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50歳からの中小企業診断士 ヨーカドーの選択と集中から見える盛者必衰の理

 中小企業診断士を目指して、まだ道半ばですが、年齢は割と重ねており、ベビーブームの頃に生まれた私は居住地域柄、いつもちかくにヨーカドーがありました。GMSとして、昭和の時代ではダイエー、平成、令和ではイオンと何かと比較され、マーケティング関連や財務分析において常に学びの題材にもなっていたイトーヨーカドーですが、ここ数年で大きく構造改革をしていくようです。まだ発表段階であり、選択と集中戦略や構造改革の成果は先になるのでしょうが、これまでの回顧と現時点の情報を踏まえた所感を書き留めようと思います。

 温故知新:昭和時代のダイエー

 以前、ダイエーは売上成長、利益成長を重視するあまり、店舗拡大と連動した人員を増やすわけでもなく、また顧客接点に最も近い立場でありながら、顧客にあまり目を配らず、その立ち位置を振りかざす形で、メーカーに安値を要求するようなスタイルだったイメージです。
 さらには土地バブルもあったので、自分たちが店舗を出すとその周辺の地価もあがるので、店舗と周辺の土地を買った後に周辺土地の地価があがったタイミングで売却をして利益を上げていました。
 当時の経済状況を鑑みると手法としては理にかなっていたのかもしれませんが、そのリスク管理やリスクヘッジがなされておらず、結果、負債で資金調達して購入した土地の地価がバブル崩壊でさがり、民事再生法適用という結果となりました。
 私の個人的な所感ですが、昭和のストロングスタイル?的な経営手法であったイメージです。

 温故知新:イトーヨーカドーの方針

 一方、イトーヨーカドーはダイエーほどの売上高はないが、利益率はダイエーより高く、経営方針のダイエーとは真逆の「お客様第一主義」でした。 
 百貨店とは異なる価格帯で衣類や食品を低価格でワンストップで提供していくスタイルで売り上げ規模、店舗数などはダイエーの方がはるかに大きいのですが、イトーヨーカドーはお客様第一主義を徹底し、利益率の向上を追求した店舗運営をしていました。顧客に対する接客も行き届いており、商品もメーカーに過度な低価格を要求することなく、お客様に安心や心地よさを提供していました。
 順風満帆ではありましたが、大規模小売店舗法などの法律改正により、郊外型のショッピングセンターができたり、モータリゼーションの発達で駅前ではなく、国道沿い、幹線道路沿いの大型店舗が多くでき、しだいにイトーヨーカドーの十八番であった販売効率の低下や収益の悪化も見えてくるようになりました。この法律は日本のGMS業界の大きなターニングポイントに今思うとなっています。(運営管理でも出題されますね。。)

 未来へ:イトーヨーカドーの集中と戦略による構造改革

 昨今、ヨーカドーはニュース記事によると店舗縮小や取扱品の集中等、店舗戦略の構造改革をすすめています。
 法改正による競合店の出店に加え、ユニクロや無印良品、ニトリなどの台頭はイトーヨーカドーのアパレル事業や生活用品の収益を押し下げていくことになり、かつて、2000年代には1.5兆あったトップラインは2020年以降は1兆円まで下がり事業改革待ったなしな状況になっています。

 今回の主な改革は以下の4点す。
 1)北海道と東北、信越地方からの撤退&業態変更
 不採算店を閉鎖し、都市部で「食」を強化するようですが、これはこれでもっとも市場があるということは競合も多くいる市場ですので、どのような差別化戦略をしていくか、その手腕に期待したいところです。
 業態変更はスーパー(食品ストア)への業態変更で地域のライフラインとして事業承継先を探し、進めているようです。このあたりの自分の財務状況を優先するだけでなく、地域住民にとって最適な出口戦略を考えるところは「お客様第一主義」の企業理念が今なお、根付いて徹底しているところと私は感じています。

 2)アパレル事業の終了
 競合他社のユニクロの商品の品ぞろえ、価格、品質、集客力などを見ると、もう自前で食品もアパレルもという時代ではないのかもしれません。自社のアパレル事業の撤退は外から見ると最善の判断であり、また遅すぎる決断にも見えますが、アパレル事業をずっと携わった方々からすると忸怩たる思いなのだろうと推察します。

 3)早期退職希望者の募集による、人員整理
 あくまでも早期退職の募集であり、社員を大事にする会社であるところがこのあたりからもうかがえます。昔は入社式の様子がTVで報道されると、たいてい、航空業界か流通GMSのイトーヨーカドーが放映されていましたが、これからの採用数は少数になるのではと思っています。

 4)本社移転
 店舗側のみならず、本社移転を通じてスタッフ組織のコスト(家賃)も削減していくことを同じタイミングで断行すあたりに覚悟がうかがえます。

 もともと利益率高い会社としての特徴があり、そのノウハウは時代が変わっても企業文化に残っているところがあると思います。
 さらにはインターネットによるネットスーパーや少子高齢化、モータリゼーションなど時代や市場を取り巻く環境が変わっていますが、イトーヨーカドーの自力再生に向けた試みをこれからも自宅近くで頻度高く利用する一顧客としても見ていきたいですし、応援したいと思います。

最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるでもない。唯一生き残るのは、変化できる者である

ダーウィン


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