大きすぎると悪目立ちしてしまうし、ファッションにも影響してしまう。

フォトグラファーズバッグは、私にとって日常使いにちょうど良いサイズである。Leica M10とGRIII、財布と小物が入り、どんなファッションにも合わせやすい。まさに「日常に寄り添うカメラバッグ」である。

インナーボックスは一般的にマジックテープがくっつくように、ふわふわしているものが多い。ただ、不必要に厚みがあったり、ホコリが溜まりやすかったりする。

フォトグラファーズバッグのインナーボックスは、十分な保護性がありながら厚みが抑えられている。ナイロン素材であり、静電気が起こりにくく、マジックテープの部分も柔らかい素材感のためカメラに傷がつかない。

絶妙なサイズのインナーボックス

魅力7:ノベルティの質

フォトグラファーズバッグには、「レンズピローケース」が同梱されている。カメラを横置きでバッグに入れた際、レンズによっては重みで下を向いてしまう。その枕となるケースである。デジタルであればバッテリー、フィルムであれば換えのフィルムを各1個ずつ入れておけば、バランスよくカメラを収納できる。ポケットが2個あり、縫い目を変えてあるため自身で使い方を考えることができる。

レザーがアクセント
イギリスを感じるカーキが素敵
バッテリーが1個入る
一部本革が使われている

更にコメントと写真をSNSに投稿すると、マルチポーチをいただくことが出来る。こちらは、2個のポケットがあり、バッテリー2個または35mmフィルム3個が入る容量がある。ハートとスペードのマークがついており、使用前後のフィルムやバッテリーを分けることができる。かわいい。(※私のものはプロトタイプなので、マークはついていない)

バッテリーが2個入るサイズ
35mmフィルムは3本入る
シンプルな背面デザインも素敵

使用者のご紹介

フォトグラファーズバッグのユーザーをご紹介したい。

村田雄平さん
「Leicaに恋して。」というYouTubeチャンネルを運営されているフォトグラファーさん。マニアックな内容(好き)と、優しい語り口が素敵な方だ。こちらのYouTubeにて、村田さんと大内さんの対談があるのでぜひご覧いただきたい。

おわりに

ひたすら思ったことを綴ったところ6000字を超えてしまったが、検討されている方の背中を押せると嬉しく思う。

ハービー山口さんは、製品ページのなかで

「バッグはカメラをしっかり守るだけではなくカメラを運ぶ感覚でいいんです。大切なのは機能とオシャレの共生の実現」

フォトグラファーズバッグ製品ページより引用

と述べている。これを見事に成した作品が、フォトグラファーズバッグであると思う。

確かに安いプロダクトではない。しかし、値段以上の拘りと質、魂が詰まった、ハービーさんと大内さん、日本の職人さんの作品だ。

絶対に後悔しないので、気になっている方はぜひ手にとっていただきたい。



2024.7.13追記
「コットンモデルの汚れが気になる」というご相談をいただいたので、私の経験を踏まえてお答えしようと思う。

※大前提として、革部分は石鹸や中性洗剤では濡らさないように注意!

洗剤は私の場合、ウタマロ(中性洗剤)を使用。泡タイプと石鹸タイプがあるが、どちらも水分がバッグに染み込みすぎないよう、直接つけずに泡立ててブラシなどで塗布すること!

まず、水を固く絞った布で本体を湿らせた後、石鹸を泡立てて汚れた部分をコーティング。汚れが浮く数分後に軽めにゴシゴシ(柔らかいブラシが望ましい)して、その後に布で泡を拭き取る。

最後に湿った布で2-3度石鹸成分を拭き取って終わり!あとは通気している部屋か外の陰干しにて乾かす。

全体が薄汚れてきた場合も同様である。

コツは裏地まで水が染み込まないようにすること!また、革部分に洗剤がつかないよう注意すること!

私は3ヶ月以上使用しているが、今のところ1回だけ汚れてしまい、上記の方法で綺麗にすることが出来た。

基本的にはコートと同じ素材なので洗わない方がいいが、汚れを気にしすぎて使わないのも勿体ないし、手入れをしながら大切に使っていきたいと思う。

コットンモデルが欲しいけど、汚れが気になる・・・という方の参考になれば嬉しく思う。

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