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なぜ、社是(ミッション)を作ったのか?

今回の記事のテーマは、「なぜ、社是(ミッション)を作ったのか」です。昨年度に「仕事を通じて人生を豊かにする」を掲げたが、その背景や意図の部分は、これまで伝えてきませんでした。

社是って意味あるの?と思う方もいらっしゃるかもしれません。私自身もそう思ってました。しかし、今は必要性を感じています。

この記事では、そんな社是(ミッション)を掲げた背景を、代表取締役(斎藤)へのインタビューを通じてお伝えします。込めた想いや大切にすること、また価値観などについて、熱く語っています。
ぜひ最後までご覧ください。

(プロフィール)
斎藤 正寛
株式会社インデンコンサルティング 代表取締役 

2019年4月代表取締役に就任。ビデオ通訳サービス(スマイルコール)で業界シェアNo.1に拡大するも、2020年初旬の新型コロナウイルスで、売上の大半(約90%)を失う。全く異なる新規事業(まるなげ事業)を始める形で経営難を克服。結果的には「まるなげセミナー」が現主力事業となり、「スマイルコール」は2022年8月末に事業売却を行う。


なぜ、社是をつくったのか。

ー一般企業で社是に当たる「ミッション」に「仕事を通じて人生を豊かにする」を掲げた理由は何ですか?

 「新型コロナウイルスで経営危機に陥った時、私自身に迷いが生じました。『何でこの事業をやっているのだろう』とか『会社をやめた方が楽なのかな』とか『何でメンバーと家族の生活を守らなくてはならないのだろう』とか。その迷いは全て、私が『やりたいこと』や『目指すべきところ』を見失い、ブレているからだと感じました。仕事の目的が『お金のため』なのか『家族のため』なのか『生きがいのため』なのかもあいまいになっていました」

 「私がブレると、メンバーもブレます。業態が『通訳事業』から『まるなげ事業』に変わったら会社をやめるなんて健全ではありません。私の座右の銘は『人生の目的は金銭を得るに非ず、品性を完成するにあり』(内村鑑三)です。仕事の目的は『人間としての品性を高めること』にあることを再認識し、このミッションを定めました。私の経営者としての仕事はメンバーに『人生の豊かさを実感してもらえる結果を提供すること』に尽きます。仕事を通じての市場価値と人間性の向上、それに付随する私生活の充実を実感させることです」

ーミッションは実務の指針として落とし込んだカルチャーの1つ「夢中」に反映されています。

 「私が仕事を通じて得たのは『お金』より『人間的な成長』でした。『お金の対価を得る』ことも大事なのですが、メンバーにはそれ以上に『経験から学び、成長してほしい』と思っています」

ー「夢中」では「仕事とプライベートを分けるのはもったいない」と呼び掛けています。

 「うちはやったことのない仕事をメンバーにどんどん任せています。メンバー側にしたら『任せられれたら自分で勉強しなくてはなりません』。そういう状況で『就業時間が終わったから仕事はしません』というのはどうなんだろうと。私は20代以降、多くの学びを仕事から得ました。同時に仕事は心から面白いと思える趣味でもありました。家庭や子育て、恋愛、趣味からも多くのことを学ぶことはできます。しかし、同じ人間がやる以上、『仕事だけできる』『家庭だけで円満』は成り立たないのではないでしょうか。片方に問題が発生した時はもう一方でも起きていると思えてなりません。仕事に夢中になればそれは仕事ではなく、むしろ遊びになるし、人生にも生かせます。一度きりの人生、公私を分けずにどちらも夢中で取り組み、人生を充実させてほしいと思います」

ー「公私を分けるな」と聞くと、昭和時代の「モーレツ社員」が思い起こされます。家に仕事を帰り、休日出勤もいとわないような。かつてはそれが「サラリーマンの鑑」と言われましたが、時代の変遷で「それってダサいよね」と価値観が変わり、「仕事は仕事、プライベートはプライベート」と区分する考え方が主流になりました。近年では「ワーク・ライフ・バランス」というプライベート重視の概念も生まれています。

 「昭和に先祖帰りすると言うより、これだけテクノロジー(IoT)が発展した今、就業時間とそれ以外を分けるのは意味があるのだろうかと思っています。うちの仕事はスマートホンでできますし、しかも完全リモートワークですから仕事はどこでも、いつでもできます。出社の必要もありません。そういう環境の中、『仕事は9時‐5時限定』というのはどうなんだろうと」

 「就業時間は一応設けていますが、公私の線引きはあえてあいまいにしています。大きな声では言えませんが、小さなお子さんを持つメンバーが就業時間内にお子さんを保育園に送り迎えするのは厳密にいえば『オフ』に当たります。ですが、いちいち目くじらはたてません。そこは信頼関係です。数字(結果)を出してもらえれば良しとしています」

ー「カルチャー」ではほかにも「速さ」「約束」「誠実」「挑戦」を掲げています。

 「会社にとって大事なのは『人』です。それは言うまでもありませんが、さらに言えば社の『文化』や『考え方』がより重要だと考えています。うちも以前は『高学歴な人』とか『営業が取れる人』とか『口のうまい人』とかいう旧来型の基準で採っていました。そうではなく、『うちにとって真に優秀な人というのはどういう人材なのだろう』と考え、最終的に『うちの文化や考え方を体現できる人』だと結論付け、カルチャーを掲げました」

 「『うちのカルチャーを体現できない人』を否定するつもりはありません。ただ『うちには合わない』ということです。『顧客をだましてでも契約を取る』のも営業の手法としてはあり得るのでしょうが、うちのカルチャーの『誠実』に反し、評価しません」

 「『速さ』で言えば、以前は『ダブルチェックをしてミスをなくす』という価値観に重きを置いていましたが、『果たしてそれが正解なのか?』という疑問が芽生えました。人命を預かる仕事や成熟企業ならそれで正しいのでしょうが、うちの場合は『正確性』より『スピード』が重要です。『失敗してもいいから速く実行する』と価値観を変更し、カルチャーの『速さ』が生まれました」

 「『約束』の例ですと、うちは基本的な事業の方向性、戦略に関しては『トップダウン』型で、それで示された方針については『ルール』として守ろうと決めています。それが嫌なら『ルールを変えよう』と呼び掛けています。『ボトムアップ』型がいいのなら『ルールを変える提言をしなさい。それが実現したらみんながそれに従うよ』と言っています」

ー「挑戦」で言うと、「日本人はやれない理由を探すのは天下一品で、挑戦には後ろ向き」と言われます。

 「『やれない理由』をいくら考えて、丁寧に説明しても意味がありません。仕事は成果を出すためにみんなが集まり、結果的にそれが給与に反映されます。意味のないことに時間を費やすのは愚の骨頂です。困難が立ちはだかるかもしれませんが、『やれる理由』を考えて、前向きに取り組む方がはるかに生産的です」

ーカルチャーはメンバーの判断と行動の道しるべなのですね。

 「カルチャーは『この5つを守ってくれさえすれば後はいい』という最低限の指針に位置付けています。メンバーの判断、行動に応用が効くよう言葉はあえて抽象的にしています。採用基準でもあり、それに合うメンバーを採り、定着を図っています」

ー5つのカルチャーを満たしているメンバーは結果として優秀な実績を上げていますか。

 「上げています。何より社を辞めないです。『速さ』で言えば、チャットの返信の遅いメンバーに理由を尋ねたら、『ダブルチェックしていました』とか『考え中でした』とかいう答えが返ってきます。『そんな考えなくていいから速く反応しよう』と諭すと、それがストレスになって辞める傾向があります」

ー大切にしている言葉として「決断を正解にする」を挙げています。

 「人生でも会社経営でも結局、何が正解か分からず、あれこれ悩むものです。悩んでも実は何にもならなくて、自分が決断したら『それをどうやって正解にする』かを考えた方が人生楽しくなると思っています。安倍晋三元首相の国葬問題は端的な例で、賛否両論、いろんな議論が途中であったとしても、最終的に『やると決めたのならどうやって成功させるか』を考えればいいのに、最後まで『ここが駄目だ』『ここがルール違反だ』と議論が延々続きます。決まるまでの過程で議論するのはいいのですが、『決めたらやる』と進むべきです。『決めたらどう正解に導くか』を考えた方が合理的。結果としてその判断が誤っていたとしても、それが学びになるし、それを教訓に次に別の選択をすればいいと思います」

ー顧客への向き合い方で、メンバーに望むことは?

 「『自分に置き換えて考えなさい』ということです。自分が顧客なら『そのサービスはどうか?』『その対応はどうか?』と考えれば、自ずとやるべきことは分かります」

ーややもすると、自分の営業成績を上げたいために、うまい言葉で契約に持ち込む心理も働きます。

 「そこのバランスは難しいのですが、『まずはプロとして、顧客にとって耳障りなことを言う局面になったら、正直に言いなさい』と指導しています」

ーこれまで「まるなげ事業」を数多く手掛けていらっしゃると思いますが、顧客にとって成功例もあったでしょうし、失敗例もあったと思います。両者を分ける違いはどこにあると分析していますか。

 「事業名の『まるなげ』とは裏腹に、うちに『丸投げ』するお客さんはセールスに結び付かないケースが少なくありません。うちに任せきりにせず、セミナーの内容を魅力あるものにしたり、見込み需要が出た場合に積極的に営業を掛けるなど主体性を持って取り組むお客さんが成功すると思います」

ー以前の業態は言わば「通訳事業」一本槍で、コロナによってそのもろさが出て経営難に直面しました。現在の主力の「まるなげ事業」の業績は順調に推移しているとはいえ、一本勝負の脆弱さが露呈しないとも限りません。将来に向かって事業の多角化は考えていますか。

 「考えていて腹案も複数ありますが、ウェビナー事業の年間の売り上げが10億円に達するまではこれに集中したいと思います。10億円を超えたらリスク分散も考えて多角化を具体化させる予定です」

ー社長さんは「経営にまぐれはない」とお考えの一方で、コロナから立ち直ったのは「偶然の重なりだった」とも述べています。

 「時間軸の違いかもしれません。コロナ禍のような数年間の短いスパンで見れば、それこそ『運が良かった』と思います。『まるなげ事業』のヒットと政府の雇用調整助成金の交付がそれに当たります。しかし、視点を長期に転じると、会社の地力がモノを言い、まぐれの入り込む余地は少なくなります」

ー御社の強みとして「生き延びる力」を挙げています。

 「そもそもの話として、私が就職活動をして会社を選ぶ基準は『自分が飯が食えること』が最も大きい。会社に依存するのではなく、自分自身が飯を食える地力を身に付ければどんな社会になっても食えると考えがベースにあります。仮にうちの社が潰れてもメンバーそれぞれに実力さえついていれば生きていけますから、各人に実力をつけさせることが重要です。うちの社がコロナでピンチになった時も、メンバーに力があったから会社が生き残ったと自負しています。経営的にも『生き延びる力』を意識し、無理な事業拡大や変な投資をせず、キャッシュを地道にためていく堅実性を心掛けています」

ー日本の企業経営者は「社会貢献」や「SDGs」などに熱心な人がいる一方で、「企業の使命は儲けて従業員を食わせること」と割り切る考えの持ち主がいます。社長さんはどちら派ですか。

 「どちらかと言えば後者です。社会貢献にせよSDGsにせよ継続しなければ意味がありません。会社の収益が出続ければ、社会貢献やSDGsにつながると考えています。社会貢献やSDGsを目的化せず、『会社と従業員が豊かになった結果として付いてくるもの』だと理解しています」

ー社長さんは「会議」や「研修」を重視していませんね。日本の経営者は「会議」と「研修」が大好きですが。

「うちの社風をひと言で表すと『合理的』です。うちの場合、会議は部署ごとの『朝礼』しかなく、時間も最長で20分間に限定しています。頻繁に、しかも長時間やる会議は生産性がなく、非合理的です。研修も会社がプログラムを考え、社員が受け身でいるうちは意味がありません。真の研修は『実践で失敗すること』。人間は『本当の失敗』からしか学べません」

ー最後のお尋ねです。経営者として心掛けていることは何ですか。

 「肝に命じているのは『会社はトップの器以上にはなれない』ということです。トップの成長なくして会社の成長はありません。人材の確保も育成も無理です。役職者も同様で、成長なくして組織をつくれません」

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