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【企画】忘れられない外国人のあのひと~日本語教師が嫌いになって、好きになった日~

遅くなりましたが、チェーンナーさんの企画に参加いたします!


実は、noteを始めたときから、この記事内容を考えていたのですが、出会った外国人が多く・エピソードもたくさんあったので、どなたにするか悩んでいました。そして、ようやく投稿です。

私の忘れられない外国人は、初めて非常勤講師として日本語学校に勤務していたとき、授業を受け持っていたクラスの学生です。私も初めて、そのクラスも入学したばかりの初々しいクラス。みんなの日本語初級20課スタートのクラスだったので、そこそこ意思疎通もできました。

そのクラスにいたAくん(アジアの国の学生)は、とってもムードメイカー!こちらの質問に面白おかしく答えたり、とても明るい学生でした。彼のおかげで、授業もとても楽しく進みました。

そう、あの日までは・・・

入学して2ヶ月くらい経ったある日、教室に入ったら、雰囲気がめちゃくちゃ悪いのを察知しました。静まりかえった教室、ピリピリしてる・・・?その原因はAくんでした。今までに見たこともないような表情で、「俺、機嫌悪いよ!」と顔に書いているようでした。

まぁ、人間ですから、いつも笑顔ってわけじゃないし、こんな日もあるよね。最初、私はそう思っていました。その日の授業は非常にやりにくかったのですが、あまり彼を刺激しすぎないように授業をしました。来週にはきっとまた明るいAくんに戻っているはず!私はあまり重く考えずにいました。

しかし、その次の週も、そして次の週も、私の授業以外でも常に彼は機嫌の悪い状態が続きました。私を含め担任の先生も、彼に聞いてみたりもしたのですが、「何もない。関係ない。」それだけでした。

そして、私の授業の時に事件は起きました。

その日も機嫌が悪かったAくん。文法プリントを配ったときでした。彼は、プリントを手にすると、思いっきりぐちゃぐちゃにして、教室の床に捨てました。

私だけでなく、クラス中が、嫌な気持ちで包まれていくのが分かりました。私はその瞬間、この仕事がとても嫌になりました。なんで、こんなことするんだろう。怒りもこみ上げてきました。

でも、ここで怒ったら負ける・・・(勝ち負けではないんですが、すみません)きっと、彼は私を挑発して怒らせようとしているかもしれない。怒りたい!でも、怒らずに注意をしたい

わずか数秒でしたが、私は頭をフル回転させて、この状況をどうにかしようと思いました。そして、みんなも私に注目している様子。

まずは、他の学生に「問題してください。○分です。」といつも通り笑顔で指示する。そして、Aくんの側まで行き、ぐちゃぐちゃに丸められたプリントを拾い、

ゴミはゴミ箱に捨てます。

と、一言言いました。(たぶん顔は真顔だったはず)すると、負けていられないAくんは、「ゴミじゃありません。私のです。置いて!」と、けんか口調で言ってきました。そして、私、

ゴミじゃありませんか。そうですか。すみません。でも、これ、もっと良い使い方、ありますよ!

そう言って、プリントを広げ、彼の飲みかけのペットボトルの水滴を拭きました。(夏だったので、冷たいボトルに水滴がたくさんついていて、机がぬれていたので)

ね!きれいです!とてもいいです!(笑顔)

はい。問題してください。○分です。

(濡れたプリントをきれいに広げ、机の上に置く)

思いっきり、賭けです。けんかになるかもしれないとは思いましたが、普通の注意では意味がないと思い、意表を突く行動をしました。

Aくんは驚いた様子で、なぜか(?)その後は真面目に問題をしていました。そして授業後、このままではいけないと思い、Aくんを別室に呼んで、少し話をしました。

すると、Aくんから涙が・・・

つまりは、ホームシックだったようです。初めての海外で、楽しく過ごそうと思っていたけど、友だちはいないし(Aくんの国からは彼のみでした)、遊びに行くのも怖いし、家族に会いたい気持ちが、教室でのイライラになったそうです。話を聞いた後、Aくんが少し落ち着いていたので、私はプリントをぐちゃぐちゃにした件を冷静にその行動のみを注意しました。A君も悪いと分かっていたようで、「すみません。」ときちんと謝罪しました。

それから、Aくんとは休み時間や放課後に、しょうもない話をしたり日本語で会話したりしました。

しばらくすると、Aくんは、また入学した頃の笑顔に戻りました。ただ、残念ながら、家庭の事情で、たった半年の留学となってしまいました。

そして、

みなさんと勉強して、とても楽しかったです。先生もありがとうございました。私は、悪い学生でした。


わずか半年で、いろんな表情を見せてくれたAくん。

私は彼のおかげで、日本語教師が嫌いになって、そして大好きになりました。


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