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捨てたい、けど捨てられない―機能不全家族で育って

 第10回

父の営む写真屋では、夕方に仕事帰りのなじみ客が立ち寄ることがよくありました。その人たちは、うちの店には他にあまり客が来ないこともよく知っていて、店に来ると私や弟にお金を渡して「ビール買ってきて。」とお使いを頼みました。そして営業中にもかかわらず父も一緒になって酒盛りが始まり、酔っぱらって口論になったり、酔いつぶれてしまったりすることもしばしばでした。

たぶんそれまでの父はあまり酒を飲む人ではなかったと思います。でもこの頃から毎日酒を飲むようになり、だんだんと飲む量もコントロールできなくなっていきました。毎晩酒を飲んでは同じ話を何度も繰り返し、歩けなくなるほど酔って家の中で転倒することもありました。飲みすぎを注意しても「これが俺の楽しみなんじゃ。」と私たちの言うことなど聞いてくれません。イライラして機嫌の悪い日は最悪で、私たちに八つ当たりしては怒鳴り、晩御飯も食べずに酒を大量に飲んでそのまま寝てしまうのでした。
(緑:2022.2)

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