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捨てたい、けど捨てられない―機能不全家族で育って

第5回

私が小学1年の秋頃、父は写真屋をやりたいからと、働いていた会社を辞めました。その頃は毎日のように「お前らのおっちゃん(近所に住んでいる父の兄)とこの土地を借りて写真屋やりたいんやけど、賛成してくれるか?」と私や弟に尋ねていました。事情を知らない私たちは適当に返事をしていましたが、そこからあの前途多難の日々が始まるとは予想もしていませんでした。
その年の11月、伯父の家の物置くらいの土地にプレハブ小屋を建てて、父は小さな写真屋を開店しました。開店資金を伯父から借り、その上家賃も払っていなかったことを私が知ることになるのは、もう少し後のことです。
開店から1か月後には予想外の出来事が起こりました。私が紫斑病を発症して1か月ほど入院することになったのです。最初の2週間は母が病室に泊まり込みましたが、私はなぜか嬉しいとは思えず、母不在の残り2週間の方が楽しい、と思ったのでした。(緑:2021.9)

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