ギャルゲー『After…』〜頼むから仲良くしてくれ ラブコメ Edition【SS】
我孫子慶生「祐一ってさ。渚ちゃんのこと好きだろ」
高鷲祐一「は?」
滝谷紘太郎「ば」
紘太郎「慶生お前、なに言ってんだよ」
慶生「なに言ってんだもなにも」
慶生「紘太郎だって気がついてるだろ。兄妹のくせに、祐一と渚ちゃんが普通じゃないってさ」
祐一「なんだよお前。その言い方」
慶生「ほんとのことだろ」
祐一「だれとだれが普通じゃないって」
慶生「い、いたい。なんだよ。だってそうだろ」
祐一「なにがだよ」
紘太郎「ばかお前ら。いまどこだか分かってるか。山だぞ山。せっまいテントで殴り合ってる場合か」
わーぎゃー
汐宮香奈美「…男子って山に登っても騒がしいわけ?」
喜志陽子「もう寝る時間なのに、みんな元気だね」
高鷲渚「あ、あはは……。なにかあったのかな」
◇
慶生「つめたい」
祐一「つめたい」
紘太郎「頭冷えたか」
祐一「おう。紘太郎が雪食らわしてくれたおかげでな」
紘太郎「結果的には雪山でよかったってな」
慶生「でもさ」
紘太郎「まだ言うか」
慶生「もが」
祐一「……はあ」
祐一「ちょっと外の空気吸ってくる。悪かったな。紘太郎」
紘太郎「いや俺は別に。気をつけろよ」
慶生「ぷえ」
慶生「なんで止めるのさ」
紘太郎「まだ言うか」
慶生「や、やめてよ。冷たいじゃないか。だってさ。渚ちゃんがかわいそうじゃない」
紘太郎「ん?」
慶生「今はいいさ。あの二人、親がどっちも海外で二人暮らしだしさ。楽しいでしょ」
慶生「でもずっとそのままってわけにはいかないだろ」
紘太郎「ああ」
慶生「じゃあいいじゃん。みんなもう分かってるんだからさ。堂々としてろよ」
紘太郎「慶生お前ってやっぱやばいやつだな」
慶生「どうせ僕はやばいよ…」
紘太郎「うん。だけどまあいいやつだな」
慶生「いいやつなわけないだろ。むかつくんだよ。祐一のくせになんか諦めたみたいな顔してるのがさ」
紘太郎「ははぁ」
紘太郎「お前やっぱ祐一のことも好きなんだな」
慶生「紘太郎にだけは言われたくない」
紘太郎「はは。うるせぇ」
慶生「もがもが」
◇
祐一「はー」
祐一「慶生のやつ、急になんだ……だれが渚のこと」
渚「あたしがどうかした? お兄ちゃん」
祐一「うお。びっくりした」
渚「そんなに驚かなくてもいいじゃない」
祐一「あ、ごめん」
渚「なにかあったの? 香奈美ちゃんと陽子ちゃん、そっちのテント見に行ったところ」
祐一「ああ…騒いじまったからな…なんでもないよ」
祐一「せっかくだしちょっと一緒に歩くか」
渚「うん」
◇
香奈美「我孫子くん、なんで雪食べてるわけ?」
慶生「げふ。し、汐宮。別に好きで食べてるわけじゃないから」
陽子「おいしいの?」
紘太郎「慶生は好きらしいぜ」
慶生「紘太郎」
紘太郎「あはは。冗談だって」
陽子「おいしいの?」
香奈美「陽子。落ち着いて」
紘太郎「陽子のやつ、山に登ってなんか浮かれてんな」
慶生「け。いいね可愛い幼馴染がいて」
紘太郎「どういう方面からでもいじけるんだなぁお前」
香奈美「ほら。我孫子くん。ハンカチ」
慶生「きゅん。あ、ありがとう」
紘太郎「そんでチョロいなぁ。陽子といい勝負だな」
陽子「私がどうかした?」
香奈美「バカなこと言ってないの。どうせ滝谷くんがやったくせに」
慶生「し、汐宮。自分で拭くよ」
香奈美「あ、ごめん。なんかついユウにするみたいに」
慶生「け」
紘太郎「はは。汐宮には敵わないや」
陽子「なんの勝負?」
慶生「喜志さんってひょっとして僕らと違う時間を生きてる?」
紘太郎「ああそれ分かる」
陽子「?」
香奈美「そう言えばユウはいないの?」
慶生「そっちこそ渚ちゃんはいないの」
◇
渚「くしゅん」
祐一「あ、ごめん。寒かったよな。戻ろうか」
渚「ううん。もうちょっとお兄ちゃんと一緒にいる」
祐一「お、おう」
祐一(なんか変に意識するな。くそ。ばか慶生め)
渚「どうかした?」
祐一「いや」
渚「はっ。ねえお兄ちゃん」
祐一「はい」
渚「寒いから、手、つないでもいい?」
祐一「え、いや。いいよ」
渚「わーい。えい」
渚「あったかい」
祐一「そうか」
渚「ふふ」
祐一「……」
慶生「……」
慶生「じゃないんだよ。○ンコ付いてんのか」
紘太郎「慶生。慶生さん。聞こえるから」
香奈美「ほんと仲良いねあの二人」
陽子「うん」
紘太郎(はぁ。冬山でなにしてんだろ俺)
紘太郎「汐宮はなんとも思わないのか?」
香奈美「ん? 思うわよ」
香奈美「思うからって口にするのは違うわけ」
紘太郎「…はー」
香奈美「なによ」
紘太郎「やっぱ汐宮って祐一にはもったいないよな。まあ祐一だからか。しょうがないか」
香奈美「ありがと。でもあたしのこと気にするより滝谷くんは自分のこと気にしなさいよ。しゃんとする」
紘太郎「いて。ったく。そういうとこだっての」
香奈美「そっちこそ。あたしほめてもなにもでないわけ」
紘太郎「お互いさまだな」
香奈美「ふふ。そうね」
慶生「僕、シロップ持って来ようっていつも思うんだけどさ。やっぱ寒いからいいやってなるんだよね」
陽子「そうなんだ」
紘太郎「意外と楽しそうにしてんなこの二人」
香奈美「同じこと言わせる気?」
紘太郎「いや。大丈夫」
紘太郎「陽子。ちょっといいか」
陽子「なに? 紘太郎」
香奈美「我孫子くんはまだ見てるわけ?」
慶生「汐宮こそ」
香奈美「あたしら同じ立場みたいだし、仲良くしよっか」
慶生「僕と汐宮じゃただの虐殺だよ」
香奈美「我孫子くんはそういう女の子見つけた方がうまく行くと思う」
慶生「僕もそう思う」
◇
祐一「渚さ。嫌じゃないか? 親父もお袋もいなくて、俺が言うのもなんだけど」
祐一「家のことだいたいやってくれて…遊ぶ時間もないだろ」
渚「だいたい?」
祐一「…全部」
渚「よろしい」
祐一「すみません」
渚「残念でした。全部だから幸せなんだ」
祐一「へ?」
渚「いま、あたしお兄ちゃんの全部、ふふ、全部は言い過ぎか。やっぱだいたい」
渚「いつも一緒にいてくれるお返しできてるから。好きだよ。いまの生活」
祐一「……そっか」
渚「うん。ずっと続いてほしいな。できるだけずっと」
祐一「一緒にいるだけだけどな。俺」
渚「一緒にいてくれるだけでいいの」
祐一「そっか」
祐一「…冷静に考えるとけっこう難しいけどな。それ」
渚「頑張ってね」
祐一「が、頑張ります」
渚「山に登ってもいいからちゃんと帰って来るんだよ。あたし待ってるんだから」
祐一「おう」
◇
祐一「そろそろ戻るか」
渚「うん」
祐一「なあ。渚」
渚「なあに。お兄ちゃん」
祐一「えっと……いや」
祐一「ありがとう。俺もその、嬉しいよ。心強い。帰る場所があって、待ってくれる人がいてくれて。だからさ、ちゃんと帰って来るから、俺」
渚「…」
渚「うん」
祐一「おう」
紘太郎「おうじゃねーよ」
祐一「もが」
陽子「高鷲くんも食べた」
紘太郎「このヘタレめ」
祐一「ぺっ。な、なんだよ紘太郎、お前急に」
紘太郎「うるせー。いけ慶生」
慶生「ほいきた。食らえヘタレ祐一」
祐一「な、なんでお前らそこに、ば、やめろ」
渚「あれ。陽子ちゃん。滝谷さんと手」
陽子「うん。渚ちゃんと高鷲くんと同じだね」
渚「ほんとだね」
香奈美「あーあー。あたしだけ除け者なわけっ」
渚「きゃっ。香奈美ちゃん」
陽子「じゃあ香奈美ちゃん。私とつなご?」
香奈美「言われる前につなぐわけ! てい」
渚「香奈美ちゃん、あたしも」
香奈美「渚ちゃんも! へっへん。仲良し」
陽子「仲良し」
慶生「仲良しなかよし」
紘太郎「仲良しなかよし」
祐一「もがもが。いじめだろこれ俺だけおかしいだろ」
香奈美「ばーか」
紘太郎「ばーか」
慶生「ばーか」
陽子「ばーか?」
祐一「えっなんでみんなひどい」
渚「ふふ」
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