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【道】 第13回 「溶岩道路」で地球を体感 (国道224号/鹿児島県)

鹿児島のシンボルといえば桜島だ。今でも激しい噴火を繰り返し、降灰が街を襲う。その活火山の南麓を国道224号は走る。
 過去の爆発的噴火の中でも壮絶だったのが1914(大正3)年の大噴火。流れ出た火砕流は、鹿児島湾内の「島」だった桜島を大隅半島と地続きにした。その付け根部分に国道224号の起点がある。終点の鹿児島市街まで、陸上部分の総延長は約14㌔㍍の短い国道となっている。

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起点から沿線の景色は火山帯特有の色彩に染まる。今にも動きだしそうな大正溶岩の中を切り開いた道。アスファルトの路面を通じて地熱が伝わってくるかのようで、地球の大地そのものを楽しむ「ジオツアー」を体験できる。この国道の通称「溶岩道路」を実感させられる風景だ。

気象庁の定義では、「活火山」は、過去1万年以内に噴火した火山や、現在も活発な活動のある火山を指す。日本には108山あるが、毎月発行されている「月間火山概況」では、桜島は常に警戒レベルがトップ。日本で最も活発な火山だ。

大正溶岩の一帯を抜けると、沿線には地元集落の生活風景が広がる。大爆発時の噴石や溶岩流に備え、たくさんのシェルターも設置されていて、活火山と共存する現実味を物語る。噴煙や降灰と戦うたくましさ、またそれを受容する人々の寛大さが桜島の個性を引き立たせる。いつ爆発するか分からない活火山の麓で人々が生活を営むさまは、外国人の目には驚異と映るようだ。

たくましく思えるのは人々の生活だけではない。桜島の国道終点近くでも再び大正溶岩地帯に入るが、ここは緑の樹々に覆われている。100年前は不毛地帯だった所に緑がよみがえった自然のしたたかさに、勇気を与えられる。

国道224号は島の西端の桜島港からフェリーで対岸の鹿児島港まで約15分の「海上国道」を渡り切ればゴールとなる。だが、桜島のジオツアーをもっと味わいたければ、桜島港で国道から外れて島を一周すればよい。きっと大地と自然の力強さを堪能できるはずだ。

2011・1・8 記
時事通信社出稿

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