高鷲渚「いつかお兄ちゃん、」〜『After…』【SS】

高鷲渚(二年参りで初詣に行って、知らない男の人に乱暴されかけて、お兄ちゃんが助けてくれた)


渚(お兄ちゃんが格好良すぎて全然平気だったけどいま思うともうちょっと怯えてた方が甘えられたんじゃ)
祐一「渚? どうかしたのか?」
渚「へ?」
祐一「あ、もしかして、もう自分で歩くか?」
渚(まずい)
渚「え、えっと」



渚「ほ、ほら。あたしのことおぶってたらトレーニングになるでしょ?」
祐一「たしかに」
祐一「うーん。でも登山の装備に比べるとちょっと軽いような。ん? そうすると渚の体重ってだいたい」
渚「お兄ちゃん。ノー」
祐一「犬のしつけ?」



渚「ほ、ほら。雪山でも遭難したりするとくっついて暖め合うんでしょ?」
祐一「遭難したらな」
渚「あたしをいま遭難してると思って」
祐一「イメトレ…?」
渚「それそれ」
祐一「渚は遭難なんてしないって。危ないから登山なんてさせないし」
渚(好き)



渚「…」
渚「…同じ理由であたしもお兄ちゃんに穂高行ってほしくないんだけどな」
祐一「ん?」
渚「なんでもない」
渚「ほ、ほら、それにあたしもういつも寝てる時間だし……ふわあ」
祐一「ふわあ」
祐一「あ、うつったかも」
渚(渚の下手なあくびうつるお兄ちゃんキュート。しまった。ごめんねおんぶしてくれてお兄ちゃんもねむいよね)
祐一「その割には声ははっきりしてるような」
渚(寝たフリしてもいいけどお兄ちゃんと話せなくなっちゃうからね!)



渚「ほ、ほら。あたしさっき逃げるとき足くじいちゃって」
渚(あ、ちょっとさっきの場面、思い出したかも)
祐一「ああ。そうだったのか」
渚「うん」
渚「だからお兄ちゃん、もうちょっとだけ……このままでもいい?」
祐一「うん。痛くないか?」
渚「うん……えっと」
祐一「ごめんな。はぐれちゃって。すぐに助けてやれなくて」
渚「うん……。でももういや、あたし、あんな……」
祐一「うん。だからこうしてよう。こうしていれば、ずっと一緒だから」
渚「ずっと?」
祐一「ああ。家までずっと一緒」
渚(家までか。ドキドキした)
渚「…………」
祐一「渚?」



渚「ううん」
渚「そうだね。家までずっと、一緒」
祐一「うん」
渚「あ、お兄ちゃんどこか寄り道しない?」
祐一「こんな時間にどこにだよ。眠たいんじゃなかったっけ…」
渚「どこでも。どこまでも?」
祐一「俺の体力…」
渚「冗談だよ」



祐一「渚はしょうがないなあ」
渚「ん…」
渚「…うん……あたし、ほら、お兄ちゃんの妹だから」
祐一「そうだな」
渚(あ、だめこれ、ちょっとずきずきする)
渚「はー」
祐一「どうかしたか?」
渚「なんでもない」



祐一「着いたよ」
渚「着いちゃったね」
渚「ありがと」
祐一「降りて平気か? リビングまで連れて行くけど」
渚「ううん。お兄ちゃんと一緒にただいまってしたい」
祐一「そうか。じゃあただいま」
渚「おかえりなさい」
祐一「ただいましてない。おかえり」
渚「ただいま」
渚(これで幸せなんだけどな。いまは)
祐一「どうした?」
渚「ううん。いつかお兄ちゃん、だれか別の人におかえりって言うのかなって」
祐一「うん? なんだそれ」
渚「なんでもない」


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